これまでにない群雄割拠のシーズン


 オリンピック銀メダル、アジアカップ金メダルと躍進に沸く女子バスケットボール。今季からプレステージ・インターナショナル アランマーレが新規参入し、注目の選手たちが競演するWリーグがいよいよ10月16日に開幕を迎える。昨シーズンはENEOSの一強時代を打破して新たな女王が誕生し、オリンピックやアジアカップを通して赤穂ひまわり(デンソーアイリス)やオコエ桃仁花(富士通レッドウェーブ)ら若手が成長を遂げているように、今シーズンはこれまでにない群雄割拠のシーズンとなるだろう。昨季の4強を中心に展望を紹介したい。

 今季もっとも注目されるのは、ディフェンディングチャンピオンのトヨタ自動車だ。三好南穂や長岡萌映子ら東京五輪5人制代表に加え、同じく3x3の日本代表だった馬瓜ステファニーや山本麻衣ら若手の成長が著しく、さらに移籍選手を加えたことで、強力な顔ぶれがそろった。

 そんな中でチームのリーダーである馬瓜エブリンは、「2連覇と言われますが、一つひとつ勝ち切る先に優勝がある。昨シーズン優勝したからといって同じやり方で優勝を目指すのではなく、新たなメンバーも加わって変化し続けます」と決意を新たにしている。

 女王奪回に燃えているのはENEOSサンフラワーズだ。ひざの負傷で離脱していたエースの渡嘉敷来夢は、14日の開幕会見にて、開幕試合(23日)での復帰を宣言。「今の自分はギラついている。オリンピックでみんなが戦う姿を見てたくさんの刺激を受けた。今リーグにかける気持ちは他の選手より強い」と闘争心をアピールした。

 渡嘉敷は9月からチーム練習を開始。また林咲希、宮崎早織、中田珠未らアジアカップ組がこれから本格的にチーム練習に加わる状況であることからも、リーグでの戦いを通じながらチーム力を仕上げていくことになるだろう。そんな中で渡嘉敷の復帰がV奪還へのカギを握ることは間違いない。

オリンピックの熱をWリーグに


 昨季はあと一歩のところでENEOSの壁を破れなかったデンソー。マリーナ・マルコヴィッチHCが就任して2年目の今季はさらにチームプレーを練り上げていく。大黒柱である髙田真希は「目標は常に日本一ですが、それ以上に『積極的なディフェンスと効率的なオフェンス』を目指すマリーナのバスケットが確立されていないので、リーグで成長しながら40分間戦える力を備えていきたい」と現状を語る。そのうえで、「自分は経験があるのでチームを引っ張り、日々の練習を大切にしながら目の前の一戦を戦いたい」と目標を掲げている。

 富士通の司令塔である町田瑠唯はオリンピックの活躍によって、もっとも名前が知れ渡った選手と言えるだろう。「オリンピックを通してバスケットボールをたくさんの方に知ってもらえたので、この熱をWリーグにつなげて盛り上げていきたい」という心意気でシーズンに臨む。また今季の富士通は移籍によってメンバー構成が変動したチームでもある。

「ENEOSからチャンピオン経験がある選手(宮澤夕貴と中村優花)が加入したことで、チームにいい影響を与え、メンタル的に強くなっていくと思う。試合ごとにみんなで成長していきたい」と抱負を語る。

 昨季の4強チームは層の厚さや経験値において抜き出ていることは確かだ。だが、他のチームたちも虎視眈々と上位進出を狙っている。

 若手の成長に加えて藤岡麻菜美というビッグネームの経験が加わったシャンソン化粧品シャンソンVマジック、全員バスケのチーム力が備わっているトヨタ紡織サンシャインラビッツや三菱電機コアラーズ。また、昨季は3シーズンぶりにプレーオフに進出した日立ハイテククーガーズは、スタンダードのレベルが一段階上がっている。トップ4を食う“台風の目”が出てくるかにも注目だ。

女子バスケは変化と進化の真っ最中


 今シーズンはかつてないほど移籍市場が活発に動き、Wリーグが大きく変化していることを実感させられた。トヨタ自動車の初優勝に貢献し、プレーオフMVPを受賞した安間志織が海外挑戦を決意してドイツリーグに移籍。ビッグネームでは宮澤夕貴、中村優花(ENEOS→富士通)、川井麻衣(三菱電機→トヨタ自動車)、宮下希保、梅木千夏(アイシン→トヨタ自動車)、ロー ヤシン(新潟→ENEOS)らが新天地へと移った。藤岡麻菜美が高校のコーチとのデュアルキャリアにて、シャンソン化粧品に電撃復帰したニュースはファンを驚かせた。

 指揮官が変わったチームもある。ENEOSは佐藤清美ヘッドコーチが3シーズンぶりの復帰となり、トヨタ紡織は知花武彦がコーチからヘッドコーチに昇格。『アイシン ウィングス』の名で新たなスタートを切るアイシンは、シャンソン化粧品やトヨタ紡織でシューティングバスケを築いた中川文一をヘッドコーチに迎えた。また、東京羽田ヴィッキーズはこれまでアンダーカテゴリー指揮して国際大会で実績を積んだ萩原美樹子をヘッドコーチに抜擢。指揮官の交代によるチーム作りの変化も見どころのひとつだ。

 Wリーグが動いているといえば、強豪国からやってきた指揮官がもたらすスタイルの違いにより、各チームがどう対応するかも大きな見どころである。トヨタ自動車は3シーズン前からスペイン代表を指揮していたルーカス・モンデーロを招聘し、各自が自信を持つチームカルチャーを築いて初優勝へと駆け上がった。当時トヨタ自動車の部長であり、モンデーロHCを招聘した清野英二(今季よりWリーグ専務理事)は「Wリーグに新しい風を持ち込みたかった」とヨーロッパの名将を招いた理由を語る。

「ルーカスにお願いしたのは、ヨーロッパのいいところと日本のいいところを掛け合わせたバスケットを展開すること。日本は決められたことをしっかりと実行し、ヨーロッパは選手たちで考えて判断できる力があるので、ミックスしたら面白いバスケができる。そうした新しいバスケを広めることで、日本の若いコーチたちの勉強にもなる」という思いがあった。

 一方で、東京五輪を控えた時期にライバル国の指揮官を呼ぶことには周囲から反発の声も聞こえたという。それでも「ポジティブな要素のほうが大きい」と踏み切った。

「日本の選手や戦術が知られてしまうと考えるのは小さいこと。もっと広い世界で物事を考えて競争したら、日本の選手はさらに成長できます。その流れでデンソーにも強豪のセルビアからコーチが来ました」と語るように、Wリーグは固定観念にとらわれずに変わろうとしている。

 優勝を知るチームが増え、国際大会で結果を出した選手たちが経験を注入し、様々なバスケスタイルが広がっていくことは、間違いなくWリーグを発展させていく。今季はそうした変化を恐れない競い合いから、面白い戦いが見られることに期待したい。

文=小永吉陽子

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