テレビ東京・竹﨑由佳アナウンサー インタビュー【後編】前編はこちら自身のスポーツ経験についても語ってくれた竹﨑由佳アナ。『追跡LIVE!SPORTSウォッチャー』『FOOT×BRAIN』『卓球ジャパン!』(BSテレ東)など、数々のテレビ東京…

テレビ東京・竹﨑由佳アナウンサー
インタビュー【後編】
前編はこちら



自身のスポーツ経験についても語ってくれた竹﨑由佳アナ。

『追跡LIVE!SPORTSウォッチャー』『FOOT×BRAIN』『卓球ジャパン!』(BSテレ東)など、数々のテレビ東京のスポーツ番組を担当する竹﨑由佳アナウンサー。今年は東京五輪キャスターを務め、視聴者にさまざまな競技の情報・感動を届けてきた。インタビュー後編では、アナウンサーとしての彼女の仕事や、自身の競技経験、今後、スポーツシーンを世に届けていくうえでの想いなどを語ってもらった。

──前編では東京五輪についてのお話もありましたが、ご自身としては初となる五輪キャスターを務めた大会でもありました。実際に経験してみていかがでしたか?

 とてもすばらしい経験をさせてもらったと思っています。感謝の気持ちでいっぱいですね。改めて振り返っても、全日程を通して忙しさはありましたが、それもうれしい悲鳴と言いますか、体力的にも精神的にも、心地いい疲労感でした。頑張って働いている、というより「今私、貴重な経験しているな〜」という感じで。常に充実感にあふれていましたね。本当にありがたかったです。

──五輪に関われるというのは夢がありますよね。終始忙しかったと思いますが、どのようなスケジュールだったのでしょう?

 毎日めまぐるしかったです。朝6時半〜7時ぐらいにメダリストへのインタビューをして、それから国立競技場へ向かい、見られる試合があれば足を運んで、夕方からデイリーハイライトの放送。最後に夜の生中継もあるので、「何がいつだったっけ?」みたいな(笑)。記憶が飛び飛びになっていて。ずっと各競技の試合の結果や映像を確認するのに追われていました。

──ハードですね......。国立競技場を拠点に取材をしていたんですか?

 はい。新型コロナウイルスの影響で入場制限などもあり、あまり広範囲に動くことはできなかったので、ほとんど国立競技場のスタジオにいました。本当はいろんな場所に取材をして回りたかったので残念ですね。そのなかでも、国立競技場のすぐそばに卓球の競技会場である東京体育館があるので、あまり迷惑がかからない程度に、五輪関係者や報道陣が比較的少ないシングルスの初戦あたりは見ることができました。

 現地取材においては、選手と直接お話することはできないので、会場の雰囲気等を確かめていた感じですね。インタビュー自体は、選手にスタジオに来ていただいて大会中ほとんど担当できたので、たくさんのメダリストにお話を聞けたことは私の財産です。ただその分、「やったー金メダルだ!」と喜んだり、「負けて悔しい......」と落ち込んだりと、私自身ものすごく感情の揺れ幅があって。気持ちを安定させるのは大変でした。

──そういった数多くの競技を伝えるにあたって、現在も担当されている3つのスポーツ番組での経験は大きかったのではないですか?

 本当に大きかったです。3番組ジャンルが違いますし、専門性もあるので、いろんなスポーツの知識を深めることができました。『追跡LIVE!SPORTSウォッチャー』では、さまざまなスポーツの話題はもちろん、メインで取り上げている野球。『FOOT×BRAIN』ではサッカー、『卓球ジャパン!』では卓球と、幅広く携わらせてもらえたことが、五輪キャスターの仕事にすごく生きました。

──それぞれの番組を通じて、どんな気づきや学びがありましたか?

 まず「SPORTSウォッチャー」は、中畑清さんはじめ、最近は掛布雅之さんや五十嵐亮太さんも出演してくれたりと、ゲスト解説の方がめちゃくちゃ豪華なんですね。そういったプロフェッショナルな方々から、いろんな視点で野球の解説を間近で聞けるので、ものすごく勉強になるんです。たとえば、中畑さんだと横浜DeNAベイスターズの監督経験があるので、この場面で監督はどう考えているのか。「この采配はこういう意図があったんだよ」とか。プレーヤー以外の心境も知ることができます。

 掛布さんにおいては、いつも予測することがズバズバ的中するので、驚きの連続ですね。「ファーストとサードにこの選手をおけば守備は堅いよ」と話すと、次の試合ではそのとおりになったりして。そういう「先読み力」と言いましょうか。次のプレーを予測して楽しむ、という野球の醍醐味を教えてもらいました。なので、試合を見る時に解説が掛布さんだと、「わ〜!」ってなるぐらい大好きになっちゃっていますね。

 加えて解説で言うと、試合中継で里崎智也さんにもよくお世話になっていて。とても論理的なトークを展開されますから、「着眼点はそこなんだ」という新しい気づきがたくさんありますね。それに私が素人なので、よくつっこまれるんですよ。たとえば、私が「お、150キロ後半が出ましたね!」って言うと、「スピードガンで見ているようじゃまだまだ甘いね」「球速じゃなくて球威だよ」みたいな感じで(笑)。

──里崎さんらしい(笑)。みなさんの解説はわかりやすいですし、コメントが"熱い"ですよね。

 そう思います。特に中畑さんはハートが熱くて。筒香嘉智選手がメジャーで活躍しているじゃないですか。彼の頑張りを映像で見ている時、ふと中畑さんを見ると、目から涙があふれそうになっていて。おふたりは師弟関係というのもありますし、筒香選手を含め、常に監督時代に育てていた選手たちのことを気にかけていますね。



自身の担当番組について語る竹﨑アナ

──『FOOT×BRAIN』ではいかがですか?

