看護師、弁護士、大学生、エンジニア、タレント…。さまざまな「別の顔」を持つ女性たちのチーム「LOVE DRIVE RACING」が、スーパー耐久レースに挑む。総監督は、2012~2014年に女性ドライバー世界最高成績をおさめた井原慶子。「初…
看護師、弁護士、大学生、エンジニア、タレント…。さまざまな「別の顔」を持つ女性たちのチーム「LOVE DRIVE RACING」が、スーパー耐久レースに挑む。総監督は、2012~2014年に女性ドライバー世界最高成績をおさめた井原慶子。「初参戦で優勝をめざす」という。
関崎祐美子(31歳)、岩岡万梨恵(23)、小松寛子(41)、北平絵奈美(22)、山本絵里子(42)が駆るマシンはマツダ『ロードスター』(ND)、エントリークラスはST-5、メンテナンスはR&D SPORTが担当する。4月1日の開幕戦は、岩岡、北平、小松がドライブする。
自動車産業やモータースポーツ分野で女性の活躍を推進する Woman in Motorsport Project に、2年間で18歳から68歳までの女性600人の応募があり、そこから40人が育成ドライバーとして選抜された。彼女たちは、座学や実地での訓練を重ね、2016年にレースデビュー。延べ12人が各レースで優勝を果たし、68人が入賞。こうした体験を経て、自動車メーカーや自動車関連企業に就職した選手もいた。
28日の発表会見で井原監督は、「クルマがちゃんと残っていれば、シリーズフル参戦する予定。勝つためにR&Dにメンテナンスを頼んでいる。あとは女性ドライバーががんばるのみ。監督としても、彼女たちが安全に結果を出せるところを示していきたい。もちろん、チャンピオンを目指す」と伝え、独自のトレーニング手法についてこう語った。
「10年、20年とレースの現場で活躍するドライバーたちを、彼女たちは半年のトレーニングで追い越してしまった。その最大の要因は、IoTの活用。スマホやPCででクルマを常時見ながら、Gの状況、交感神経・副交感神経の動きを見ながら、リアルタイムで計測。東京大学といっしょに研究をすすめ、声を分析してアドバイスしたりもする。リアルタイムで、『タイヤ半分外側を走るんだよ』『深呼吸するんだよ』と教えたりもする。こうしたリアルタイムなトレーニングで、これまで何十年も積んで鍛えてきたことを、半年でクリアできるようになってきた」
また、この会見に登壇できなかった猪爪杏奈(21)と、山本についてこうコメントした。
「猪爪は、MT車の運転免許をとってすぐ、表彰台にあがってしまった女性。彼女はことし、電気自動車のレースでシリーズチャンピオンを取りたいと話していた。アジアナンバーワン弁護士に輝いた山本は、働き方改革を自ら実行する女性。生きていくなかで、趣味も仕事もどんなところでも楽しんでいけるという女性のロールモデルになっている。彼女はスーパー耐久に参戦することが目標で、その第2回に参戦する予定。いま、弁護士活動のなかで必死に練習している」。
FIA Woman in Motorsport アジア代表委員でJAF Woman in Motorsport アンバサダーの井原監督は、彼女たちを率いるリーダーとして、「このなかから世界一を出せると確信している」と自信をみせる。
「私自身は、長年かけて世界最高峰までたどりついた。彼女たちは、IoTを活かして、早い段階からトレーニングを積んで、結果を出している。クルマを走らせて、下りからデータを解析して、といった作業が、こうしたコミュニケーションツールによってがらっと変わった。アメリカ出張中に岡山でトレーニングする彼女たちにリアルタイムで指導したこともある。彼女たちは運動神経がいい。素直な性格が、クルマの運転を上達させるうえで重要なポイント。彼女たちから、世界一が出るはず」。
◆発表会に登壇した女性ドライバーたちのコメント
