「オープン球話」連載第88回 第87回を読む>>2016年のセ・リーグファンミーティングに出席した、阪神の髙山俊と真中満…

「オープン球話」連載第88回 第87回を読む>>

2016年のセ・リーグファンミーティングに出席した、阪神の髙山俊と真中満監督(当時)
【青木宣親との激しいレギュラー争い】
――前回に続いて、真中満さんについてお聞きしていきます。"野村黄金時代"のヤクルトの名センターだった飯田哲也さんからレギュラーを奪ったものの、ベテランになってからは青木宣親選手が加入。真中さんの現役生活はレギュラー奪取の挑戦でもありましたね。
八重樫 外野手は、レギュラー争いが厳しくなりますからね。青木が入団してきた2004(平成16)年、当時の若松(勉)監督はルーキーの青木を使いたがったんです。オープン戦の時もずっと彼を起用するんだけど、まだ当時の青木はプロのレギュラーのベルじゃなかったんですよね。
――青木選手がブレイクするのは、翌2005年のことでしたからね。
八重樫 結局、青木の1年目はずっとファームに置いて、そこで徹底的に鍛え上げることになるんだけど、さっきも言ったように若松さんは真中よりも青木を使いたかった。新監督になると、自分が目をかけた新しい選手を起用したくなるのはよくあることですからね。それに、若松さんは真中のような明るいタイプの選手は苦手なんです(笑)。青木のように黙々と練習するタイプが好きなんですよ。
――ベテランになってからは、今季の川端慎吾選手のように、「代打の切り札」として大活躍されました。八重樫さんも現役晩年は代打で結果を残しましたが、真中さんの代打適性はどうご覧になっていますか?
八重樫 前回も話したけど、真中の場合は練習にしても試合にしても、一気に集中してプレーするタイプなんです。だから一発で決める、一球で決める代打は、真中に向いていたと思います。代打で大切なのは積極性。たとえボール気味であっても、初球からどんどんスイングしていく積極性が求められます。それによって緊張も体もほぐれますから。
――そうなると、真中さんが持つ元来の積極性、短期集中タイプというのは、まさに代打向きだったんですね。
八重樫 代打というのは相手バッテリーの配球を読んだり、試合の流れをつかんだり、ある程度の経験がモノを言う部分もあるんです。レギュラー経験者ならその点はかなり長けている。加えて、真中はボールをじっくりと引きつけてから手元で打てるから、追い込まれても粘ることができる。そういうタイプの選手は代打適性があると言えますね。
【レギュラーとして活躍したから代打で結果を残した】
――以前、若松さんも同じことを言っていました。「現役晩年に代打として成績を残せたのは、レギュラー経験者だったからだ」と。
八重樫 若松さんも、僕も、代打としてある程度の結果を残せたのはレギュラー経験者だったことが大きいと思います。当然、真中の場合もそう。性格的にも技術的にも代打向きの選手でしたね。
――引退は2008年、真中さんは37歳でした。現役晩年の真中さんのイメージはどうですか?
八重樫 真中の最大の特徴はボールをギリギリまで引きつけて軸回転で打つことだったんだけど、故障や年齢のせいでその回転する力が弱くなっていきました。レギュラー選手から代打中心に変わると練習量が減るんです。試合では1打席だけだし、加齢による新陳代謝の低下もあって太りやすくなる。そうなると、回転は鈍くなりますよね。
――体重が増えれば体は重くなるし、キレもなくなると。
八重樫 そのとおりなんだけど、そもそもあの小さな体で、よくあそこまで頑張ったと思います。身長は低い(170cm)んだけど、お尻や太ももは太い。でも、意外に足は小さくてふくらはぎも細いから、足腰への負担は大きかったと思います。守備でも思いきって飛び込むし、体を張ったプレーばかりでしたから、歳を取ってきてそういう負担が一気に出たんじゃないかな?
――ある意味では仕方のないことだったのかもしれないですね。
八重樫 若松さんもそうだったけど、体が小さな選手はそれぐらい精一杯のプレーをしないとプロの世界ではやっていけない部分もあるんでしょう。2007年は代打でいい成績を残したのに、翌年はガクッと成績が落ちた。あの年に体が悲鳴を上げたのかもしれないね。
【2015年ドラフト会議、無念のガッツポーズの真相】
――現役引退後、真中さんは二軍監督を経て一軍監督となり、2015年にはチームを優勝に導きました。選手としてではなく「監督・真中満」はどうご覧になっていましたか?
八重樫 彼の性格そのままに、選手たちにのびのび、楽しくやらせていた印象です。勝敗に一喜一憂しないでやらせていた印象ですね。それが、選手たちに受けて就任1年目でのリーグ制覇につながったんじゃないかな。選手としてもやりやすいと思いますよ。
――しかし、就任1年目で優勝したものの、その後は低迷が続きました。
八重樫 明るい性格でのびのびやらせるのは、一時期は効果が出るけど、どうしても緩みがちになるという欠点があります。96敗した2017年は、ケガ人も多かったし、ひとりで責任を背負い込んでいたと思うよ。
――ぜひ、八重樫さんにお聞きしたかったのが、2015年ドラフト会議。明治大学・髙山俊選手の指名に際し、真中監督が抽選を外したにもかかわらず、引き当てたと勘違いをしてガッツポーズをした一件です。八重樫さんは当時スカウトでしたよね?
八重樫 あの日、僕は控え室でみんなでモニターを見ていました。控え室にはフロント、スカウトを含めて10人ぐらいいたかな。モニターからは音声は聞こえないんだけど、真中がガッツポーズをしたから、みんなで「やったー!」と握手をしたんですよ。
――ところが、実は交渉権は阪神・金本知憲監督が引き当てていたということが判明します。控え室ではどんな状況だったんですか?
八重樫 みんなで喜んで、「よし髙山に連絡だ!」という雰囲気になったんだけど、モニターを見ていると、どうも雲行きが怪しい(笑)。それで、「ちょっと待て!」となって、モニターを見ていたら交渉権は阪神にあることがわかった。控え室内は大爆笑でしたよ(笑)。
――抽選に外れてガッカリするのではなく、大爆笑だったんですか?
八重樫 そう、大爆笑(笑)。その日、ドラフト会議が終わったあとに食事会があったんですが、その場に真中が入ってきた時に、みんなで大拍手しました。真中も「すいませーん」と笑顔で謝っていましたよ。今も評論家として人気者だけど、誰からも愛される明るいキャラクターはずっと変わらないんだよね。現役時代は個性的なバッティングでいい選手だったし、引退後も明るく楽しい。彼は現役時代も今も裏表がないから嫌味がないんです。最近はテレビをつけると真中がよく出ているけど、何だか僕もうれしくなりますよ。
(第89回につづく)