【ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」】少し冷めている日本の子供と感情むき出しの欧州の子供 日本の子供たちって…

【ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」】少し冷めている日本の子供と感情むき出しの欧州の子供

 日本の子供たちって大人びるのが早いけど、なかなか大人になれなかったりしませんか?

 単純な比較をしたところで、それぞれの国における社会の受け止め方や常識とされていることが違うから、あくまでも傾向でしかないかもしれないが、例えば12歳の子供を見てみると、日本だと少し冷めているというか、感情を表に出そうとしないようにして、それがスマートでカッコいいという風潮がなきにしもあらずという印象を受ける。

 欧州の同年代の子供たちを見ると、もっと子供っぽいというか、感情むき出しになる瞬間が多いし、特にスポーツの世界ではそうだ。それにはネガティブな面もあるし、いちいちイライラしてケンカになったりすることもあるけど、上手くいってゴールを決めたりしたら本当に感情を爆発させてみんなで大喜びする。

 興味深いのは、そうした環境で育った子供たちは年齢を重ねるにつれて分別がつくようになり、理性的な判断ができるようになることで、自分が今何をすべきかを判断して、その時に必要なことを考慮して、人間関係も上手く距離を取りながらコミュニケーションを図っていくというのが上手くなっていく。それでいて感情を出して楽しむ時は、それこそ子供のようにはしゃぐ。

 一方で日本だと大学生でも自分がすべきことを自分で見出して、やるべきことを探して、自分の言葉で話して、自分の足で歩こうとする人がそこまで多くはないのではないだろうか。

 ドイツへ指導者研修に来た日本の指導者の方が、ドイツの大学生が自分の言葉でクラブの哲学について、よどみなく話している様子を見て驚かれていたことがあるのだが、そこで大きな差が生まれてしまうのはなぜなのだろう?

 日本で長く育成指導者をしている友人は、「大人が『子供たちに大人のように振る舞ってほしい』ことを求めるから、必然的に大人っぽくなるのかな。例えば中学生が修学旅行のグループ分けとかをすると、それこそ24時間一緒にいなければならないので、すごくもめるんです。学校だけの付き合いだと表面的な仲良しのふりをしていたら大丈夫。でも24時間一緒となると、そういうわけではなくて、でも本当に深いところで付き合うことができないので、すごくもめたりします」

評価軸が一つではないドイツの保護者面談

 自主性を身につけにくいのだろうか。もちろん一例でしかないし、そうではなく、人間関係を上手くやっている子供たちも、そのために尽力されている教師や指導者の方々もたくさんおられるだろう。

 ただ、日本は一方通行のやりとりが多いのかもしれない。自己肯定感というか、子供たちが自分を自分で評価する力を育める環境がどれだけあるだろうか。教師や指導者からの評価と子供たちの評価を突き合わせてみるという機会が、日本だと少ないのかもしれない。

 ドイツの保護者面談では先生や指導者から評価をされておしまいではなく、子供が今どう自分を思っているのか、どこが上手くいっているのか、どうなりたいのか、どこを改善したらいいかを自己評価分析をしてもらうし、そのなかでお互いに方向を見つけてというやり方をしたりする。つまり評価軸が一つではないのだ。子供自身、自分の見方、考え方という自己的な評価をして、それに外からの評価を照らし合わせる。

 そうしたものを一度バラバラにして、それを自分で整理してというのをやっていく。それを小さい頃からやっている。だから子供らしく成長しながら、でも自立するための道を歩んでいる人が多いという印象を受けるのだ。

 似たような話で、サッカー育成指導者のエキスパートである池上正さんが次のように指摘をしていたことがある。

「日本人の文化的に、みんな一緒でいることがいいと思っている人がまだ多い。それは一つの良さ。だからそれをなくさないまま、その中でも一人ひとりが自分の意見をちゃんと言うというのが出てくると、日本的な良いチームになれるのかなと思うんですね。

『自分はこうだから』と言ってそれぞれが勝手気ままにやるのではなくて、みんなで一緒に動きながらも、その中でそれぞれが自分のことを出すことができるようになったら、日本的な自立、自主性が求められることかなという気はしますね」

“多数決=民主的な解決”ではない。少数意見にもリスペクトをもって耳を傾けながら、ある程度は時間をかけてじっくりとみんなで解決策を練る機会を小さな頃から持つことは、子供たちの成長にとってとても大事ではないだろうか。(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野 吉之伴
1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。