「DAZN月間表彰」9月のベストセーブは今季J1・500試合出場を達成した西川周作 スポーツチャンネル「DAZN」とパー…

「DAZN月間表彰」9月のベストセーブは今季J1・500試合出場を達成した西川周作

 スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は9月の「月間ベストセーブ」に浦和レッズのGK西川周作のプレーを選出。楢﨑氏が選んだ「チームを勝利に導いた」プレーとは、どんなプレーだろうか。日本代表でもともに戦った二人の話題は、西川選手の細かい変化に及んだ。(取材・構成=藤井 雅彦)

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楢﨑「周作、久しぶり! 練習や試合で忙しいなか、今日はありがとう。よろしくお願いします」

西川「ナラさん、お久しぶりです。よろしくお願いします! 今回は僕のプレーを『月間ベストセーブ』に選んでいただいてありがとうございます」

楢﨑「周作がずっと良いプレーをしていたのを知っていたから、早く選ばないといけないなと思っていたんだよ(笑)」

西川「本当にうれしいです。子どもの頃から憧れだったナラさんと対談できるということで楽しみにしていました」

――今回、楢﨑さんが9月の「月間ベストセーブ」に選んだのは、第28節横浜FC戦の前半16分でのプレーです。横浜FCの高木友也選手が左サイドをドリブルで駆け上がってそのまま放った強烈な左足シュートを、西川選手が左手の指先で触れて阻止しました。

楢﨑「選出理由は基本的にいつも変わらず、『チームを勝利に導いた』ということが大前提です。それにプラスして技術やメンタルを含めた総合的な判断で僕はこのシーンを選びました。この試合は序盤にも良いセーブがあって、2-0の勝利に導く活躍でしたね」

西川「この試合の前の週に(JリーグYBC)ルヴァンカップ準々決勝があったんですけど、僕はその2試合には出場しなかったんです。今、浦和レッズのGK陣は高いレベルでの競争があります。若い鈴木(彩艶)選手とベテランの塩田(仁史)選手と切磋琢磨しながらポジションを争っています。自分に出番が来て出場したからには絶対に失点ゼロで終えること、そしてチームを勝利に導くプレーを強く意識しています」

楢﨑「GKとしての原点はやっぱりそこだよね。このシーンについて細かいことを言うとすれば、ちょっと前の周作はこういったシュートに対して足で反応するイメージがあった。上を狙われていたら手が出るだろうけど、低い弾道のシュートに『あっ、手が出た』と思ったんだよね」

西川「ありがとうございます。確かに少し前の自分の構え方だったら、手ではなく足が出ていたと思います」

楢﨑「ん? 構え方を変えたの?」

19歳GK鈴木が台頭する中で存在感、楢崎氏「周作はとても逞しくなった」

西川「少し重心が低くなったというか、言い方を変えると以前はラクに構えていたんです。ここ数年はGKコーチと一緒にどっしりと構えることにチャレンジしています。ラクに構えるところと、このシーンのように角度がない時は重心を低くして、手と足のどちらでセーブするか判断を使い分けたいなと」

楢﨑「両方できるのがベストだし、場面によって使い分けることが大事だよね。でも今までの印象だと足がパッと出るのが僕の勝手なイメージ。そこが気になったんだけど、ちょっとマニアック過ぎたかな(笑)」

西川「いえいえ、さすがです(笑)。でもセーブした瞬間は頭の中が真っ白で、本当に無心でした」

楢﨑「シュートが来るまではいろいろ考えるけど、止めるときはそうだよね。それはしっかりトレーニングをこなしているからこそのプレーだと思う。日々のトレーニングがしっかり生きていて、そういった裏付けがあることを知ってもらいたい。いい感触で練習できているんじゃない?」

西川「最近は練習量を増やしていて、そのほうが動けている感覚もあります。試合翌日もリカバリーではなくトレーニングすることもありますし、そういった工夫もあって良いコンディションを保てています。

――西川選手は今年4月にJ1通算500試合出場を達成しました。一方で東京五輪メンバーにも選出されていた19歳の鈴木彩艶選手が台頭し、序盤戦は控えに回ることもありましたが再びポジションを奪い返し、浦和は8月中旬から9月末まで6勝1分と絶好調でした。

