かつて世界の70%ものミント(ハッカ)を生産していたという北海道北見市。このエリアのハッカにまつわるスポットをめぐる秋のサイクリングの様子(後編)をお伝えしよう。※北海道北見ミントライド(前編)はこちらティータイムを経て、続いてはハッカ蒸留…

かつて世界の70%ものミント(ハッカ)を生産していたという北海道北見市。このエリアのハッカにまつわるスポットをめぐる秋のサイクリングの様子(後編)をお伝えしよう。

※北海道北見ミントライド(前編)はこちら

ティータイムを経て、続いてはハッカ蒸留を見学できる「仁頃ハッカ公園」を目指す。広大に左右に広がる田園地帯の間を走るのは、最高に爽快だ。交通量も少なく、スポーツバイクに慣れていないビギナーでも、安心して走ることができる。



収穫を終えたハッカが干されている光景を眺めながら、仁頃ハッカ公園へ向かう

さわやかな汗をかいて「仁頃ハッカ公園」に到着。ここに隣接した「北見田園空間情報センター」の奥に、ハッカ蒸留小屋があるという。自転車を置いて、施設裏に回ると、これまで経験したことのないインパクトのある不思議な香りが漂っていた。ハッカに加え、香ばしいような、なんともいえない心ひかれる香りだ。小屋に近づくにつれ、この香りはどんどん強くなる。



未知の香りの出所を求め、「北見田園空間情報センター」裏へ



これが蒸留機だ!蒸気を上げて稼働する姿に興味津々

小屋の中には、木製の樽を連想させる装置が蒸気を上げて稼働していた。ここにも北見ハッカ通商の井家さんが来てくれていて、裏手から手招きしてくれた。「ここでハッカの蒸留をやっているんです」。これが本物の蒸留釜だ!

9月に向かいの畑で収穫したハッカを天日で乾かし、それを釜の中に入れ、1週間かけて蒸留するそうだ。我々の到着が遅れたため、見られなかったのだが、コンテナ数個分のミントを3人がかりで踏んで入れ、蒸留を行うとのこと。到着した時には、釜からハッカ油を含んだ水分が排出されているところだった。この液体を放置すると、比重の軽いオイルが上に溜まる。この上の部分を抽出するのだとか。この独特の香りは、熱を帯びた作業が放つもので、熱くなった釜の木製の枠などの香りも含まれるのかもしれない。ダイレクトに五感に訴えてくるハッカ蒸留の様子は、非常に印象深く、記憶に深く残る思い出になった。



ハッカ収穫時の風景。収穫したハッカを、天日に干していく。あたりにはなんとも言えないよい香りが漂っていた(仁頃にて9月撮影)



蒸留機に干したハッカを3人がかりで踏みながら入れていく(画像提供:北見ハッカ通商株式会社)



蒸留機から、ハッカの香りを放つ液体が勢いよく吹き出してくる

「蒸留したあとのハッカの葉や茎も栄養価が高く、飼料に人気があるんですよ」と井家さん。ミントを食べて育った牛のミルクはどんな味になるのだろうかと想像を膨らませる。



蒸留を終えたハッカを取り出す。蒸留機の中にはぎっしりとミントの葉と茎が詰まっていたのだ(画像提供:北見ハッカ通商)

何時間でも見ていられそうな光景だったが、我々にはこの先の行程が待っている。お礼を言って、ハッカ蒸留小屋を後にした。

ここからはわずかに上り、そのあとは気持ちの良い下りが待っている。美しい景観を抜け、続いてはおやつタイムだ。地元の人気店「菓子工房Shiga」へ。イートイン可能なカフェスペースがあり、サイクリストにはおなじみの立ち寄りどころだ。



菓子店「Shiga」に到着!はやる気持ちをおさえ、駐輪する

ショーケースに並ぶ美しいスイーツを眺める。王道のケーキか? いや、クリームをその場で入れてくれるシュークリームか? それとも、季節限定のソフトクリームか? ぶあついワッフルか? 悩む一同。魅力的なものが多すぎる。



スイーツでティータイム。輝くフルーツが宝石のよう!

悶絶の末、季節のフルーツがあしらわれたタルトやティラミス、プリンをセレクト。コーヒーや北海道のミルクとともに味わったのだった。果実は驚くほどフレッシュで、だが、クリームとよく合い、サクサクのタルトやプリンとも絶妙のコンビネーションを果たしている。しっかりと味わう至福の時間。美しいスイーツを眺め「もっと胃と時間に余裕があれば……」と女子たちは嘆くのだった。

お土産も買い込み、店を後にする。続いて目指すのは、バス停だ。

北海道北見バスの取り組みで、土日祝日に限り、北見バスが認可した郊外線の路線バスに自転車を2台まではそのまま積み込むことができるようになった(要予約/3台目からは輪行袋が必須)。今回は7kmほどのショートカットではあるが、自転車を乗せてみようということになったのだ。



バスに自転車を積み込む



車内の車椅子スペースに自転車を固定する

到着したバスに、自転車とともに乗り込む。固定用のバンドを運転手さんから受け取り、2台を車椅子スペースに固定する。この日はバスが混み合っており、様子を見に来てくれた北見バスのスタッフの方が代わりに手早く固定してくれた。

バスがそのまま乗っている車内はとても不思議な感じ。今回は短いショートカットだが、脚力のない方は、このコースならルートの中間地点になる仁頃からバスを使えば、大幅なショートカットができる。脚力に応じ、走り方の選択肢も増えるだろう。



北見バスターミナルで自転車を下ろす

ほどなく北見バスターミナルに到着し、自転車をおろして、再スタート。まだまだ食べる、いや、走るのだ!

