10月11日の午後、北海道銀行と女子カーリングチームの北海道銀行フォルティウスは、それぞれの公式ホームページで「女子カーリングチーム『フォルティウス』へのスポンサー契約終了および北海道銀行女子カーリング部の設立について」というニュースを掲…

 10月11日の午後、北海道銀行と女子カーリングチームの北海道銀行フォルティウスは、それぞれの公式ホームページで「女子カーリングチーム『フォルティウス』へのスポンサー契約終了および北海道銀行女子カーリング部の設立について」というニュースを掲載した。

 北海道銀行フォルティウスは2011年に発足し、2014年のソチ五輪に出場。今年2月の日本選手権で2度目の優勝を果たし、9月の日本代表決定戦ではロコ・ソラーレとの名勝負を繰り広げた名門だが、その冠スポンサーである北海道銀行とのスポンサー契約を、来月いっぱい(11月30日)をもって終了する旨が発表されたのだ。

 船山弓枝、近江谷杏菜、小野寺佳歩、吉村紗也香の主要4選手は、今週からカナダに渡航。オンタリオ州・オークビルで行なわれるワールドツアーのグランドスラムを戦ったのち、11月6日からはカザフスタン・アルマトイで開幕するパシフィック・アジア選手権に出場する。それが、北海道銀行フォルティウスとしての最後の試合になる予定だ。

 その後はどうなるのか。先述の4選手は12月から『フォルティウス』の名前を残したクラブチームで、引き続き競技を継続するという。



今年の日本選手権を制した北海道銀行フォルティウス。左から吉村紗也香、船山弓枝、佐藤浩コーチ、近江谷杏菜、小野寺佳歩

 グランドスラムをはじめとしたワールドツアーや、2022年5月に行なわれる日本選手権の出場枠などは、あくまで『チームYoshimura』、つまり新生『フォルティウス』に与えられる。それを生かして、今季はワールドツアーやパシフィック・アジア選手権などで試合を重ね、世界選手権(2022年3月)の連続出場、日本選手権の連覇を目指して強化を続けていく。

 ただ、ネックとなるのは、今季後半以降の活動費、コーチ、フィフスの不在だろう。なかでも懸念されるのは、およそゼロベースからのスタートとなる活動費。それをクリアするためには、新たなスポンサー獲得へ、今後の国際大会や日本選手権などで好成績を残して、広くアピールしていくことが不可欠となる。

 一方、北海道銀行は伊藤彩未と田畑百葉という若手2人を残し、そこに新メンバーを加えたチームを結成。12月1日から『北海道銀行女子カーリング部』(仮称)という形で新たな船出をきる。まずは、日本選手権出場が直近の目標になってくるだろう。

 同チームはメンバーがそろえば、佐藤浩コーチの指導のもと、札幌予選から戦うことになるが、伊藤と田畑の伸びしろとポテンシャルは十分に見込める。男子では2月の日本選手権で、当時高校生だった常呂ジュニアが初出場ながらファイナルまで駆け上がっている。同様に北海道銀行の新設チームにも次世代からの突き上げなるか、期待が高まる。

 どうしても4年ごと、五輪という大舞台を中心に人事が動くカーリングならでは、という見方もできるが、このシーズン途中での異例の発表は、カーリングファンにとっては少し寂しさが伴う話題かもしれない。

 とはいえ、厳しい言い方になってしまうが、吉村率いる北海道銀行フォルティウスは、ロコ・ソラーレと好勝負を演じながらも、最大の目標であった北京五輪出場は叶わなかった。これは事実であり、結果の出なかったチームとの契約を終了し、若返り、世代交代に踏み切る北海道銀行の決断はまっとうだ。誰にも責められるものではない。

 また、2030年の冬季五輪には札幌が開催地として立候補している。この地元開催に向けて、新たにチーム作りをはじめるのも至極当然とも言える。

 それは、これまで北海道銀行フォルティウスで活動してきた4選手も理解している。むしろ、なかなか勝ちに恵まれなかった時期も辛抱強く支援を続けてきてくれたことに感謝し、冒頭で触れたリリースでもそれぞれ謝意のコメントを出している。そのなかで、船山はこう綴っている。

「これまで『北海道銀行フォルティウス』を応援してくださった皆さま、『北海道銀行女子カーリング部』と『フォルティウス』が新たなスタートを切ります。カーリングに対する思いは同じく、日本カーリング界の発展に貢献できるよう頑張っていきますので、両チームの応援をどうぞよろしくお願いいたします」

 その言葉どおり、『北海道銀行女子カーリング部』と『フォルティウス』はこれから、良きライバルになる。それだけだ。

 近い将来、田畑と吉村の投げ合いが見られるかもしれない。日本カーリング界にまた、注目すべきチーム、注目すべきカードが増えた。