日本初の挑戦がスタートした。女子プロリーグ、WEリーグの開幕である。Women Empowerment(女性に力を)の…
日本初の挑戦がスタートした。女子プロリーグ、WEリーグの開幕である。Women Empowerment(女性に力を)の略を名称としたリーグは、日本の女子サッカーにどんな影響を与えるのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が新生リーグを深く見つめる。
日テレ・ベレーザの苦戦のもう一つの理由は、先ほど述べたように長谷川や籾木といった主力メンバーが海外に流出し、昨シーズンは田中、今年初めにはGKの山下と、最大のライバルの一つINAC神戸への“禁断の移籍”を果たした選手がおり、ベレーザは一昨年までの「なでしこリーグ」で5連覇当時の主力の多くが流出してしまったことの影響も当然あるだろう。
ベレーザは下部組織であるメニーナから数多くの名選手を輩出している女子サッカー界の育成の名門である。
同じクラブの男子部門である東京ヴェルディも育成面では現在でも日本有数のクラブだ(最近だけでも、中島翔也、畠中槙之輔、安西幸輝、渡辺皓太、藤田譲瑠チマといった各年代別代表に名を連ねる選手たちがこのクラブから育っている)。だが、クラブの財政状態が悪いため、ヴェルディ出身の選手たちはユース年代を終えると早々に移籍してヴェルディを離れてしまい、東京ヴェルディ自身はこの数年すっかりJ2に定着してしまっている。
女子のベレーザの方は、下部組織育ちの選手たちがベレーザで活躍することによって、長く「日本最強」の地位を維持してきた。だが、ここに来て、移籍によってベレーザを離れて選手が増えてきているのだ。
■次々と有望な若手は育ってきているが…
もちろん、さすがに育成の名門だけあって、さらに若い世代の選手たちが次々と育っているのも事実。若手と思っていたDFの清水梨紗やMFの三浦成美が今では中堅として成長し、植木理子や宮川麻都、遠藤純といった2018年にUー20ワールドカップ優勝を経験したメンバーも今では中心選手として活躍している。そして、さらに下の世代の選手も次々とWEリーグでデビューを果たしており、先日の第6節では後半途中から登場したMFの大山愛笑が運動量のあるボランチとして素晴らしいプレーを見せ、さらにダメ押しの4点目も決めてみせた。
そうした、若い力の対等は「さすがベレーザ」なのだが、かつてのような“絶対女王”的な存在となるためには、ベテランも含めて選手を定着させていく必要があるだろう。
これに対して、年齢構成的にバランスが取れているのが浦和だ。
39歳になった元日本代表の安藤梢が今シーズンは好調で、豊富な運動量とスピードとテクニック、そして豊富な経験値を武器に攻撃を牽引しているし、ベテランの域に入った菅澤優衣香も得点能力を見せつけている。柴田華絵と猶本光のベテラン、中堅が中盤を堅め、最終ラインでは2018年のUー20ワールドカップ優勝組で日本代表にも定着した南萌華、高橋はなが控える。
幅広い年代層の選手が揃うだけに安定感もあるし、いくつものポジションをこなすことのできる選手も多く、試合の途中でもシステム変更ができるのも浦和の大きな強みだ。
■男子以上に世界で評価の高い日本の女子選手たち
男子のJリーグでは、最近は海外移籍によって若手選手が次々とクラブを離れて行ってしまうので、国内リーグが空洞化してしまうという懸念すべき状況が生じている。
もちろん、日本サッカーの強化のためには若いうちから海外に挑む選手が増えるのは歓迎すべきことなのだが(若手が海外クラブから評価されているということでもある)、しかし、国内リーグの人気という意味では若手の有望選手が流出してしまうのは望ましい状況ではない。つまり、等々力陸上競技場に観戦に行っても、三笘薫のあの独特のドリブルも田中碧の必殺のスルーパスはもう見られないのだ(その意味で、最近になって、長友佑都や酒井宏樹、乾貴士、大迫勇也といった代表経験者がJリーグに戻って来てくれているのは嬉しいことだ)。
女子の世界でも、アメリカに続いてヨーロッパでも本格的なプロ化が進んでいる。そこで、日本代表クラスの選手たちも、良い環境や高い競技レベルを求めて海外クラブと契約する選手が増えてきているのだ。日本は女子サッカーの世界では、ワールドカップ優勝経験国なのだから、男子選手以上に日本の女子選手たちは海外でも高く評価されている。
アーセナルでは夏の移籍期間に加入した日本代表の冨安健洋がデビューと同時にチームに溶け込んで9月の月間MVPに選ばれて大きな話題となったが、女子チームでも8月に加入した岩渕真奈が早速活躍し、8月のPSV戦でのゴールがクラブの月間ベストゴールに選ばれている。
女子のプロリーグが発足したのは、女子選手たちの待遇を改善することが大きな目標だった。それによって、女子のトップクラスの選手たちの海外流出がストップできればいいのだが、日本の選手の場合、海外への挑戦は単に待遇のためだけでなく、ハイレベルな競争に身を置くことで選手として成長することが目的という場合も多い。
日本のスター候補の若手有病株が海外流出することのない用意するには、待遇改善だけでなく、リーグのレベルアップを実現することも必要なのだ。