2020年8月発足、2021年1月に開幕し、全9チームによる約半年に及ぶ熱き闘いを終えた日本発・世界初のプロフェッショナル・ダンスリーグ「D.LEAGUE」の1年目「20-21SEASON」は、コロナ…
2020年8月発足、2021年1月に開幕し、全9チームによる約半年に及ぶ熱き闘いを終えた日本発・世界初のプロフェッショナル・ダンスリーグ「D.LEAGUE」の1年目「20-21SEASON」は、コロナ禍、試合のほとんどを無観客で開催せざるを得なかったという厳しい状況下ではあったが、Dリーグがミッションとして掲げる、“世界中すべての人に、「ダンスがある人生」をもたらす”という素晴らしい“福音”が、600万人とも1000万人ともいわれる日本の潜在的ダンス人口を中心に、静かに着実に広がっていった記念すべき初年度であった。
◆初代チャンピオンはavex ROYALBRATS D.LEAGUEは世界への扉を開く
■2年目の「D.LEAGUE」11チーム制、新制度導入でさらに進化
そして、来たる11月14日、「D.LEAGUE」2年目の幕が開く。その開幕に先駆け、先日、目黒雅叙園で行われた「21-22 SEASON」に向けてのプレスカンファレンスでは、株式会社Dリーグ平野岳史代表取締役CEO、神田勘太朗COO、チーフクリエイティブアドバイザーのEXILE HIRO氏、また、FIDA JAPAN名誉会長を務める杉良太郎氏、そして、あらたに2チームが加わった全11チームを有する参画企業の代表とチームメンバーが一堂に会し、次シーズンに向けての抱負を語り、進化する新制度の発表と、各チームのお披露目パフォーマンスが行われた。
日本発にして世界初のプロダンス・リーグとして、既存のどんなスポーツエンターテイメントにもなかった、自分の視点(=カメラの位置)を選んで観戦できるというユニークな配信方法や、ファンからの一票を試合結果に反映させる“オーディエンスジャッジ制”という独自の採点方式などが実施されてきたが、今シーズンはそれらがさらに進化し、これまでの「ソフトバンク5G LAB」や「U-NEXT」をはじめとする8社からの配信に加えて「WOWOW」と「LINE LIVE」が仲間入りして全10プラットフォームからの生配信も決定した。
さらに、この全プラットフォームでの配信時に、実績あるプロフェッショナルダンサーや解説者による、ダンスパフォーマンスの同時解説も行われるという。自分が選んだプラットフォームから、プロ野球の実況中継さながらに、臨場感あふれる会場の空気をプロの解説者に届けてもらえるとは朗報だ。
また、初年度のオーディエンスジャッジは、Dリーグ公式アプリの有料会員のみに許された投票だったが、今シーズンからは、無料会員も投票が可能となる。これにより、より多くのファンからの支持が反映されることになる。観客としての自分の一票が試合結果に反映されると思えば、当然見る側の真剣味も増し、視点も深まり、目も肥えてくるに違いない。これにより、ファン層の横の拡大のみならず、縦の深さをも追求できる。文字通り根強いファンの獲得が可能となるのだろう。
■ダンサー個人にナンバーが付く「ナンバー制度」
そして、書ききれない程ある“進化”のなかでも最も気になった新制度は、なんといっても「Dリーガーナンバー制度」である。野球やサッカーであれば、試合中の選手の識別等のためにも必須のナンバーだが、複数のペアダンサーが入り乱れる競技社交ダンスで男性側がナンバーを背に付けている姿以外では、ダンサー個人にナンバーが付くということは大変珍しいのではないだろうか……少なくとも筆者にはとても新鮮に感じられる。
正直、それを聞いた直後は若干違和感を覚えてしまった程だ。が、しかし、ナンバーによってDリーガーの印象と個性が浮かび上がり、ダンサー個々の認識が高まることを狙っているという。なるほど、ナンバーは選手識別のための単なる数字ではなく、より一人一人のダンサーを際立たせ、印象づけるための装置でもあるのだ。これも、ファンとの親和度を高めながら、“世界中すべての人に、「ダンスがある人生」をもたらす”というDリーグのミッション遂行のために、とことん追及して考え出されたアイデアなのであろう。たとえダンスを踊らず観るだけのファンだとしても、もちろん広義では、その人にとってはそれが「ダンスがある人生」なのだから。
そう合点がいってみると、この取り組みから、ゆくゆくはプロ野球の背番号同様に“偉大なるナンバー”が誕生し、ナンバー自体に様々な意味合いが付随してゆくという面白い現象も起こるのかもしれないといった、ワクワクした期待に変わってくる。
■1ステップの「重み」が伝えるもの
前述したとおり、プレスカンファレンスの中盤では、全チーム紹介のため、短いながらも各チームの個性をとらえたパフォーマンスが次々と流れるように披露された。ファーストシーズンの闘いを懐かしく思い出しながら、そのパフォーマンスを見始めた筆者だったが、昨年の開幕時のパフォーマンスを思い起こして比べると、明らかにDリーガー全員の逞しさが増していることに気が付く。プロフェッショナルとしての風格を身にまとい始めていることも見て取れ、胸にじんわりとした感動と誇らしい気持ちが広がってきた。
レギュラーシーズンの12ラウンドと、チャンピオンズリーグを通して、各チーム漏れることなく1ラウンドごとに輝きを増していることは肌で感じてきたが、この2年目の扉が開く手前に、彼らが目覚ましい成長を遂げたという事実をひしひしと感じ取ることが出来たことは何よりの収穫である。
この日、彼らの1ステップ1ステップは、以前よりもずっと強く確信に満ちていて、迷いがなく重みを増していた。確実なステップはダンサーにとって何よりも大事なものであり、すべての踊るエネルギーの源だ。また、その重みのあるステップを踏めるようになるまでの努力と熱量は、必ず観るものの心を動かすことができる。
そしてまた、その重みあるステップと共に初年度を経て目覚ましく成長を遂げた彼らの勇姿は、思う存分活躍することが叶い許された、この「D.LEAGUE」という大舞台が、世界中のすべてのダンサーにとって、いかに大切で意味深いことなのかの証にもなっていた。
「21-22 SEASON」の開幕を目前に、輝きと力強さを増したDリーグの、今後の躍進は疑う余地がない。コロナ禍を超え、日本中、いや、世界中のダンスファンが、心で共にステップを踏める至福の時は、もうすぐやってくる。
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著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター 『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。