ここからライドは南部に向かう。川を渡り、若松エリアへ。紅葉がかなり進んでおり、木々も、先に見える山々も美しく色づいている。秋の到来を噛みしめながら走る。



色づき始めた葉を眺めながら走る3名



山々も早くも色づいていた。今年は紅葉の進行が非常に早い

到着したのは「北見自然休養村センター」。冬はスキーロッジとして活用されるが、夏はスポーツの合宿やファミリーなどに宿泊利用されている。レストランではしっかり煮込んだカレーが人気なのだが、イモを使わず、玉ねぎで作られたコロッケ 「たまコロ」を揚げてもらう約束なのだ(通常要予約)。



これがジャガイモの代わりにタマネギで作られたコロッケ「たまコロ」だ!

ほどなく、揚げたての小ぶりのコロッケが入ったカップが出てきた。サクサクの衣の中には甘みいっぱいのフィリングが詰まっていた。「おいしい」「甘い!」「これ、玉ねぎなの?」。このために、どれだけの玉ねぎを刻んで、どれだけの時間をかけて炒めるのだろう? 産地でしかできないメニューに感動する一同。北見に来たら、食べたい一品だ。



残念ながら「きたみファミリーランド」は16時で閉園していた

休養村を出ると、目の前には「きたみファミリーランド」という遊園地があるのだが、夏が終わり、開園時間が短くなっていて、すでに閉園してしまっていた。ここは入園料無料で、乗り物一つから楽しめる。園を取り巻く自然景観も豊かで、園内を散策するだけでも、おとなも童心に帰って楽しめる価値ある場所だ。



秋の景色の中、帰路を急ぐ二人。気温もじわじわと下がってきた

こころさんはここでライドをフィニッシュ。サポートカーに乗り、ここからは里美さんと来た道を戻ることになった。復路は下り基調。スイスイと気持ちよく進み、美しい景観の中、あっという間に北見の街に戻ってきた。

最後の立ち寄りは「オホーツクビアファクトリー」。いや、ビールで乾杯するためではない。ここならではの、貴重なデザートが食べられるのだ。ここでしか飲めない「エールろ過前」などもあり、ビール好きにはたまらない場所だが、「我々はサイクリング中」「ここでいただくのはデザート」と、改めて確認する。
ここでは、北見産和種ハッカを使った「ダブルチョコミントアイスパフェ」が提供されているのだ。自他ともに認める「チョコミン党」であるこころさんだが、天然ハッカ、しかも和ハッカを使って作ったチョコミントアイスなんて、考えたこともなかったのではないだろうか。



「ダブルチョコミントアイスパフェ」が運ばれてきた!気品あるルックスに思わず見入ってしまう

クラシカルな器に盛り付けられ、なんとも言えない気品のあるパフェが運ばれてきた。強い香りではないが、甘くも清涼な、気持ちのよい香りが漂っている。ほんのりとミントグリーン色に色付けられたアイスを一口。アイス自体の旨味に、上品でしっとりとしたハッカの風味が加わっており、絶品だ。ふと、これまで自分が食べてきたチョコミントアイスは「スーッとするアイス」として、味の質は求めていなかったことに初めて気がついた。通常のミントアイスは、合成ハッカで風味づけられているはず。ミントアイスをこれほど美味なるデザートとして作ることができるとは、まさに衝撃だった。



初めて味わうおいしさに、思わず笑みがこぼれる

驚くべきことに、チョコアイスだと思い込んでいたブラウンのアイスにも、ハッカの風味が加えられていたのだ。「だからダブルチョコミントやったんや!」。里美さんが声をあげた。さらに「このクリームが、もちもちなんです。なんやろ?」と首を傾げて言う。添えられた生クリームも食感と味が異なるというのだ。確かに一般的なパフェとは、一線を画する食感と味わい。ウェイターさんに質問すると、シェフに確認を取ってくれた。待つことしばし。戻ってきたウェイターさんは少し申し訳なさそうな表情で「ごく普通の生クリームだそうです」と答えた。逆に「これでごく普通なの?」と盛り上がる一同。北見クオリティー、恐るべしだ。

ほどよい疲労と、満足感に包まれながら、ゴールを目指す。サイクルステーションまでは1kmもない。あっという間にたどりついた。10月上旬の日没は17時。ぎりぎり、間に合ったかな?



ゴールしたお二人にはサイクルステーションで北見ハッカの苗がプレゼントされた

最後に、北見ハッカ苗がプレゼントされ、この日のライドは終了。慌ただしかったが、いろいろな場所をめぐることができ、濃厚な時間だった。「楽しかった!」「たくさん食べた!」「疲れたー!」と笑顔のお二人。達成感のある疲労とともに、笑顔で1日を振り返っていた。



贈られた北見ハッカの苗。お二人のところで、すくすくと育ってくれますように

北見でハッカの収穫や蒸留が行われるのは通常は9月下旬だという。興味のある方は、ぜひ来年9月に足を運び、体感してみていただきたい。

北見のハッカをめぐる旅は、興味深く、「ここでしか食べられない」絶品グルメも豊富だった。ミントライドは、今後の北見観光の定番になりうるのではないだろうか。

画像:編集部 株式会社北見ハッカ通商提供