Jリーグクライマックス2021 J1リーグ、川崎フロンターレが華やかに優勝を決めた日だった。11月3日、栃木グリーンスタ…

Jリーグクライマックス2021

 J1リーグ、川崎フロンターレが華やかに優勝を決めた日だった。11月3日、栃木グリーンスタジアム。J2で14位の栃木SCはJ2残留をかけて泥臭く戦っていた。

 上位のジェフ千葉を相手に0-0のままで粘ったが、終盤にセットプレーの流れからクロスを中に折り返され、元日本代表DF鈴木大輔にヘディングで叩き込まれてしまった。

 結局、0-1と手痛い敗戦。ライバルも同じく足踏みしたことで順位は変わらなかったが、予断を許さない。残り5試合、19位から22位の4チームがJ3に降格することになるが、栃木と19位の相模原SCとの勝ち点差はわずか5だ。

14位 栃木SC        38ポイント
15位 レノファ山口FC    38P
16位 大宮アルディージャ  37P
17位 ツェーゲン金沢    37P
18位 ザスパクサツ群馬   37P
19位 SC相模原  33P
20位 愛媛FC  33P
21位 ギラヴァンツ北九州  32P
22位 松本山雅FC  31P

「これから残り試合は、勝ち点1を取るために割り切る必要が出てくるかもしれない」

 試合後、田坂和昭監督は切実な面持ちで語っている。

「(千葉戦は)最後はパワーで寄り切られた形でした。連戦で体力的な厳しさもあって、攻め手を欠いて。セカンドボールの勝負でしたが、ボランチのところで勝てず、相手に拾われて押し込まれてしまいました」

 率直に言って、栃木には得点を取る形が見えなかった。「相手にサッカーをさせない」という意識が強すぎ、自分たちでボールを握る、回すという点はほとんど鍛えられていない。まともに攻撃を作れず、スクランブルでの得点に頼るしかないのが現状だ。

 もっとも、1試合勝つだけで精神的に優位に立てる順位にはいる。

「悲観はしていない」

 試合後、ブラジル人FWジュニーニョは語っていたが、しぶとい人海戦術を積み上げてきただけに、今はそれで勝ち点をもぎ取るしかないだろう。

 勝ち点7の間に9チームがひしめき合う勝負は緊迫感があり、過酷だ。はたして、どこが残留争いで生き残るのか。



残留に向けて厳しい戦いが続く大宮アルディージャの選手たち

 16位と低迷する大宮アルディージャは、直近2試合で、1、2位のジュビロ磐田、京都サンガにラストプレーで連敗するという苦境にあるが、シーズン途中でチームを率いることになった霜田正浩監督の「プレー設計図」は少なくとも見えている。

 首位・磐田との一戦では、前半から出足の鋭さで、敵陣で相手のボールの出どころを抑え、球際で力強く戦い、それぞれがいいポジションを保って、何度かボールを奪い返していた。その流れのセットプレーから先制に成功。ボールを持ってイニシアチブを握ろうとする意欲も見せ、それがトレーニングされていることも伝わった。

 しかし、つなげることでのミスからプレスバックで奪われ、同点弾を浴びたのも事実である。選手個人の技術レベルや負け続けてきたことによるメンタリティの問題もあるかもしれない。足を使ったこともあり、最後は力尽きるかのように戦力差に押し込まれ、逆転負けとなった。

「相手の力をまともに受けてしまった。もう少しボールを持つ時間を増やせるとよかったが、最後はケガ人も出て疲弊し、走れなくなっていた。(アディショナルタイムに)逆転されたシーンはシュートブロックにも行っているし、選手を責められない。ベンチワークで何かできたはずだし、私の責任です」

 霜田監督は自戒を込めて語ったが、一時は21位とどうしようもなかったチームを、どうにか戦える状態にまで引き上げてきた。そのサッカーへの取り組みは可能性と言える。結果のみで語られる残留争いを乗り越えたら、希望が見えるのではないか。

 一方でこのままでは降格する危険水域に入ったのが、下位4チームだろう。

 19位の相模原は昇格クラブだけに、むしろ健闘と言えるかもしれない。20位の愛媛は昨シーズンも21位で、この順位は驚きではない。21位のギラヴァンツ北九州は、主力FWとGKという得失点に直結する選手を入れ替えたことが、苦戦につながっている。

 最下位の松本山雅は厳しい状況だ。今シーズン、松本は20人以上もの選手を入れ替えて挑んでいる。ほとんど丸ごとチームを入れ替えてしまったわけで、当然ながら基盤は弱くなる。立ち戻るところを失ったも同然で、強いリーダーシップと明確なビジョンが欠かせなかったが、17位まで落ちたところで柴田峡監督を解任。名波浩監督を後任に据えたが、直近は目を覆うばかりの5連敗だ。

 松本は2019年まではJ1に在籍していた。J1とJ2を行き来しつつも、セットプレーの質を高めながら、実直な戦いで存在を示してきた。本拠地アルウィンの熱気をプレーに投影できるのも特徴的だった。今回の残留戦でも、ホームでどれだけ勝ち点を拾えるか、そこに縋るしかない。逆説すれば、それは切り札とも言える。11月7日のアルビレックス新潟戦は、命運をかけた一戦になるだろう。

 残り5試合で、順位はまだまだ入れ替わってもおかしくはない。戦力的には9チームとも拮抗。負け越してきたチーム特有の不具合をどこも抱える。単純に勝負への執着心が分かれ目となるか。

 J3に落ちると、多くのクラブが足を取られるように這い上がるのに苦労する。下降線を辿ると、いくらでも下に引っ張られるのだ。意地でも負けられない試合が続く。