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■新人投手を3つの指標で分析する

 4月6日は新人投手の門出の日となった。16時20分、楽天の高梨雄平が今季セパ新人の白星一番乗りを果たすと、その約1時間後にはロッテの佐々木千隼が初先発初勝利。高梨、佐々木はともにオープン戦から結果を残し、首脳陣の期待に応えている。

 佐々木はローテーションの都合により開幕一軍ではなかったものの、今年は12球団で15人(投手10人、野手5人)の新人が開幕一軍入りした。その中には、高梨のようにドラフト9位と下位指名ながらチャンスをつかんだ投手もいる。果たして彼らはキャンプ、オープン戦を経てどのように評価を高めたのか。データスタジアムで今年から全試合で収集を始めたオープン戦での詳細データをもとに、各投手の投球スタイルを探ってみる。

 1球ごとの投球結果から投手の能力を考える際、最も基本的なポイントを3つ挙げるならば下記となる。
・ストライクを取れる(ボール球を少なくする)
・バットに当たらない球を投げられる(スイングされても空振りを取れる)
・長打を打たれにくい(ゴロの打球を打たせやすい)

 今回はこの観点をもとにオープン戦の「ストライク率」「コンタクト率」「ゴロ率」、それに加えて「被打率」を主な指標として、各投手の現状と今後を占ってみたい。

■オープン戦での投球成績一覧

 上の表はオープン戦における新人投手の投球成績一覧だ。グレーで塗られている箇所は、2016年プロ野球のシーズン平均に比べて悪い項目を示している。ゴロ率は必ずしも「良い、悪い」で判断すべきでない指標だが、今回はゴロは長打になりにくいという視点から「ゴロ率が低い=グレー」としている。
 限られた量のデータ、しかもオープン戦という場のものではあるが、各投手の特徴は少しずつ見えてくる。例えば高梨はコンタクト率が低く、空振りを取れそうなタイプ。表には載せていないが、球種別に見るとスライダーのコンタクト率が55%と武器になっている。また、同じ楽天では菅原秀の数字が全体的に良く、特にスライダーのコンタクト率は43%と良い数字だった。また、谷岡竜平(巨人)も同指標が43%とスライダーを決め球にできるスタイルだ。

 新人投手全体で目立つのはストライク率の低さで、26投手中18投手が昨年のシーズン平均を下回っていた。その中でもともにドラフト5位の有吉優樹(ロッテ)、森原康平(楽天)が7割前後と高い数値をマークしており、安定感を買われて開幕一軍入りを果たしている。

※これ以降のデータで、球速は計測できたときのみを対象としており、単位はkm/h。投球割合は小数点第3位を四捨五入したものをそのまま載せており、見た目上合計100%にならない場合がある。

■佐々木千隼の課題はシンカー

 オープン戦の対戦打者数トップの佐々木から6位の加藤拓也(広島)までの各投手は、球種別のデータも見てみたい。この表は佐々木の球種別データと、ロッテで最優秀新人を獲得した石川歩の2014年新人時代のシーズンデータとなっている。
 この2人はシンカーを操るという共通点がある。特に石川は1年目のシンカーのストライク率、コンタクト率ともに持ち球の中で最も良く、一番の武器としていたことが分かる。佐々木はスライダーのコンタクト率が低いが、オープン戦ではシンカーで空振りを奪えず、対左打者の被打率は.322と対右打者に比べて1割程度悪かった。対左打者のシンカーストライク率も52%と高くなく、今後の安定した活躍にはこの球の精度向上が求められそうだ。

