近年にない不振に見舞われたバルセロナは、ついに決断を下した。ラ・リーガ第11節のラージョ・バジェカーノ戦に敗れた後、ロ…

 近年にない不振に見舞われたバルセロナは、ついに決断を下した。ラ・リーガ第11節のラージョ・バジェカーノ戦に敗れた後、ロナルド・クーマン監督を解任したのだ。
 数年前ならば考えられないような状況に陥っているが、クラブには何も残されていないわけではない。クラブが礎としてきた、自前の育成選手たちである。
 経済的な問題が、現在の苦境に直結している。だが視点を変えれば、バルセロナの違う未来が見えてくる。

■「失格」の烙印を押されたアルバ

 ピケやセスクは「出戻り組」の選手になった。バルセロナは2007年夏に移籍金500万ユーロ(約6億円)でピケを、2011年夏に移籍金3400万ユーロ(約44億円)でセスクを復帰させている。

 また、出戻り組といえば、世代は異なるがジョルディ・アルバがいる。

 ただ、アルバの場合、セスクやピケと違い、“失敗”の烙印を押されてクラブを後にした過去がある。

 小柄だったアルバは、カデテ(ジュニアユース世代)の時点でトップで戦える選手にならないと判断された。その後、アルバはコルネジャというバルセロナの街クラブでプレーしたのち、バレンシアに移籍。そこで、頭角を現した。

 アルバにとって大きかったのは、バレンシア時代のコンバートだろう。ウナイ・エメリ監督によってウィングからサイドバックにポジション変更され、覚醒した。最終的には、ピケやセスクのように、2012年夏にバルセロナが移籍金1400万ユーロで彼を再獲得する運びとなった。

■セスクら買戻しの資金を転用すれば…

 セスク、ピケ、アルバ…。彼らのケースから分かるのは、カンテラ重視は資金の調達・確保に助力するということだ。

 3人を取り戻すのに費やした移籍金を計算してみる。その総額は、実に5300万ユーロ(約70億円)にも上る。単純な比較ではあるが、この金額を要した過去の他クラブの移籍を見ると、昨夏にチェルシーティモ・ヴェルナー獲得に費やしたのと同額である。カイル・ウォーカー(2017年、トッテナム→マンチェスター・シティ)は5270万ユーロ、レロイ・サネ(2016年、シャルケ→マンチェスター・シティ)は5200万ユーロと、ハイレベルな選手を迎えることもできたかもしれないのだ。

 たとえ補強に使われるなくとも、それだけの金額を無駄にしないだけでも価値あることだ。現在のバルセロナには、13億5000万ユーロの負債がある。コロナ禍での財政圧迫で、ついにナタは振るわれたものの、ロナルド・クーマン監督の解任さえ、違約金などの関係で簡単にはできない状況に陥っていた。

 見方を変えれば、自前で育てた優秀な選手を高額で買い戻すという無駄な金の使い方をしなければ、シーズン前などもっと早期の監督交代などで、ここまで泥沼にはまることはなかったかもしれない。また、新監督に優秀な人材を招くなど、さらなる明るい未来を広げることにつながっていたかもしれない。

■「ラ・マシアこそがバルセロナの進む道」

「ラ・マシア(バルセロナの育成寮)こそが我々の道だ。バルセロナには、不可侵のプレースタイルがある。純正で、認知された、他チームにはない、プレースタイルだ。スポーツ的側面の成果と照らしあわせて、そこをつなげられれば、もう一段階高いレベルに行けるはずだ。そうすれば、我々は打倒不可能なチームになる」

 これはジョアン・ラポルタ会長の言葉である。

 カンテラこそ解決策ーー、と言いたいところだが、それほど単純な話ではないだろう。先のクラシコで、バルセロナはレアル・マドリーに敗れている。若い選手の経験不足を指摘する声もある。
だが、未来のバルセロナのピッチに立っているのは、現在の若手なのだ。
まだ買い戻しには至っていないが、近年ではダニ・オルモ(ライプツィヒ)を復帰させるという報道もあった。

 ダニ・オルモもセスクのようにトップで活躍する自分を思い描くことができず、16歳でディナモ・ザグレブに移籍している。元々、スペインとクロアチアにルーツを持つ選手だ。最終的にはスペイン代表でのプレーを選んだものの、ルーツのある国でプロのサッカー選手として戦うというのは、当時の彼にとってはある種の必然だったのかもしれない。

 そして、これもまたセスクと同様に、復帰が実現すれば、また無駄金を使うことになるが、ダニ・オルモの輝きは、ラ・マシアがいまだにその価値を落としていないという証明なのだ。

 若手の起用が将来の成功を約束する、と言い切れるほど、フットボールの世界は甘くない。それでも、「カンテラに賭ける」というのはバルサらしいと思え、その哲学を信じて栄光に辿り着いたというのも確かなのだ。

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