楢﨑「世論はどうしても新しいものを求めたくなるもの。鈴木選手のようなポテンシャルがあれば、試合に出場させて経験を積ませるべきという考え方もある。でも、そういった時にベテランが抗うというか、簡単に道を譲らないことで競争力が高まると思う。ポジションを奪われた時はどんな心境だったの?」

西川「一度リーグ戦の先発から外れて、それが6試合くらいあったんです。もちろん悔しさはありましたけど、ここで腐ったら自分は終わりだなと。GKコーチとマンツーマンでトレーニングする時間ができたことを前向きに考えて、必ずどこかでチャンスが来ることを信じながら準備していました」

楢﨑「現役の時から思っていたことだけど、試合に出ている選手と出ていない選手がいて、それぞれに対して指導方法は異なるということ。メンタル面のサポートも含めて、場面に合わせてどのようにアプローチしていくかが大切なんだよね。一度外れてから再びチャンスがめぐってきた時はプレッシャーを感じた?」

西川「正直に言うと、めちゃくちゃプレッシャーを感じていました(苦笑)。でも結果として2試合連続で完封して連勝できて、チームを勝たせる喜びや充実感を得ることができました。試合に出られなかった期間の練習や努力は無駄ではなかったと感じられました」

楢﨑「試合に出られなくなった時にどういった立ち居振る舞いをするかは選手にとって大きなテーマだと思う。もう一度存在感を見せつけるためのメンタルの強さやパワー、そして準備と求められるものは多いよね。周作はとても逞しくなったなと感じるよ」

西川「ナラさんに褒めていただけるのは本当にうれしいです」

楢崎氏に憧れていた西川「幼少期の頃から日本代表で活躍している偉大な先輩」

――お二人は日本代表でも一緒にプレーした間柄ですが、西川選手はずっと楢﨑さんに憧れていたと耳にしました。

西川「自分が幼少期の頃から日本代表で活躍しているナラさんは偉大な先輩であり、憧れの存在です。僕が大分トリニータでデビューしたルーキーイヤーの2005年に、大分と名古屋グランパスの試合が熊本県で開催されたんです。その時に初めてナラさんにお会いできて、試合前に緊張しながら挨拶させていただいたのを今でもよく覚えています」

楢﨑「えっ、そんなにリスペクトしてくれていたの?」

西川「していましたよ!(笑)」

楢﨑「それは知らなかったなあ(笑)。初めて聞いたけど、うれしいね」

西川「あっ、直接伝えるのは初めてかもしれません。いろいろな取材でこの話はしているんですけどね(笑)」

楢﨑「僕もずっとテレビで見ていたカズさん(三浦知良/現・横浜FC)といつからか同じ日本代表でプレーするようになって、最初はドキドキしたよ。そういった現象というか感情は脈々と受け継がれていくんだろうね。だから今度は周作がそうやって憧れられる立場になったということ。20歳くらいの若いGKと対戦することもあるだろうし、彼らは飄々とやっているかもしれないけど、絶対に幼い頃から周作のプレーを見て、憧れを抱いていたはずだから」

西川「ナラさんは幼い時の気持ちを思い出させてくれる存在です。2010年に名古屋が優勝したシーズンも印象的でした。そのシーズンの最終節で対戦した時にユニフォーム交換をお願いしたら気持ちよく応じてくれて。ナラさんの一人のファンとして尊敬の眼差しでプレーさせてもらっていました(笑)。そこで今回、ナラさんに聞きたいことがありまして。僕は今35歳なんですけど、この年齢からどんな感覚でプレーしていたのかアドバイスをいただきたいです」

楢﨑「2010年は自分が34歳のシーズンだなあ。振り返ってみると34~35歳は自分の中で一番良いフィーリングで動けていた感覚がある。いろいろな経験を経て、吸収して、とても良い状態だった。30代後半までは自分が衰えていくイメージは全く持っていなかった。少し怪我が増えていったので自分の体を知ろうという努力やメンテナンスへの意識は高まったけど、プレーしている時は年齢を全く意識していなかったよ。だから周作も気にならないんじゃない?」

