櫻坂46 菅井友香が語る馬術インタビュー@後編前編から読む>>櫻坂46キャプテンの菅井友香さん。中学時代から馬術競技のひとつ「馬場馬術」を本格的に始め、大会でも好成績を収めた。現在は日本馬術連盟「馬術スペシャルアンバサダー」として競技の魅力…

櫻坂46 菅井友香が語る馬術
インタビュー@後編

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櫻坂46キャプテンの菅井友香さん。中学時代から馬術競技のひとつ「馬場馬術」を本格的に始め、大会でも好成績を収めた。現在は日本馬術連盟「馬術スペシャルアンバサダー」として競技の魅力を伝えている。乗馬との出会いや馬術競技の魅力を聞いたインタビュー前編に続き、後編では、今夏開催された東京五輪・パラリンピックでの馬術競技や競技経験から学んだことについて聞いた。



馬術の奥深さを熱く語った櫻坂46菅井友香さん

ーー東京五輪・パラリンピックの馬術競技を観戦しましたか? 

菅井友香(以下、菅井) もちろんチェックしていました! 五輪のほうでは、私が小学5年生の時に入っていた乗馬クラブで指導してくださった、全日本選手権3度の優勝を誇る馬場馬術の林伸伍選手が出場していたので、すごく楽しみにしていたんです。 

ーー林選手の試合はどう映りましたか? 

菅井 大舞台で堂々と騎乗されていたので、本当にすばらしかったなと思いました。林選手はふだんから緊張が顔に出ないタイプなんですけど、やはり本番もいつもどおりで、さすがでした。あとは総合馬術で4位に入賞した戸本一真選手もいい戦いをしていて、日本のレベルもとても上がっているなと実感しました。 

ーー他国の選手はいかがでしたか? 

菅井 「馬術王国」と呼ばれるドイツは、団体・個人ともに最高峰の技術で圧巻でした。個人的には、障害馬術団体で銀メダルを獲得した、アメリカ代表のジェシカ・スプリングスティーン選手がとても綺麗でカッコよかったなと思います。最後まで笑顔で演技していたので、見ている私も自然と笑顔になってしまうような。楽しく、美しいパフォーマンスでした。ファンになっちゃいましたね。 



「馬術スペシャルアンバサダー」として馬術を発信している菅井さん

ーー馬術は五輪で唯一、全種目を男女混合で行なう競技で、ジェシカ選手をはじめ女性選手が活躍しました。 

菅井 今回の馬場馬術個人でも上位3人は全員女性の選手でした。同じ女性として憧れるし、勇気をもらえました。馬術は本当に力だけじゃないんだなって、あらためて感じました。 

ーーそのほかに大会を通じて印象的なシーンはありますか? 

菅井 印象的だったのが、馬場馬術でスペイン代表のホセアントニオ・ガルシアメナ選手が、演技終了後に敬礼をする際、ポケットからピカチュウのマスコットを取り出してキスしていたんです。「そんなパフォーマンスあるの!?」って驚いちゃいましたけど、すごく可愛らしかったですね。海外の選手たちも日本を楽しんでくれているんだなって。そう思うとなんだかうれしくなりました。 

 あとは障害馬術ですね。障害となるバーが日本らしくデザインされていたところがおもしろかったです。お寿司やお相撲さんなどが描かれたバーがたくさんありました。でも、それに各国の馬がびっくりして、演技で失敗してしまっていて。特にダルマや、顔半分のリアルな舞妓さんのパネルはあまりに怖かったので途中から使われなくなりましたね(笑)。 

ーーバーのデザインは開催国や大会によって違うものなのですか? 

菅井 違うみたいですね。馬は大変だと思います。騎乗者は下見できるけど、馬はぶっつけ本番なので。 

ーーちなみに障害馬術の経験はありますか? 

菅井 テレビ番組の企画で挑戦したことがあります。かなり難しかったです。馬は障害をしっかり跳び越えてくれるんですけど、跳ぶまでの歩数を合わせるためのコントロールが大変で。障害バーを落とさないように飛ばないといけない、かつ、早いタイムが求められるので、ハイレベルな技術力が必要になるなと感じましたね。 

ーー馬場馬術と障害馬術の2種目に加え、クロスカントリーを入れた3種目を4日間で争うのが総合馬術ですね。 

菅井 私自身、実際に総合馬術の試合を見たのは東京五輪が初めてでした。今回は暑さとの戦いでもありましたし、コンディション維持という点で人馬ともに本当に大変そうでした。総合馬術のメインでもあるクロスカントリーは、自然に近い状態の地形で行ないますが、池の中を走ったり、コースに設けられた障害を飛び越えたりと、本当にハード。ハラハラしながら見ていました。 

 私と同じ「馬術スペシャルアンバサダー」である佐々紫苑選手も総合馬術の実力者で、彼女に競技中はどんな気持ちなのかと聞いたら、「くそーって言いながら半分怒りながらやってる」と言ってて(笑)。それでも馬を励ましながら走っているらしいので、相当根性が必要なんだろうな、と。ただ、そんな過酷な種目でも、ドイツ代表のユリア・クライエフスキという女性選手が優勝したというのは、競技の奥深さを感じました。 

ーーでは、パラリンピックの馬術競技はいかがでしたか? 

