ラグビーのWTBというポジションは、タッチライン際のスペースを走ってトライを取るのがおもな仕事とされる。しかし今度のサンウルブズの先発WTBは、仕留め役以外の責任も果たしたいと語る。

 4月8日、東京・秩父宮ラグビー場。国際リーグのスーパーラグビーで今季開幕5連敗中という日本のサンウルブズは、1週間のバイウィーク(試合のおこなわれない週)を挟んで第7節に臨む。

 3月17日の第4節(プレトリア、ロフタス・ヴァースフェルド)で21-34と屈したブルズから、今季初白星をもぎ取りたい。今年度2回目となる本拠地での一番に向け、どちらも新加入WTBの福岡堅樹と中鶴隆彰は「チェイスをしっかりと整備していけたら」と口を揃える。

 チェイスとは、味方がキックを蹴った後の防御。サンウルブズは4月から、その動きを組織化している。日本代表のFBで合流したての松島幸太朗いわく、「キックを蹴った後にビッグゲインをされているという状況が多いので、隣の人とコミュニケーションを取りながらチェイスするという練習をしました」。WTBなどの快速選手が相手の補球役に迫り、その後方を他の選手が等間隔に並ぶ。

「自陣でプレーしすぎないようにするには、キックチェイスでプレッシャーをかけたいと思います」

 こう宣言するのは福岡。国内屈指のスピードスターだ。筑波大時代から15人制の日本代表として活躍し、パナソニックの新人だった2016年夏には、男子7人制代表としてリオデジャネイロ五輪4強入りを成し遂げている。

 初体験となるスーパーラグビーでも、今季ここまで全5試合に先発して4トライを奪取。好調を維持している様子だ。もっとも当の本人は、自身のトライラッシュはチーム方針による産物だと強調する。

「このチームのスタンスとして、WTBでトライを取り切る形が多い。その意味ではいいスコアを取らせてもらえているな、と」

 サンウルブズはハイテンポな攻めを志向。前方、左右のスペースへ効果的に配球する。WTBのひとつ手前あたりでは、身体の大きなNO8やFLの選手がチャンスメイクを図る。その流れで取ったスコアに酔うよりも、「もっと貢献できる部分はある」と課題を口にする。それが福岡の思いである。

 具体的な改善すべき点は、「ディフェンスの部分など…」とのことだ。特に例を挙げたのは、4月から都内の練習で徹底しているチェイスの動きだ。

 自陣でブルズの力業に気圧されないよう、蹴り込んだ先で時間を費やしたい…。背番号11は、そんなビジョンを落ち着いて語った。

「チーム(サンウルブズ)では、自陣でのアタックのミスから失点するケースも多い。それはできるだけなくしたい。蹴らなければいけない部分は、出てくる。そこでチェイスをしっかりと整備していけたら。自分自身、あまりトライを意識せず、チームが勝つためにプレーしたいです。もちろん、取れる時は取りたいですが」

 一方、背番号14を付ける中鶴は、2試合ぶりのメンバー入り。内容を求めると同時に「結果を残したい」と断じる。ブルズとの前回対戦時は、向こうに退場者が出ながら終盤に逆転された。悔しさを明かすのは自然な流れだった。

「チーム全体がいけるぞという流れになったのに、そこからサンウルブズらしさが出せなかった。あの試合に限って言えば、数的優位を活かして攻めればよかったのに、蹴ってしまって…。そこはチーム全体で反省し、整理されています」

 前年度は入部4年目のサントリーでレギュラーを獲得するや、国内のトップリーグでシーズン最多の17トライをマーク。チームが優勝するなか、MVPにも輝いた。

 スーパーラグビーでは、人垣をすり抜けるという長所を示しにかかる。具体的なシーンについては「近場でのミスマッチ、SOとCTBの間のスペースをうまく抜けたら…」とイメージする。機密事項を省きながらその心を紐解けば、接点の付近では俊敏性より身体の大きさの目立つ選手を抜き去ることができるし、その外側に並ぶSOとCTBも味方のおとりに引っかかるのでは…という意味が浮かぶ。

 チームのシステム上、チェイスの際の中鶴は先陣を切って球を追う。もともと駆け上がりながらのタックルが得意な背番号14は、こうも宣言している。

「今回は、蹴るとしても(ただ相手ボールにするのではなく)フィフティ・フィフティな状況を作っていく。周りが要求していないところで蹴ると、チェイスラインもうまくいかなくなる。しっかりと意思統一したいです。それが正しいか正しくないかはとにかく、全員が同じ絵を見る。今週は、チーム全体でチェイスラインを作る練習をしてきました。僕は(相手と空中で)競ったり、最初のタックルをするのが役割になると思います。そこをしっかりとやれたら」

 福岡は身長175センチ、体重83キロの24歳で、中鶴は身長177センチ、体重82キロの26歳。決して大柄ではない若き東洋人が、ボールのないところでも速さを活かす。(文:向 風見也)