 この番組では、サッカーを専門的にお伝えすることはもちろんですが、「サッカー×経済」とか、野球選手がゲストに来てお話ししたりだとか。「サッカーファンの裾野を広げるためなら何でもテーマにしちゃおう!」というコンセプトを持った番組なんですよ。

 以前には、サッカーを軸に、女性アスリートの"生理"をテーマとして取り上げたことがあって。お子さんを出産した現役選手や、生理用品を作っている方をゲストに呼んで語り合う場を作ったりしました。ネットでもかなり話題になりましたね。本当に幅広いテーマをスタッフが知恵を絞って企画してくれるので、サッカーから派生したいろんなことを知ることができています。

──いろんな角度からサッカーを見られるから、毎回新しい発見がある、と。

 はい。私自身、『FOOT×BRAIN』で学んだことを生活に取り入れたりしています。そのなかでも、長友佑都選手(FC東京)の専属料理人・加藤超也さんがゲスト出演してくれた時に伝授してくれた、"ファットアダプト食事法"という疲れにくいカラダをつくる食べ方は、積極的に実践しています。アスリートだけじゃなく、一般の方の私生活にも役立つ情報があるのもこの番組の特徴ですね。

──もうひとつの『卓球ジャパン!』は、国内唯一とも言える卓球の専門番組ですよね。

 そうですね。五輪や世界卓球などの国際大会を取り上げて、深く解説しています。卓球って、球のいろんな回転があったり、打球速度が速すぎたりして、初めて見る人からすると「え、今何が起こったの?」ってなるぐらい理解するのが難しいスポーツでもあります。でもこの番組では、注目すべきプレーをスローモーション映像で流しながら、解説の平野早矢香さんやゲストの方が丁寧に教えてくれるので、卓球の奥深さを知ることができるんですよ。

 それにニュースで流れる試合結果の映像だと、最後の決め球にだけにフォーカスされがちなのですが、実はその前段階の「この1プレーがあるからフィニッシュにつなぐことができている」とか。そういう試合全体の流れを学ぶことができるので、私も卓球にどんどんのめり込んでいってますね。

──どの番組も専門性が高いので、学びの幅や深さがありますね。ちなみに、何かスポーツの経験はありますか?

 実は私、まったく運動ができなくて......(笑)。それがすごくコンプレックスではあるんですけど、唯一、苦手意識なくできるのが長距離走なんですよね。忍耐力はあるみたいなので。実際に2018年の香港マラソンに出て、途中歩きつつではありますが、6時間でなんとか完走することができました。ゴールした瞬間に号泣して、「もう2度と走りたくない!」って思いましたけど、何かひとつ成し遂げたという意味では自信にはなりましたね。その代償に、翌日は足がまったく動かなくなりましたけど、それすら勲章みたいな感じで、心地いい筋肉痛でした。

──それはすごい! フルマラソンは番組企画ではなく、ご自身から挑戦しようと?

 そうですね。ずっと挑戦したいなと思っていて、ホノルルマラソンを完走した友人がいたので、誘って一緒に出場しました。私、走り方がすごく変なので、それを知ってる人に見られたくなくて、わざわざ香港に行くっていう(笑)。

──そんな理由が......(笑)。

 ただ、そんな私でも挑戦してみたいスポーツができたんですよ! 東京五輪前にスポーツクライミングを取材した際、実際に体験させてもらったんですね。そうしたら、野中生萌選手のコーチの方から「けっこういいですね」と言ってもらえて。おそらく、身長が高い分(167cm)、手が届く範囲が広いという利点があったからだと思うんですけど。私、スポーツで褒めてもらえたのが初めてだったんですよ(笑)。翌日の腕の筋肉痛のひどさには恐怖を覚えましたが、ぜひまた挑戦したいなと思っています。

──最後に、今後もさまざまなスポーツシーンを届けていくうえで、心がけていきたいことがあれば教えてください。

 私ができることって本当に限られていると思うんですけど、やはりメインとなるのはアスリートたち。その活躍を視聴者の方は見たいと思っているはずなので、スポーツキャスターとしての根本を忘れずに報道していきたいと思っています。また勝ち負けといった結果だけじゃなく、その裏側も大事な部分。結果までの過程には、その選手はこういう努力や経験を積んできている、だからこそ涙や笑顔があふれているんだ、というアスリートのストーリーも届けていきたい。長い目で一人ひとりの選手を追いかけ続け、本当に伝えたいことを伝えられる、そんなスポーツキャスターになっていきたいですね。

Profile
竹﨑由佳 たけざき・ゆか
大阪府出身。2017年テレビ東京入社。『追跡LIVE!SPORTSウォッチャー』『FOOT×BRAIN』『卓球ジャパン!』(BSテレ東)などのスポーツ番組に加え、『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』ほかバラエティ番組も担当。今年は東京五輪キャスターにも抜擢され、スポーツキャスターとして活躍の場を広げている。