彗星の如く現れたユン・イナ、推薦出場の1部ツアーでも7位 日本女子プロゴルフツアーでは近年、若手の台頭が著しいが、お隣の韓国女子プロゴルフツアー(KLPGA)でも若くて強い選手が次々と登場している。 先月、2部の「ドリームツアー」が全22試…

彗星の如く現れたユン・イナ、推薦出場の1部ツアーでも7位

 日本女子プロゴルフツアーでは近年、若手の台頭が著しいが、お隣の韓国女子プロゴルフツアー(KLPGA)でも若くて強い選手が次々と登場している。

 先月、2部の「ドリームツアー」が全22試合の日程を終了し、賞金女王が決まったのだが、その選手が2003年生まれの18歳だったことで、韓国女子ゴルフ界がざわついている。

 その名はユン・イナ。今季2部ツアーで優勝2回、2位4回を含むトップ10入り9回で、賞金総額9197万ウォン(約920万円)を獲得。賞金ランキング1位となり、2022年の1部ツアー出場権を勝ち取った。韓国ツアー2部といっても、1部に上がればすぐにでも優勝できる選手がゴロゴロいる。その中で将来を嘱望されていた1人がユン・イナだった。

 彼女が凄いのは今年6月にプロデビューしたばかりの3部ツアー初試合で、1ラウンドでイーグル3回を記録して周囲を驚かせたかと思えば、その勢いで翌週の試合で優勝を勝ち取ってしまったからだ。

 しかも、推薦で出場した今年の1部ツアー「OK貯蓄銀行パク・セリインビテーショナル」では通算11アンダーの7位タイに入り、レギュラーツアーでも十分に戦えることを証明してみせた。

 彼女は小学4年生の11歳の時にゴルフを始めた。中学1年の時に韓国ジュニアゴルフ選手権大会で優勝すると、中学2年の時に国家代表選抜戦を勝ち抜き、2019年から2年間代表選手として活躍。身長170センチと体格にも恵まれ、ドライバーの平均飛距離は260ヤード。ロングドライブが長所だが、ショートゲームの精度も高く、今季2部ツアーでの平均ストロークは69.1613と隙がない。

 特にプロ入り後はパッティングの強化に時間をあてたという。

 10月25日付けの韓国スポーツサイト「MKスポーツ」のインタビューで、結果を残せている秘訣について「トーナメントが開催されるコースに合った練習、ウェッジの距離感、グリーンスピードなど2部のコースに合う練習をたくさんしました。また、パッティングのレッスンもたくさん受けるようにしています。パットを打つ時に大事なのは、前向きなマインドと自信を持つことです」と語っている。

18歳とは思えない落ち着きぶりとショットの精度

 プロ入り当初の目標は「2部ツアーで賞金ランキング20位以内(翌年の1部ツアー出場権を付与)に入ること」だった。しかし、ポテンシャル以上の力を発揮し、18歳とは思えない落ち着きぶりとショットの精度で一気に賞金女王へと上り詰めた。

「来年はレギュラーツアーで優勝1回以上と新人賞を目標に、今年の冬はアメリカでしっかりと練習したい。100メートル以内のウェッジショットとグリーン周りのアプローチ、パットまでしっかり強化して、完璧な選手になれるように努力してきたいです」

 来季は韓国1部ツアーでの活躍が十分期待されるが、その先に見据えるのは米ツアーへの進出だろう。もちろん、彼女が世界ランキングを上げてくれば、いずれスポットで海外メジャーへ参戦することも考えられる。そうなれば日本選手のライバルになることは間違いない。日本のゴルフファンも“ユン・イナ”の名を覚えておくのも悪くないかもしれない。金 明昱

1977年生まれ。大阪府出身の在日コリアン3世。新聞社記者、編集プロダクションなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めた後、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。2011年からは女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子ゴルファーと親交を深める。現在はサッカー、ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。著書に『イ・ボミ 愛される力~日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学(メソッド)~』(光文社)。