ホン・ミンウェイ(30)[TOYOTA GAZOO Racing ラリーに参戦]…台湾出身、筑波大学在学中。台湾は、日本と比べてクルマの環境が悪くて、「レーサーになりたい」「ラリーやりたい」と思ったけど、どうやった実現できるかと考えていた。日本に来たから、4輪の道を探した。
古本舞桜(20)[TOYOTA GAZOO Racing ラリーに参戦]…広島大学教育学部在学中。コ・ドライバーとして参戦する。ミンウェイがベストの走りができるよう努力する。18歳で免許をとって、走りに興味がわいてジムカーナを始めた。大学の自動車部に入って、ダートトライアルに挑戦もした。レースをやってみたいと思って、2期生として合格した。それまではレースをしたこともなくて、ジムカーナの環境とはぜんぜん違うと思った。
北平絵奈美(22)…カートの全国大会で優勝経験があるので、負けん気の強さで優勝目指す。コミュニケーションが大事だと実感している。なかなかカートのクセが治らず、頑固な性格が抜けない。井原監督に怒られることもある。4輪では、素直になることを意識したい。
辻田慈(43)…小学4年生から10年ぐらいカートに載っていた。就活とともにクルマからいったん離れ、2年前の募集を見て4輪の世界へ飛び込んだ。筑波サーキットのオフィシャルを仕事にしているので、そこで得た知識や機転を効かせたレースを展開したい。レースの練習などにも車載カメラをつけて、井原監督のアドバイスを実践したことで、スキルアップにつながった。
小松寛子(41)…普段はカーナビのソフトウェアを開発している。頭脳を活かしたクレバーな走りで貢献したい。大学時代にクルマが好きになり、一時期はドリフトも。その後、クルマ仲間がロードスターパーティーレースを始め、自分も興味をいだき、レースに参戦するようになった。
岡村英莉(34)…普段は芸能活動を仕事にしている。納豆が大好きで、納豆早食い世界大会で4位になった。その粘り強い走りでがんばりたい。二十歳を超えてからカートにチャレンジして、「カートだけじゃ…」と思ったときに、この4輪に応募。MT車運転免許をとって、10年ほどの運転していないブランクがあるけど、がんばる。
岩岡万梨恵(23)…小学生から器械体操をしていて、いま小学生に教えている。大学時代にレーサーになりたいという夢がめばえ、大学をやめてモータースポーツの学校に編入した。表彰台と優勝を目指し走りきる。表彰台に登れたら、そこでバク転したい。トレーニングでは、日々の行動面から教えてもらっている。コミュニケーションなどはレースでは重要と感じている。
関崎祐美子(31)[全日本EVレースにBMW『i3』で参戦]…病院の集中治療室で看護師をしている。きょうも深夜の緊急手術を終えてこの発表会場にきた。大学生のころからF1をテレビで見て、モータースポーツやスーパーカーに興味を持ち始めた。6年前から全日本ジムカーナ選手権に参戦していた。ことしはロードスターのレースとスーパー耐久レースに出たい。
加藤沙也香(20)[全日本EVレースにBMW『i3』で参戦]…10歳からカートをやっていた。小学校の社会科見学でスバルに行ってクルマに興味を持った。そのころ、両親といっしょに鈴鹿サーキットに行ってSUPER GTを観戦。わたしもレーシングドライバーになろうと思った。トヨタ『86』でフジグリーンカップに出た。工業高校の機会科出身で、鋳造や旋盤を動かし、いまは大学の外国語学部で英語を学んでいる。
井原監督は最後に「国内では、マツダが最初に賛同してくれて、メーカーや団体の枠を超えて協力の輪が広がっている。昨年は延べ80人の女性がこのプロジェクトからレースで入賞。自動車産業への就職者も輩出した。今後も女性の参画機会を継続させ、クルマ文化の醸成につながるよう努めていきたい」とコメントした。
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
井原慶子監督が率いる女性チーム「LOVE DRIVE RACING」《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》