グループステージを折り返した今季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)で(本稿執筆時点)、得点ランキングのトップを走ってい…
グループステージを折り返した今季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)で(本稿執筆時点)、得点ランキングのトップを走っているのは27歳の伏兵だ。

現在CL3試合で6ゴールを挙げている、アヤックスのセバスティアン・ハラー
オランダのアヤックスに所属するコートジボワール代表FWセバスティアン・ハラーの名は、フットボールファンの間でもあまり馴染みがないかもしれない。なにしろ、パリ郊外で生まれたこのストライカーは、今季初めてCLに出場しているのだ。
ところが、そのデビュー戦が衝撃的だった。敵地でのスポルティング(ポルトガル)戦に前線の中央で先発すると、開始69秒でいきなり先制点。味方のシュートのこぼれ球を冷静に頭で押し込み、記念すべき大会1点目を決めた。さらにその7分後には、右からの折り返しに滑り込んで加点し、後半にも2点を追加。
CL史上、デビュー戦でハットトリックを遂げた10人目となったばかりか、初戦で4得点を決めた2人目になった──唯一の先人は元アヤックスのマルコ・ファン・バステン(ミラン在籍時)だ。
ただしその偉大なレジェンドとは異なり、ハラーは遅咲きのFWだ。オセールの下部組織からファーストチームに上がり、当初は2部リーグでプレー。以降、ユトレヒト(オランダ)とフランクフルト(ドイツ)を経て、2019年夏にウェストハム(イングランド)へ移ったものの、プレミアリーグでは適応に苦しんだ。1シーズン半でリーグ戦10得点に終わり、昨年1月に再びオランダ(アヤックス)へ。これが転機となった。
近年のプレミアリーグを観ているファンからすれば、ハラーのCLデビュー戦の4得点はまぐれにも思われたかもしれない。だが続くベシクタシュ(トルコ)戦とドルトムント(ドイツ)戦でも、一度ずつネットを揺らし、ここまで6得点でCLのトップスコアラーとなり、枠内シュートも最多の10を記録。混戦も予想されたグループCで3戦3勝と首位に立つアヤックスを、文字通り、最前線から牽引している。
190cmの長身と強い身体、確かな技術を兼ね備え、多彩な得点パターンから冷静に決める。両足、頭はもちろん、ベシクタシュ戦では、元ブラジル代表ライーが1992年のトヨタカップで決めたような、太ももで押し込んだ形まで。大柄な体躯を生かしつつ、それだけに頼らないスタイルは、彼が憧れた選手の影響もありそうだ。
「ズラタン・イブラヒモビッチやティエリ・アンリ、ディディエ・ドログバら、常に学びを得られるストライカーはいる」とハラーはオランダメディアに話した。「それから、レアル・マドリード時代のラウールもよく観ていた。実は彼のシャツを持っているんだ。ラウールは速くなかったし、アンリのような運動能力も持っていなかったが、優れたテクニックがあった。エレガントな動きで、常に最適な場所にいたよね」
ハラーを1点差で追うのが、バイエルン(ドイツ)のロベルト・レバンドフスキと、リバプール(イングランド)のモハメド・サラーだ。
33歳の前者は過去6シーズン、全公式戦を通じて少なくとも毎年40ゴールを挙げている世界最高級のゴールハンターだ。一昨季にはCLで15得点をマークして、バイエルンの6度目の欧州制覇に貢献し、昨季はブンデスリーガで41得点を重ねてゲルト・ミュラーの記録を更新。ここ2シーズンの総得点で言えば、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドをも凌いでいる。
コンプリート・ストライカー──このポーランド代表FWを形容する際に、頻繁に使われる言葉だ。185cmの均整の取れた体は、栄養士の妻の助けもあって、当たりにも怪我にも強い。地上、空中どちらも得意とし、公には右利きとされるが、左足もほぼ同じように使える。ボックス内から面白いようにゴールを決める一方、直接FKを突き刺すことも。
また16歳の時に父親を亡くし、その後故郷のクラブから放出されながら、ここまでの実績を積んでいるように、メンタルもタフに違いない。
そんな隙のない完璧な点取り屋は今シーズンも、当たり前のようにネットを揺らし続けている。初戦のバルセロナ戦でクラブ記録の18試合連続得点をマークすると、その記録はブンデスリーガ第5節に19まで更新。同第6節に20試合ぶりに無得点に終わったものの、CLでは以降の2試合でもゴールしている。この年齢にして、ますます決定力に磨きをかけている印象だ。
ドルトムント時代にレバンドフスキを獲得し、急成長に導いたユルゲン・クロップ監督(現リバプール)は以前、これまでに指導した選手のなかで、彼こそが最高の教え子だったと地元紙に明かしている。
「特大のポテンシャルは持っていた。だがそれを開花させるために懸命に努力する姿は、ほかに見たことがないものだった」
クロップ監督にとって、レバンドフスキが過去最高の選手なら、現在最高の選手はサラーとなる。
「彼より優れた選手がどこにいる?」と、この54歳のドイツ人指揮官はプレミアリーグ第8節のワトフォード戦後に話した。「メッシとロナウドが成し遂げてきたことや、これまでの彼らの寡占について、ここで語ることもないだろう。現時点では、彼(サラー)がベストだ。今の彼のパフォーマンスは、途方もない」
そのワトフォード戦では、左足のアウトサイドからの完璧なアシストで先制点をアシストし、後半にはボックス内で3人に囲まれながら、シュートコースを作って信じがたいゴールを決めている。その前節のマンチェスター・シティ戦や、CLのアトレティコ・マドリード戦でも似た形の得点を挙げた。今季10試合連続で得点して、クラブ記録を更新した。
ハラーやレバンドフスキとは異なり、この29歳のエジプト代表は右サイドから得意の左足でゴールを狙うことが多い。超人的なスピードとスキルを含め、そのスタイルは全盛期のメッシを彷彿とさせる。サラーを「世界最高」と称えるクロップ監督に同意する識者も多い。
世界のエリートレベルの主役たちは、進化を止めない。変わりつつあるその顔ぶれを確認すると共に、彼らの途轍もないパフォーマンスを堪能したい。