カタールW杯アジア最終予選特集 ワールドカップアジア最終予選で、日本はサウジアラビアに0-1と敗れた。3試合を消化したば…
カタールW杯アジア最終予選特集
ワールドカップアジア最終予選で、日本はサウジアラビアに0-1と敗れた。3試合を消化したばかりで、早くも2敗目である。

アウェーのサウジアラビア戦で0-1と敗戦を喫した日本代表
痛い敗戦であるのは間違いない。
だが、元を正せば、サウジアラビアはグループ最大の難敵である。アウェーで敗れることは、想定の範囲内。内容的に完敗を喫したわけでもなく、キャプテンのDF吉田麻也の言葉を借りれば、「我慢勝負だった。どちらに転んでもおかしくなかった」試合である。
にもかかわらず、必要以上に強い痛みを感じるのは、最終予選初戦でオマーンに敗れ、すでに苦しい状況に立たされていたからだ。
加えて、前半より後半の内容が悪くなるなかで、試合終盤に失点。オマーン戦と同じパターンが繰り返されたことは、選手たちに相当な精神的ダメージを与えたに違いない。
今回のサウジアラビア戦も、根本的なところではオマーン戦と敗因が共通していた。
すなわち、自分たちが狙いとするサッカーができなくなった時にどうするか。その点において、対策が講じられなかったことである。
現在の日本代表は森保一監督が就任以来、縦に速い展開で相手を押し込み、ボールを失っても素早い守備への切り替えと強度の高いプレスで奪い返すサッカーを追求してきた。
昨年来コロナの影響でしばらく試合ができない時期はあったが、昨秋から今春にかけて行なわれた試合では、多少の出来不出来はあるにせよ、狙いどおりの試合が比較的コンスタントに、しかも、高いレベルで行なわれるようになっていた。
今春の2次予選で日本が大勝を続けたことは、相手が弱かったから、だけが理由ではない。それについては、森保監督の手腕を評価していいのだろう。
もし最終予選がすべて日本で、それも涼しい時期に行なわれ、試合ごとに1週間の準備期間があるというなら、日本は楽々と勝ち抜けるに違いない。
だが、それはつまり、選手が常に良好なコンディションで、元気ハツラツとプレーできることを前提にしているということだ。
裏を返せば、その前提が崩れた時の日本代表は、あまりに心許ないチームになってしまうということでもある。
昨秋のメキシコとの親善試合のように、明らかに相手の力が上だったために自分たちの狙いとするサッカーができなかった、というならあきらめもつく。
しかし、この最終予選での2敗は違う。
オマーン戦で言えば、海外組はシーズンが始まったばかりでコンディションが整っていなかったうえ、長距離移動と時差も重なり、まったくプレー強度が上がっていなかった。
そして、サウジアラビア戦に関して言えば、蒸し暑さに足を引っ張られていた。前半こそ強度の高いプレーができていたが、後半に入ると徐々に動きが重くなり、それとともにミスを増やした。
いずれにしろ、想定しうる問題である。結果として高いプレー強度が保てなくなっているのなら、考えられる対応策はふたつしかない。
選手交代で高いプレー強度を保つか、戦い方そのものを切り替えるか、である。
早めの選手交代を行ない、前半に近いプレー強度を保とうとするもよし。割り切って引いて守り、ロングカウンターを狙うもよし。本来のサッカーができないなら、別の手を打つ必要があったはずだ。
ところが、実際は何ら明確な策が講じられないまま、いずれの試合も終盤の失点に至っている。
今回のサウジアラビア戦を見ていても、MF柴崎岳のパスミスが失点に直結したが、後半開始早々にも柴崎のボールロストから決定的なピンチを招いていたし、同じような失い方は前半にも何度かあった。
柴崎だけではない。失点の少し前には、DF長友佑都がGK権田修一に雑なバックパスを送り、あわや大ピンチというシーンもあった。思いどおりに試合を進められていないにもかかわらず、危機意識に欠けたプレーが続いていた。失点の予兆がないなかで、突如"事故"が起きたわけではない。
また、本来なら修正を施すべき指揮官の悪手も目立つ。
森保監督は試合後の会見で、「柴崎は疲労が見えていたので、交代しようとしていたところでの失点となった」と話していたが、60分前後での失点ならともかく、71分である。遅きに失した感が否めないのは、決して結果論ではない。
結局はオマーン戦に続き、プレー強度が落ちているのをただ見ているだけの展開になり、失点を繰り返す結果となった。
もちろん、まだまだ巻き返しは可能だ。3試合を終えて1勝2敗は、日本の実力を考えれば屈辱的な数字だが、これからサウジアラビアとオーストラリアも潰し合う。予選突破をそれほど危ぶむ必要はない。
それでも、勝ち点差どうこうは別にして、同じことが繰り返されている現状には不安が募る。
幸いにして、中東にも冬は来る。オマーンとのアウェーゲームが行なわれる11月になれば、当地の気温も下がり、日本のプレー強度も高く保てるかもしれない。
しかし、その一方で、これから先のホームゲームでも、海外組が長距離移動と時差に悩まされることに変わりはない。だとすれば、同じことが再び繰り返される心配は当然残る。
森保監督は「進化するために常に修正するところはある」としつつも、「ベースの部分で方向性は間違っていない」とも話す。
否定はしない。
だが、現在の日本代表に感じる不安の源は、ベースの方向性が正しいか否か、ではない。むしろ正しいと固執しすぎるがゆえの、柔軟性の欠如である。