登山YouTuberかほ インタビュー前編登山情報だってYouTubeから仕入れる時代。なかでも人気のYouTuberが…

登山YouTuberかほ インタビュー前編

登山情報だってYouTubeから仕入れる時代。なかでも人気のYouTuberが、『かほの登山日記』のかほさんだ。およそ6年前までは登山未経験だった元OLが、今やチャンネル登録者数18万人超えの"売れっ子"になった経緯とは......。かほさんに、登山を始めたきかっけや発信したい山の魅力について語ってもらった。



YouTubeチャンネル『かほの登山日記』で登山情報を発信しているかほさん

──かほさんが登山を始めたきっかけは?

かほ テレビの番組制作会社に勤めてADをしていた時、徹夜続きだったこともあり、収録中にうっかり居眠りしたのがバレてしまって......。上司から雷が落ちるかと思いきや、逆におもしろがられて、「居眠りADが"禊"のために、雪山に登って初日の出を撮ってくる」という番組企画になったんです。それで、標高2600mもある八ヶ岳の根石岳に登ったのが、私にとっての初登山でした(笑)。

──初めての登山が雪山とは、つらくなかったですか?

かほ いや、楽しいと思いました。もともと中高校生の頃はソフトテニス部で、体を動かすのが大好き。でも、社会人になってスポーツをしていなかったから、久しぶりに動いたら心地よくて。だから、キツいというより楽しかったんです。冬の八ヶ岳のきれいな空のことを「八ヶ岳ブルー」と呼ぶのですが、その日は本当に真っ青でした。雲海の上に初日の出が浮かび上がって......。体のしんどさより、感動のほうが大きかったです。

──運動が得意だから、最初から登れてしまうとか......。

かほ どちらかというと運動神経はよくないほうなんですよ。でも登山って、体を動かすことをやめなければ、いつかは山頂に着くじゃないですか。そういうところが、自分に合ったんだと思います。昔から走るのも短距離より長距離が好きだったし、瞬発力より持久力さえあればなんとかなる、と。ちなみに、今でも私は、めちゃめちゃゆっくり歩くタイプ。牛歩ですよ。


次に挑戦したい山を聞くと

「一番は、エベレストですよ!」と即答するかほさん

──罰ゲームのはずが意外に楽しかったから、次のステップに?

かほ 元旦に八ヶ岳に登ってから、すっかり登山にハマりました。でも、初心者ひとりでは雪山登山は無理なので、春になるのを待って高尾山に行きました。そこから1、2年は働きながら週末に、奥多摩など東京近郊の低山に何度も通って。そして登山を始めて3年目の夏に、北アルプスの槍ヶ岳に登ったんです。

 岩場が多いので難易度が高いのですが、その時は「憧れの北アルプス!」「槍ヶ岳は聞いたことがある!」みたいなノリで。友達を誘っても断られそうだから、ひとりでやってみるか、という感じ。もちろん、登山前にしっかり下調べをして、細心の注意を払って臨みました。

── 一気にハイレベルな登山になりましたね。

かほ 登る山の正しい順番というのは、あまりないと思っています。この山を登れたら次は......みたいなのは、こだわりすぎなくてもいい。登山の知識と体力がきちんと伴っていれば、チャレンジしてみてもいいと思います。それこそ、山岳ガイドと一緒なら、2段階くらいジャンプアップすることだってできますから。

──北アルプスに挑戦してみて、何か意識が変わりましたか?

かほ それまで登っていた低山とは異なる風景が広がるなかを歩いていたら、「今の仕事を辞めて、新しいことをしよう」という思いが降りてきて転職しました。ひとりで登っていると考える時間も多く、自分の心と向き合うことができたんですよね。



インタビューで登山の魅力を語るかほさん

──YouTubeを始めた経緯は? 動画を作るなかで心がけていることは?

かほ ずっと自分で映像を作ってみたいという気持ちがあり、IT企業に勤めていた2018年にふと思い立って登山をYouTubeで発信することにしたんです。やるならチャンネル登録者数を増やしたいとは思って、人気の山を紹介したり、編集にこだわったりしましたが、始めて1ヵ月で約5000人の登録があって。その後、どんどん増えていきました。まさかこんなに見てもらえるとは、というのが本音です。2020年には会社を辞め専業になりました。

 意識しているのは、とにかく「楽しく登山を発信する」ということ。そのひとつとして、危険なことはしない、絶対にケガをしないことが大切です。ケガをすれば「登山は危ないもの」というイメージになってしまうので、危機管理にはかなり気をつかっています。

 最近では、北アルプスの難関ルート・ジャンダルム縦走や、黒部渓谷の核心部にある下ノ廊下といった上級者向き登山にもチャレンジしていますが、そこは山岳ガイドの方と一緒に。観ている方にドキドキを味わってもらうのではなく、できるだけ安全にステップアップすることを目指しています。

──これからどんどん、上級ルートに進んでいくのでしょうか?

かほ 過酷なところにも行きますが、たくさんの人に登山を楽しんでほしいので、低山やロープウェイを使える登りやすい山も紹介していきます。あとは、登山をしていない人にも興味を持ってほしいので、視聴してもらいやすい企画もいろいろ考えています。間口を広げるという意味では、「バズる」企画も意識しています。

──かほさんにとっての、登山の楽しみとは?

かほ 始めた頃は、山頂に着いて「よし、やったー!」という快感があるのが登山だと思っていたんです。だけど今は、登山中に楽しいのが一番だなと。たとえば、私は雨の日は登山に行かないんですよ。だって、雨の日に歩いたら、足元がぐちゃぐちゃになるし、服も靴も濡れちゃうし。あと、途中で疲れたら、下山することだってあります。自分がつらいのに無理して続けずに、山のなかで楽しい時間を過ごすのを優先しているんです。

──登山初心者には、ハードすぎない柔軟さがありがたいですね。

かほ 登山って、ハードルが高いと感じる人が多いと思いますが、高いところに登るとか山のてっぺんまで行くだけが登山じゃない。山のなかに入って自然に触れたり、空気のきれいな場所でごはんを食べたり......。登山というか、山と親しむというか。自分の内側にあるハードルを下げて、山に入ってきてくれたらいいなと思います。

(後編へつづく)

【Profile】
かほ 
岐阜県出身。テレビ番組制作会社、広告代理店、IT会社を経て、登山情報を発信するYouTuberに。登山歴は6年。現在、週2、3回ペースでYouTubeチャンネル『かほの登山日記』で動画配信中。

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Mt. TAKAO BASE CAMP●撮影協力