菅井 パラの選手たちは馬に乗るだけでも大変なはずなのに、そのうえで高い技術を身につけていて、本当に感動的でしたし勇気をもらえました。日本からは63歳の宮路満英選手が8位入賞とすばらしい成績を残しました。その裏には、ずっと二人三脚で歩んできた奥さんのサポートがあって。ずっと助け合いながら、夫婦で夢をつかむ。これほど素敵なことはないなと思いましたね。 

ーーパラでは60代の宮路選手の活躍があり、五輪も日本代表選手の平均年齢が40歳以上と、馬術は年齢層も幅広いですね。 

菅井 宮路選手もそうですし、2012年ロンドン五輪では法華津寛選手が71歳で出場しましたし、みんなスーパーマンだなと思っちゃいます(笑)。私が現役だった10〜20代の時でも、馬に乗るだけで相当体力使っていたので、ベテランでも第一線で活躍している選手は尋常じゃない努力を積み重ねていると思います。 

 今大会、馬場馬術個人で銀メダル、団体で金メダルを獲得したドイツ代表のイザベル・ベルト選手なんて、私が小学生の頃から世界で活躍していますから。お母さんになった今もドイツ代表をけん引している存在なので、いやぁ...本当に大尊敬です。私も試合に出るとまではいかなくても、馬術はずっと続けていきたいですね。 

ーーここまで馬術競技について話を伺いましたが、今大会で他に注目して見ていた競技はありますか? 

菅井 スケートボードは初めて見ましたが、とても面白かったです。男女ともに若い選手が多くて、みんな活躍していて驚きましたし、細い手すりを滑って着地していたので、相当な勇気が必要なんだろうなと思いました。ある撮影の時、現場にたまたまスケボーが置いてあったから実際にメンバーと一緒に乗ってみたんですけど、めちゃくちゃ難しくて......。乗るのは同じでもまったく違う世界でした(笑)。 

 あとは柔道も見ました。特に阿部一二三選手と詩選手のきょうだいでの優勝は感動しましたね。詩選手の喜び方がカワいくて、お兄さんは対照的に最後まで喜びを隠している感じが、それぞれの性格が出ていてほっこりしました。それに柔道発祥の地である日本開催なので、「勝って当たり前」というプレッシャーがのしかかっていたと思うんです。それでも阿部きょうだい含め全選手がベストを尽くして多くのメダルを獲得していたので、カッコよかったですし、誇らしい気持ちになりました。 

ーー菅井さんも大きな緊張感の中で馬術競技に臨んでいたと話していました(※前編)。そうした経験が今のアイドル活動に生きている部分はありますか? 

菅井 たくさんあります。馬術ではつらいことや、もう無理だと思うことは何度もありました。うまく結果が出せなかった時は、悔しくて布団のなかで泣いていたこともありました。それでもしっかり自分の舵をきって期待に応えていく。そう思える心の切り替えみたいなものは櫻坂46の活動に生きています。今思えば、まだまだ精神的に成熟していなかった学生時代のうちに、試合を通してそういった場面を経験できたのは大きかったです。あの時があったから、今は大丈夫だろうって思えるので。 

ーーまさに馬力といいますか、そのような精神がグループを引っ張る原動力になっているように思えます。 

菅井 そうかもしれませんね。これまで馬という言葉の通じない相手と向き合い続けて、気持ちを考えて行動できるようになったり、試合という緊張感が張り巡らされた空間でのメンタルコントロールだったり。そういった経験は、メンバーやスタッフの方とのコミュニケーションや、ライブという大舞台でのパフォーマンスにすべてつながっているんじゃないかと思います。 

 それにパフォーマンスという点で言うと、馬場馬術も人に見せる競技。周りの人たちに対して、いかに美しく魅せるかという部分は、ジャンルこそ違えど歌やダンスと重なります。馬術は自分の身なりだけじゃなく、馬もきれいにツヤツヤにしますし、馬に乗って入ったところから最後の出て行く瞬間まで美しく見せなくてはなりません。ライブでも、ファンの方々の前に顔を出す瞬間、ステージ上でのパフォーマンス、そして舞台裏に出て行く時の後ろ姿まで周りから見られている。そう意識して行動しているんです。 

ーー最後に、これから馬術に挑戦してみたい人に向けてメッセージをお願いします。 

菅井 馬と触れ合うことでリラックスできたり、逆に刺激を得たりと、ふだんでは体験できない特別感や、実際に乗らないとわからない感動があります。加えて馬には、「ホースセラピー」という精神機能と運動機能を向上させるほどの癒し効果があるんです。大学の馬術部時代には、部員と一緒に地域の子どもたちや障がいを持った方を招いて乗馬体験をしてもらう企画を行ないました。馬から元気をもらって笑顔になる姿が印象的でした。私自身も毎日、馬からいっぱい力をもらっていましたし、馬の力って本当にすごいんです。 

 なので、少しでも興味を持っていたら近くの乗馬クラブにぜひ足を運んでみてください。体にとっても、心にとってもすごくいいことだと思いますよ。ぜひ、馬を信じて、たくさんの方に楽しんでほしいです。 

(終わり) 

【profile】 
菅井友香 すがい・ゆうか 
1995年11月29日、東京都生まれ。小学5年生の時に友人に誘われ乗馬を始める。中学1年生から馬場馬術に本格的に取り組み、2011年の全日本ジュニア馬場馬術大会チルドレンライダー選手権で2位、2013年の東京都馬術大会M1課目で優勝するなど大会で好成績を残す。2015年に欅坂46第1回オーディションに合格し、アイドル活動をスタート。2020年10月に欅坂46が櫻坂46に改名。現在までキャプテンを務める。