■床田寛樹の速いスライダー、濵口遥大の不思議な速球

 次に、開幕ローテに入った2人の左腕を見てみたい。まずは2戦目に先発した広島の床田寛樹。一番の特徴はスライダーにスピードがあることだろう。ストレートに対してスライダーを93%の球速にとどめており、コンタクト率も低い。この球で右打者からも空振りを奪えていることが長所だが、ストレート以外のゴロ率は低く、被本塁打が増える懸念はある。
 濵口遥大(DeNA)はチェンジアップが注目される投手だが、個人的にはストレートの球質が面白そう。DeNAの1つ先輩となる今永昇太のコンタクト率、ゴロ率と比べるとその差は明白だ。今永よりも濵口の方がスピードはあるものの、バットに当たってゴロになる割合が高い。同じように投げおろすフォームだが、もしかすると真っすぐが垂れる、もしくはスライドするタイプなのかもしれない。この辺りは最近流行のトラッキングシステムを通してみると明らかになるだろう。

■変化球でストライクを取りたい小野泰己

 3月中旬まで開幕ローテ濃厚との報道が出ていた小野泰己(阪神)だが、栄誉は勝ち取れなかった。その要因は変化球、特にスライダーの質にあるだろう。投球の83%がストレートと投球の大部分を直球に頼っており、スライダーはストライク率、コンタクト率ともにかなり悪い。また、ストレートと他の球種の球速差が大きい点も気がかり。富士大の1つ先輩でもある多和田真三郎(西武)と比べると課題は明らかで、まずは変化球でストライクを取れるような投球を身につけたいところだ。

■山岡泰輔のゴロを打たせるストレート

 最優秀新人の有力候補となる山岡泰輔(オリックス)はストレートのゴロ率がずばぬけて高く、トラッキングデータでその変化量を見てみたいタイプだ。昨年の新人投手の例と比較するなら、変則的なフォームが特徴な青柳晃洋(阪神)のツーシームのように高い数値となっている。一方で、カットボール、スライダー、カーブと曲がる系の変化球を3種類操っており、空振りを奪いたい時にはスライダーを効果的に使えている。欠点はチェンジアップがほとんど使えないことで、今後落ちる系の変化球をどう覚えていくのか、はたまた使わないのかは注目ポイントだ。

■ストレートで空振りを奪えていない加藤拓也

 慶応大時代からストレートで押す印象が強い加藤だが、その直球のコンタクト率は98%。空振り奪取はわずか1球だった。オープン戦ではフォークでストライクを取れており、被打率こそ悪くなかったが、今後一軍で活躍する上では気がかりな点が見えている。加藤以上にストレートの割合が大きい大学の先輩・福谷浩司(中日)も、故障などの影響もあって1年目は空振りを奪えずに苦労しており、一軍に定着したのは平均球速が150km/hを超えるようになった2年目からだった。
 ストレートのスピードを生かすならば加藤もリリーフの方が適性を見せそうだが、3月30日の二軍でのソフトバンク戦では7回を投げて0奪三振ながら11個のゴロアウトを奪い、1失点で勝利投手となっている。その試合の球種割合は不明だが、おそらく変化球を多めに投げていたのではないだろうか。本日、4月7日のヤクルト戦で初先発することが決まっているが、果たしてどのようなスタイルの投球を見せるのか注目だ。

■最優秀新人に選出された投手はどのような成績を残しているのか?

 最後に、近年で最優秀新人に選出された新人投手のデータを確認しておきたい。全項目でシーズン平均を上回っているのはクローザーだった山﨑康晃(DeNA)だけだが、どの投手もストライク率は総じて高く、コンタクト率もシーズン平均前後の値ではある。ゴロ率は投球のスタイルによってまちまちだが、年間通して「いつでもストライクが取れる制球力」「困ったときに空振りの取れる球種」は投手が活躍する上で重要な要素だと思われる。

 2011年から2015年まではセパともにすべてが新人投手から最優秀新人が選ばれており、今年も今回紹介した投手の中から選ばれる可能性は高いだろう。オープン戦で見せた長所を生かし、課題をどのように克服していくのか。今まさに始まった新人投手たちの挑戦に注目したい。

文:データスタジアム株式会社 金沢 慧