関大・久保田は今春の関西学生リーグで7人目の3戦連続HRを記録 リーグ記録に並んでもどこまでも謙虚だ。11日に実施されるドラフト会議を前に関西大の久保田拓真捕手は「野球をやっていて(プロ志望届)を書けるとは思っていなかったので嬉しいですね」…

関大・久保田は今春の関西学生リーグで7人目の3戦連続HRを記録

 リーグ記録に並んでもどこまでも謙虚だ。11日に実施されるドラフト会議を前に関西大の久保田拓真捕手は「野球をやっていて(プロ志望届)を書けるとは思っていなかったので嬉しいですね」と自身の現在地を不思議そうに振り返った。

 兵庫県神戸市出身。小学1年から野球を始め、津田学園(三重)では3年夏に甲子園に出場した。メジャーでも活躍した城島健司氏(ソフトバンク球団会長付特別アドバイザー)に、幼少期から憧れ続けている。「本塁打も打てますし、チャンスにも強いですし、肩も強くて存在感がとてもあるなあという感じでした」。

 そんな久保田少年は現在、城島氏と同じ身長182センチ、体重は憧れの捕手を超える98キロに。二塁への送球は1.8秒と肩の強さも文句なしだ。ドラフト候補の大型捕手に成長したきっかけは、2年秋の明治神宮大会で目の当たりにしたドラフト指名選手の姿だった。

 久保田は関大入学時、4年後に必ずプロに入ると目標設定していたわけではない。「普通に試合に出て活躍して社会人に行く。大学を出てからも野球をしたいとは考えていました」と振り返る。

 同級生には同じくプロ志望届を提出している野口智哉内野手がいる。「1年生の時から野口は試合に出続けていたので凄いと思っていましたし、プロに行くって最初から思っていた」とプロの世界に向かうというのはどこか他人事だったという。しかし、正捕手として臨んだ2年秋の明治神宮大会で、野球少年が誰でも抱く「プロ野球選手になれたらいいなあ」という夢が明確な目標に変わったという。

2年の神宮大会で見たソフトバンク海野、中日郡司のプレーが刺激に

「海野さんとか郡司さんとか凄いプレーをしていたので、この人たちのようにプレーできたらプロ野球選手になれるんじゃないかなと。少し現実味が増したというか明確な目標ができたので、(プロに)なれるんじゃないかなって思うようになりました」。大会は2019年ドラフト会議後に行われ、東海大の海野隆司捕手はソフトバンクに2位、慶大の郡司裕也捕手は中日に4位指名されていた。

 技術面はもちろん、送球の強さやスイングスピードなど様々な面で力の差を感じたが、一番は「身体の強さ」だったという。「パワーもありますし、キレもありますし、僕はその時めっちゃ細かったので、とにかく体つきが違うなと感じました」。栄養面から食事を見直し、それまであまり取り組んでいなかったウエートトレーニングにも時間を割いた。昨春の緊急事態宣言中は帰省し、母が作ってくれる食事で体重を増やしながら長距離走でキレを失わないよう身体作りに励み、約10キロの増量に成功した。

 そのパワーはすぐに結果となって現れた。今年の関西学生野球春季リーグで「4番・捕手」に座り続けた久保田は、5月23日の京大戦から同25日の近大戦にかけて3試合連続本塁打を放った。リーグ史上7人目の記録で、過去に近大の二岡智宏(巨人2軍監督代行)や佐藤輝明(阪神)らが達成している。春季リーグでマークした久保田の3本塁打、16打点はリーグトップで、自身3度目のベストナインにも輝いた。

 現在行われている秋季リーグで関大は負けなしの6連勝(10月4日終了時点)。ドラフト会議が行われる11日は午前に京大戦を控えており「ドラフトについては特に。リーグ戦があるので頑張ろうかなって感じです」としながらも「野球人としての1つの夢が叶うときだと思うので楽しみにしています」と思いを口にした。大学での4年間で手繰り寄せた夢が、叶う時がやってくる。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。