西川「そうですね。年齢を考えながらプレーすることはありません」

楢﨑「『今が一番良い』と思ってプレーしたほうがいい。周りからはいろいろな雑音が入ってくるかもしれないけど、自己評価はそこで切り離してしっかり考えるべき。35歳くらいの年齢になると、それまでと同じミスをしたとしても衰えたと思われてしまうから悔しいけど、35歳だからできるプレーも必ずあるはずだから」

西川「素晴らしいアドバイスありがとうございます。自信が湧いてきました」

西川が考えるGKの魅力「GKは試合の流れを変えられる素晴らしいポジション」

楢﨑「というか逆に周作が35歳と聞いてビックリしたよ。まだ26歳くらいかなと思っていた(笑)。見た目も全く変わらないしね。それに実際の見た目だけではなく試合映像を見ていて若く感じるから大丈夫。年齢のことは気にせず頑張ってほしい」

西川「26歳はちょっと(苦笑)。でも今も頑張れているのはナラさんが積み上げてきた試合数を目標にしているからという部分が大きいです。今年500試合出場という節目を迎えたけど、だからこそナラさんの631試合という数字の偉大さをあらためて感じました。これからの努力次第で僕の数字は変わっていくと思うので、これからも日々精進して1試合ずつ数字を積み重ねていきたいです」

楢﨑「僕が現役の時は伊東輝悦さん(現・アスルクラロ沼津)や山田暢久さんが前を走っていて、数字が近づくとメディアに質問されるんだよね。実はめちゃくちゃ意識しているのに『気にしていません』って答えたり(笑)。たぶんそこまで自信を持てていなかったと思うし、試合に出るだけはなく中身がともなっていないと。だから周作には記録とともに記憶に残るプレーヤーになってほしいし、チームを勝たせて優勝させてほしい。数字に関してはどんどん抜いていってほしい(笑)」

西川「ありがとうございます! ナラさんのように憧れてもらえるような選手になれるようにこれからも頑張ります。GKは少年少女にとって怖かったり、痛かったり、失点の責任を背負うといったネガティブなイメージがあるかもしれませんが、GKの楽しさを伝えていけるような存在になりたいです」

楢﨑「自分が長年やっているからこそ苦しさだけではなく楽しさも知っているよね。日本のGKは世界と比較してレベルが低いと言われるけど、そんなことはないと伝えたい。引退して強く思うのは、周作のような現役選手が働きかけてくれることの価値。引退した人間よりも影響力が大きいから、これからも『ONE1-GK』(ワンゴールキーパー)のような活動は積極的に行ってほしい。もちろん一番は実際の試合でパフォーマンスを見せることだと思うけど、日本のGKレベルを向上させていけるようにお互い頑張りましょう」

西川「GKは試合の流れを変えられる素晴らしいポジションですよね。攻撃でもワンチャンスで得点につながるパスを出せるし、僕はゲームメーカーだと思っています。あのGKがボールを持てば何かが起きるということを期待して見てもらいたいです」

楢﨑「今日は忙しいなか、本当にありがとう。これからも浦和でシャットアウトを続けてほしいし、若手の勢いに負けることなく僕の数字を超えていってください。そして、また『月間ベストセーブ』に選びたくなるようなプレーを期待しています!」

西川「ナラさん、今日は本当にありがとうございました。また僕のプレーを選んでもらえるように頑張ります!」

■楢﨑正剛 / Seigo Narasaki

 1976年4月15日生まれ、奈良県出身。1995年に奈良育英高から横浜フリューゲルスに加入。ルーキーながら正GKの座を射止めると、翌年にJリーグベストイレブンに初選出された。98年シーズン限りでの横浜フリューゲルス消滅が決まった後、99年に名古屋グランパスエイトへ移籍。2010年には、初のJ1リーグ優勝を経験し、GK初のMVPに輝いた。日本代表としても活躍し、国際大会では2000年のシドニー五輪(OA枠)、02年日韓W杯などに出場。19年1月に現役引退を発表し、現在は名古屋の「クラブスペシャルフェロー」に加え、「アカデミーダイレクター補佐」および「アカデミーGKコーチ」を兼任。21年からはJFAコーチとしても活躍している。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)