ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)が10月31日に行なわれます。ス…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)が10月31日に行なわれます。スピードとスタミナの両方で高いレベルを求められる一戦とあって、昔からここを勝てば「種牡馬としての価値が高まる」と言われてきました。
また、近年では良馬場だと1分57秒台が当たり前、1分56秒台の決着も見られるようになって、サラブレッドの"進化"を如実に感じられるレースでもあります。毎年このレースを迎えると、僕もワクワクして「今年はどんな感動を与えてくれるのか」と高まる気持ちを抑えることができません。
そして今年も、各世代を代表する名馬3頭が集結。昨年の三冠馬で、この天皇賞・秋を含めて残り2戦で引退予定のコントレイル(牡4歳)、GI5勝を挙げているチャンピオンマイラーのグランアレグリア(牝5歳)、今春のGI皐月賞(4月18日/中山・芝2000m)を制して、GI日本ダービー(5月30日/東京・芝2400m)でも僅差の2着と奮闘したエフフォーリア(牡3歳)が激突します。
ここにクロノジェネシスやデアリングタクトの名前がないのは残念ですが、この3頭の対戦だけでも十分に興奮します。歴史的な名勝負となり得ますし、まさにゴールの瞬間まで目が離せないのではないでしょうか。
おかげで、勝負の行方はこの"3強"で決まり、といったムードが世間でも充満していますが、僕の考えもほぼ同じです。いろいろな角度から見ても、この3頭については死角らしい死角が見当たりません。
アーモンドアイの引退レースとなった昨年のジャパンCでは、牡牝の無敗の三冠馬コントレイルとデアリングタクトも参戦。この3頭の激突が大きな話題となって、現にこの"3強"がワンツースリーフィニッシュを決めました。それと同様の結果になる可能性は大いにあります。
"2強"対決では「両雄並び立たず」という言葉があるように、どちらかが崩れることが多いです。しかし"3強"対決となると、ワンツースリー決着はよく見られます。古くは「TTG対決」と言われたトウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスの"3強"対決がそうでしたし、1997年の天皇賞・春ではマヤノトップガン、サクラローレル、マーベラスサンデーの"3強"が見応えある激闘を繰り広げてワンツースリーフィニッシュを果たしました。
今回の"3強"にもこうした名勝負が期待されますが、実は僕自身は、今年の天皇賞・秋は厳密に言うと"3強プラス1"と見ています。"プラス1"というのは、カレンブーケドール(牝5歳)です。

「3強」の一角崩しが期待されるカレンブーケドール
昨年のジャパンC(東京・芝2400m)では先述の"3強"に屈して4着に敗れていますが、2着コントレイルとはクビ+ハナ差で、3着デアリングタクトを含めた上位2頭とは同タイムでの入線を果たしています。ポテンシャルだけの比較ならば、今回の"3強"ともひけをとりません。
いまだ重賞勝ちはなく、GI2着が3度もあって「最強のシルバーコレクター」などと揶揄する声もありますが、デビューから一度も掲示板を外したことがない安定感は特筆モノ。これこそ、この馬のセールスポイントであって、勝ちきれなくても決して崩れないゆえ、常にマークが必要です。
カレンブーケドールは古馬になってからはずっと、芝2200m以上のレースを走ってきてスタミナが強化されてきました。今回は3歳時のGI秋華賞(京都・芝2000m)以来の2000m戦となりますが、この舞台で同馬の武器(スタミナ)を生かすとしたら、"3強よりも早めのスパート"で粘り込む作戦が効果的でしょう。
ここ2戦も騎乗している鞍上の戸崎圭太騎手自身、中団から差す形をとって上位から離されたGI宝塚記念(4着。6月27日/阪神・芝2200m)よりも、早めに動いて直線で一度は先頭に立ったGI天皇賞・春(3着。5月2日/阪神・芝3200m)のほうが中身の濃いレースで、よりチャンスがあったと感じ取っているはず。2000mという距離になって、実際に早めの仕掛けから押しきる競馬を試みれば、"3強"と互角以上に戦えるシーンが見られるかもしれません。
今年のGIレースにおいて、戸崎騎手が国枝栄厩舎の管理馬で臨んだ時は3着、3着、4着、1着という好結果を残しています。互いに、ふだんから風通しよく意見交換がなされているからでしょう。
おそらく今回も、カレンブーケドールのよさを存分に生かすため、相性のいい"コンビ"で前述したような作戦を考えていると思います。"3強"の一角崩しがあるとすればこの馬と見て、今回の「ヒモ穴馬」に同馬を指名します。