チーム事情から見るドラフト戦略2021~阪神編 10月6日現在、首位ヤクルトと1ゲーム差の2位につけ、熾烈な優勝争いを繰り広げている阪神。その原動力は「ルーキー」の働きによるところが大きい。 59打席連続無安打のセ・リーグワースト記録を更新…

チーム事情から見るドラフト戦略2021~阪神編

 10月6日現在、首位ヤクルトと1ゲーム差の2位につけ、熾烈な優勝争いを繰り広げている阪神。その原動力は「ルーキー」の働きによるところが大きい。

 59打席連続無安打のセ・リーグワースト記録を更新したとはいえ、ここまで23本塁打、61打点をマークした昨年ドラフト1位の佐藤輝明。ドラフト6位入団ながら、守備力を評価されショートのレギュラーに定着し、打率.274に加えて、リーグトップの26盗塁を記録している中野拓夢。投手陣でも2位の伊藤将司がローテーションの一員として8勝をマークするなど奮闘。

 昨年までいなかった「左の和製大砲」「堅守の遊撃手」「安定感ある先発左腕」が一気に現れ、戦い方はもちろん、チームの雰囲気が一気に変わったように思う。



中学時代から評判の投手だった高知高校・森木大智

 こんな時は、さらにイキのいい選手を獲得したい。候補は、高校「BIG3」と評される市和歌山の小園健太(右投右打)、ノースアジア大明桜の風間球打(右投右打)、高知の森木大智(右投右打)の3人。なかでも、甲子園のマウンドに一番似合うのは森木だと勝手に思っている。

 働き場は、試合終盤のしびれる場面でのマウンドだ。そこに立ちはだかって、敵の反撃を150キロ超のストレートで切ってとる。

 森木はひたすら全力投球のように見えて、実際は打者の顔色を見極めながら投げられるセンスの持ち主である。レベルが上がるほど、投手にはこうした感性が大事になってくる。初球はどの球で攻めて、どのボールで打ちとるのか......抑え役の"キモ"はそこだ。

 森木は、阪神のクローザーとして長年チームを支えた藤川球児と同じ高知出身。ぜひとも藤川が担ってきた「守護神」の座を継承してほしいと思う。

 また真相は定かではないが、正捕手である梅野隆太郎がFAで他球団に移籍するのではないか......という噂がある。事の真偽はともかく、遅かれ早かれ梅野の後継者づくりは必要である。

 筆頭は市和歌山の松川虎生(右投右打)だ。キャッチャーとしての資質はもちろんだが、ポジションを変えてバッティングに専念してほしいほどの逸材である。どの方向にも同じ飛距離のアーチを描けて、変化球のさばきも一級品である。

 今年のドラフト候補の捕手では、松川が頭ひとつ抜けた印象があるが、大学生にも中央大の古賀悠斗(右投右打)、国学院大の福永奨(右投右打)がいる。ともにバッティングに課題は残すが、ディフェンス力は高い。

 チームを見渡せば、ファームもウエスタンリーグを制するなど、若手は着実に力をつけている。ルーキーの村上頌樹が最多勝(10勝)、最優秀防御率(2.23)、最高勝率(.909)の投手三冠を達成。

 2年目の西純矢も6勝を挙げ、同期の小川一平も150キロ超の快速球とフォークを低めに決めて、一軍定着目前だ。

 彼らはみんな右腕で、チーム力の底上げには左腕を強化しておきたい。センバツ優勝投手の東海大相模・石田隼都(左投左打)は、今年の高校生左腕ではナンバーワンの実力者だろう。140キロ中盤のストレートをコンスタントにマークしながら、変化球のキレも抜群。1年目から一軍のマウンドに上がり、2年目からローテーションに入っても驚かない。それだけの力を備えた投手である。

 ほかにも、高校生には有望な左腕が揃っている。大阪桐蔭のエース・松浦慶斗(左投左打)はすでに150キロをマークしており、実戦での経験値も高い。今夏の甲子園では不完全燃焼に終わったが、潜在能力はまだまだこんなものではないだろうし、数年後は球界を代表する左腕になっていても不思議ではない。

 明徳義塾の代木大和(左投左打)は、カットボールをマスターしたことでピッチングが一変。強さにうまさが加わり、打者にとっては厄介な投手になった。打撃センスも超高校級で「二刀流」として育ててみたい選手だ。

 二松学舎大付の秋山正雲(左投左打)は、身長171センチと小柄ながらキレのいいストレートを武器に真っ向勝負ができる本格派。堂々としたマウンドさばきは、すでにプロ仕様。先発、リリーフどちらもフィットしそうで、チームにとって心強い存在になるはずだ。

 昨年のドラフトでは即戦力を次々に獲得し、大成功を収めた阪神。今年は2、3年後の主力となるべき選手を積極的に指名したいところだ。