米メジャーリーグはレギュラーシーズンが終わり、現在はプレーオフ真っ只中。全米各地で、ワールドチャンピオンを目指す熱い戦…
米メジャーリーグはレギュラーシーズンが終わり、現在はプレーオフ真っ只中。全米各地で、ワールドチャンピオンを目指す熱い戦いが繰り広げられている。一方でプレーオフに進出できなかったチームは、来季に向けて早くも動き始めている。
どのチームも、今季の弱点を見直しながら「今オフにどのような補強をするか」という計画を立てている最中ではあるが、これからFAになる選手との残留交渉に着手し始めているチームもある。筒香嘉智が今季途中から所属したピッツバーグ・パイレーツもそのひとつだ。

今季パイレーツでは代打での出場のほか、ライトの守備につくことが多かった筒香
レギュラーシーズン終了から間もない現地時間10月5日、パイレーツのベン・チェリントンGMは、シーズンを総括する記者会見のなかでFAになる選手たちとの残留交渉について語り、残留を希望する選手のなかに筒香がいることを明かした。さらに「今後、数日間で話し合いに入ることを楽しみにしている」とも述べており、筒香が来季もパイレーツでプレーする可能性が急浮上した。
メジャー2年目の筒香は、8月以降の目覚ましい活躍で大きな注目を集めた。今季は、タンパベイ・レイズ、ロサンゼルス・ドジャース、パイレーツと3球団でプレー。前半戦は打撃不振に苦しみ、2年契約の途中でレイズから放出され、その後のドジャースでは負傷者リスト入りやマイナー降格も経験した。
しかし、ドジャース傘下のマイナーチームで打撃を徹底的に磨いた筒香は、徐々にその力を取り戻した。そして、選手層が厚くメジャーでの出場機会が見込めないドジャースを自由契約という形で離れ、他に居場所を求めた。ちょうど同じ頃、パイレーツは打撃に期待ができる選手を探していた。長打力に欠け、得点力不足に悩んでいたチームは、マイナーリーグで打撃に復調の兆しが見えていた筒香に興味を持ち、その機会を与える決断を下した。
双方の願いはその結果をもって叶えられた。筒香はパイレーツ移籍後、43試合の出場で打率.268、本塁打8本、25打点を記録。さらに長打率は.535で、8二塁打、1三塁打を放ち、チームの期待に応えてみせた。そしてチームから「残ってほしい選手である」と評されることになった。
筒香の残留を願う声は地元メディアからも出はじめている。例えば、パイレーツ専門メディア『ラム・バンター』は、「ピッツバーグ・パイレーツは筒香嘉智と再契約すべき」と提言する記事を掲載。また、著者が現地記者に取材を行なったところ、『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』ジェイソン・マッキー記者は「彼は非常にいい打者で、私はプレーヤーとして彼が好きです。まだ課題もありますが、彼はチームにない力を持っています」とコメント。さらに『バックス・ダグアウト』ジェイク・スルボドニック記者からは、「残留を希望する数値を1から10で例えるなら、私は間違いなく10です」という非常に前向きなコメントを得ることができた。
このように筒香は、チームの内外から残留が望まれている。しかし交渉はまだ始まっておらず、その結果も現地の願いどおりになる保証はまだない。
パイレーツと筒香との残留交渉で一番のネックとなりそうなのは、年俸の問題だろう。筒香の2021年の年俸は700万ドル(約7億6800万円)だった。今季はレイズがその大部分を負担していたので、パイレーツとしてはメジャー最低保障の年俸57万500ドル(約6400万円)を負担するだけでよかったが、来季はそうはいかない。
筒香に対しては少なくとも億単位の年俸提示をすることが期待されるわけだが、「700万ドルでの再契約」はさすがに非現実的な話だろう。
そもそもパイレーツは潤沢な資金を持つ球団ではない。米スポーツチームの年俸データを掲載している『スポートラック』によれば、今季のパイレーツ総年俸は5435万6609ドル(約60億6800万円)で、メジャー全体では28位。また、今季チーム内で最も高い年俸はコリン・モラン一塁手の280万ドル(約3億1260万円)だったという情報も掲載されていた。
さらに、『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』のマイク・パーサック記者は、自身のSNSで、「(先述の会見で)チェリントンGMが多くの金を費やすことを熱望しているようには聞こえなかった」と明かしている事実もある。「GMが実際にそう言ったわけではない」と補足はしているが、これらの情報から予想すると、筒香はここで多くを望むことはできないのではないだろうか。
では、現実的な年俸はいくらぐらいか。マッキー記者によれば、チーム関係者は口を硬く閉ざしており、「(筒香には)いい面と悪い面が極端にある」という理由もあることから、金額の予想は困難だという。それでも同記者は、「300万〜400万ドル(約3億3500万〜4億4660万円)だと思います」と自身の予想を教えてくれた。スルボドニック記者も同様の額を予想し、その根拠を次のように述べている。
「(パイレーツで)彼が打席で一貫した活躍を見せ、また(交流戦で適用される)DHというポジションも可能なことを考えると、1年300万ドルの契約が合理的ではないでしょうか」。
彼らの予想どおり、筒香の来季の年俸が300万ドルほどとなれば、今季の年俸700万ドルからは大幅な減俸にはなる。だが、パイレーツの財政状況から考えれば相当な額であり、パイレーツが筒香をいかに高く評価しているのかがわかるだろう。
しかし、パイレーツと筒香との交渉において、前述の金銭的な理由以外で再契約に至らない可能性もあることを現地記者は指摘する。
スルボドニック記者は、「彼の守備力が問題になるかもしれない」と心配する。今季、筒香はユーティリティプレーヤーとして、一塁手、三塁手、左翼手、そして右翼手を経験している。パイレーツでは右翼手として20試合に出場しているが、そもそも右翼は筒香の本業ではない。初めての経験に加え、変則的な形をしているパイレーツの本拠地で苦労した場面もあった。記録したエラー数はわずか1だったが、同記者は「エラーにはならないミスプレーがいくつもあった」と指摘。「チェリントンGMは攻守に優れた選手を好むので、もし再契約に至らなければ、それが理由である可能性が高いです」と懸念を示した。
一方、マッキー記者は、「ヨシは、競争力のあるチームからのオファーを待つかもしれない」という予想を述べた。
「パイレーツに来るまでのヨシが(メジャーで)何を求めていたのかを考えると、彼がパイレーツで何年も過ごすとは思えません」と話し、「もし、複数年契約のオファーが他からくれば、そちらを選ぶのは理にかなっていると思います」と、パイレーツが筒香の本来の希望に合う場所ではないことに心配を寄せる。
このように金額だけでなく、パイレーツのオファーが筒香の希望にどれだけ合うかが、再契約において重要な事項になりそうだ。それでも筒香が、来季もメジャーでプレーできる可能性があることに変わりはない。パイレーツと再契約をするかどうかは別にしても、筒香本人にとって最善なオファーを受け取れることを願いたい。