紀平はGPシリーズ・スケートカナダを欠場 29日に開幕するフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦、スケートカナダを欠場する紀平梨花(トヨタ自動車)。欠場の理由となった右足関節骨軟骨損傷はどんな故障なのか。トップアスリートの専属…

紀平はGPシリーズ・スケートカナダを欠場

 29日に開幕するフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦、スケートカナダを欠場する紀平梨花(トヨタ自動車)。欠場の理由となった右足関節骨軟骨損傷はどんな故障なのか。トップアスリートの専属トレーナーを務める芝浦田町スポーツ整骨院・はり治療院の新盛淳司院長が解説してくれた。

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 紀平選手の足関節の骨軟骨損傷ですが、足首のねんざを合併したり、日々のトレーニングの繰り返しで、過度にストレスがかかることで起こると考えられます。

 軟骨は骨の周りをコーティングするように存在し、骨と骨の摩擦を減らしたり、体重を支えるためのクッションの役割があります。体重を支える足首や膝の関節の軟骨は損傷するケースが多い箇所でもあります。

 紀平選手は右足首を7月に捻挫したと報じられています。足首ねんざ後、2か月以上痛みが残る場合は注意が必要です。レントゲンでは軟骨の損傷は発見されにくいので、長期間痛みが残る場合は整形外科でMRIによる診察が必要になります。

 足首をねんざして、その痛みが靭帯なのか軟骨なのかは、押した時の痛む場所である程度推測し、疑わしい場合は整形外科にてMRIなどの診察をお勧めしています。

 軟骨の治療ですが、これは本当に難しい。まずは足首に負担のかからないように固定をしたり運動負荷を調整する保存療法を行います。筋力が低下し過ぎないように筋力トレーニングや、可動域を低下させないようにリハビリを行います。PRP療法(多血小板血漿療法)という、軟骨の再生医療を行う選手もいます。

フィギュア選手には「避けられない怪我と言える」

 症状が進んで腫れや痛みが慢性化した場合はかなりのリスクになります。手術が必要になるケースもありますが、その場合、軟骨の剥がれかたなど、患部の状況に応じて、様々な術式で対応します。自分の体から軟骨を採取して移植するものや、ドリルで小さな穴を多数あけて刺激を与え、軟骨の再生を促す方法などがあります。

 足関節軟骨の損傷の最も多い原因の一つに、ねんざの繰り返しが挙げられます。ジャンプや着地、ターン、スピンなどで足首に負担がかかるフィギュアスケートの選手にとっては避けられない怪我と言えるかもしれません。

 適切な治療を受けることができない、あるいは、あまりに早い段階に練習や競技に復帰した場合、腫れや痛みはある程度治っていても大きなリスクを抱えるケースは少なくありません。足関節に不安定性が残り、ねんざを繰り返すという悪循環に陥ることがあります。

 いわゆる捻挫クセになってしまいます。慢性化を避けるためには適切な治療が大切です。

 来年2月の北京五輪出場に向けた大事な大会が続きます。紀平選手の一刻も早い回復を祈っています。(THE ANSWER編集部)