ヨーロッパでは、各国の顔となる数クラブが国内リーグをけん引する構図が通例となっている。さらに厳然たるヒエラルキーは欧州…
ヨーロッパでは、各国の顔となる数クラブが国内リーグをけん引する構図が通例となっている。さらに厳然たるヒエラルキーは欧州全土へと広がり、頂点への長い坂道を形成している。
その図式の中で、イタリアでは長年にわたり、ユヴェントスの1強ぶりが目立ってきた。世界最高峰リーグと呼ばれた時代は遠い昔。セリエAは落ち込みが続いていた。
しかし、W杯予選敗退というどん底を前後して、「開き直りの挑戦」への機運が高まり、リーグの競争力が激化。リードする存在はなくなったものの、リーグ全体の底上げ、さらには代表チームのEURO制覇へとつながった。
拮抗したリーグでのクラブ間の競争の活性化、新戦力の台頭と代表チームへの還元…。現在のセリエAには、やはり世界でも珍しい「超拮抗リーグ」Jリーグが学ぶべき点が透けて見えてくる。
■60年ぶりの屈辱からのV字回復の要因
イタリアサッカーは終わった――そんな声もあったことは、記憶に新しい。2017年、ワールドカップ(W杯)予選で60年ぶりの敗退という屈辱を味わい、カルチョの権威は失墜した。
それから4年、アッズーリ(イタリア代表の愛称)がV字回復を果たした。新型コロナウイルスの影響で1年延期となったEURO2020で、アッズーリは下馬評を覆し、53年ぶりの優勝を成し遂げた。
なぜ、イタリアは短期間で復活できたのか。大きな違いは、まずやはり指揮官だ。
ロシアW杯への切符を逃した最大の原因は、当時指揮を執っていたジャンピエロ・ヴェントゥーラが混迷の末にチームを崩壊させたことだ。対照的に、ロベルト・マンチーニはグループを見事にまとめあげた。その団結力は、不正スキャンダルでやはりカルチョの権威が落ちていた2006年ドイツW杯を彷彿させた。
もちろん、団結だけでEUROという大会を制覇することはできない。マンチーニによるスタイル改革は、これまでも多くで指摘されてきた。結果に重きを置く守備偏重の「カルチョ型」から、ボール保持やインテンシティーを重視する「欧州型」への方針転換が、栄光につながったことは疑いない。
マンチーニがその方針転換を貫けたのは、もちろんW杯予選敗退で国全体が危機感を覚えていたからだが、もうひとつ、「欧州型」移行への機運が高まっていたことも大きい。国内リーグにおける新勢力の台頭で、セリエAは進化しつつあった。
■進む新世代の指導者の台頭
W杯予選敗退の悲劇以前から、セリエAが低迷期にあったのは周知の事実だ。イタリア勢がチャンピオンズリーグ(CL)を制したのは、2010年のインテルが最後。国内9連覇の偉業を成し遂げたユヴェントスは、2015年と17年にCL決勝へと進出したが、決勝ではスペインの2強に手痛い敗戦を喫し、準優勝に終わっている。
なにより、ユーヴェと並ぶ北の3強の残り2チーム、インテルとミランのミラノ勢の低迷が大きかった。南の雄であるローマやナポリは国内でユーヴェとタイトルを競い、欧州でも一時期ファンを沸かせたものの、真の強者となるには至らなかった。
そんな中で登場したのが、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ率いるアタランタだ。就任1年目からセリエAで4位と飛躍すると、2018-19シーズンからは3年連続で3位。当時は「イタリアのレスター」と言われた彼らは、すでに欧州の舞台でも押しも押されもせぬ好チームとして認知されている。
プレミアリーグでのレスターのように、タイトル獲得には至っていない。だが、国内の強豪が欧州で期待されるような結果を残せない一方で、強度の高いガスペリーニのサッカーは国内外で評価を高めた。カルチョの世界でも「欧州型」を評価し、求める声は強まっていった。
さらに、ガスペリーニに続く世代の指導者たちが台頭したことも寄与した。
筆頭は、3シーズンでサッスオーロを中位クラブとして確立させ、今季からシャフタール・ドネツクで指揮を執るロベルト・デ・ゼルビだ。ほかにも、ガスペリーニの愛弟子イバン・ユリッチや、昨季スペツィアで名を上げ、今季からフィオレンティーナを率いるヴィンチェンツォ・イタリアーノなど、30代、40代の指揮官たちが「プロヴィンチャ」(地方の中小クラブ)で改革を進め、脚光を浴びている。