真中満インタビュー@前編「首位ヤクルトの戦力分析」2年連続最下位から今季躍進、セ・リーグ首位を走るヤクルトスワローズ。2…
真中満インタビュー@前編
「首位ヤクルトの戦力分析」
2年連続最下位から今季躍進、セ・リーグ首位を走るヤクルトスワローズ。2位阪神タイガース、3位読売ジャイアンツと優勝争いを繰り広げている。そこで今回、ヤクルトが前回リーグ優勝した2015年に、監督としてチームを率いた解説者の真中満氏にインタビュー。前編では、ヤクルトの好調の理由を聞いた。

今季のヤクルトの戦力を分析した真中満氏
【ヤクルトのここまでを振り返る】
ーー高津臣吾監督率いる東京ヤクルトスワローズの奮闘が続いています。今季の開幕前、真中さんは「忖度込みで3位かな?」と予想されていましたが、ここまでのヤクルトの戦いぶりをどうご覧になっていますか?
真中 10月に入っても首位をキープしているけど、ずっと3位だった9月中盤までも「そのうち上位の阪神、巨人をとらえるだろうな」という印象を持っていましたね。東京五輪中断前、すごくチームの調子がよかった。だからここで中断するのはもったいないと思っていたんだけど、シーズン再開後も調子は悪くなかった。それで、「これはいけるぞ」と思って見ていましたね。
ーーあらためて今シーズンのここまでを振り返ります。コロナ禍により新外国人のホセ・オスナ、ドミンゴ・サンタナ両選手の来日、チームへの合流が遅れました。青木宣親選手も濃厚接触者と認定されて離脱を余儀なくされました。この間の印象はいかがですか?
真中 外国人選手は未知数だから、どこまで活躍できるのかはわからなかったけど、まさか、オスナ、サンタナがここまでやるとは思わなかったですね。打線で言えば、昨年同様、青木、山田(哲人)、村上(宗隆)頼みになってしまって、「ちょっと苦しいかな?」という印象もあったんだけど、そのなかで内川(聖一)をファーストにしたり、青木の離脱期間中は中村(悠平)を2番に起用したり、なんとかやり繰りをしていたイメージですね。
ーーそこに両外国人選手が加入。オスナ選手が五番に入ることで、昨年来の「5番不在問題」は解決したと言ってもいいでしょうか?
真中 そうですね。昨年までは5番も含めて、下位打線にいけばいくほど力が落ちていたから、相手にとっては「村上と勝負しなくてもいい」という感じだったけど、5番・オスナ、6番・中村、7番・サンタナが控えていて、相手チームも村上と勝負をせざるを得なくなった。僕は当初、村上を3番にしたほうがいいと思っていたけど、これだけ後ろの5番以降が機能するのなら、村上4番でいいと思いますね。
ーー村上選手は史上最年少での通算100号ホームランを達成。プロ4年目の今季、彼の活躍をどう見ていますか?
真中 ただただすごいよね。みんなが思うとおりですよ。すごく落ち着いていて、すでにプロ20年目くらいの風格でバッターボックスに立っているし、チームを盛り上げる意思も感じられるし、もはやベテラン選手のたたずまいだよね(笑)。
【青木宣親は、どんなに苦しくてもやる男】
ーー今季から新キャプテンに就任した山田哲人選手についてはいかがですか?
真中 山田については特に変化は感じないですね。山田のプレーは、チームに対する影響力が大きいんです。カッコよく言えば、プレーを通じて「背中で引っ張るタイプ」です。僕としては「キャプテンだから」ということで、キャプテンシーを発揮しようとして空回りするよりは、山田らしく自分のペースでプレーしたほうがいいと思っていたので、今のスタンスというのはちょうどいいと思いますね。
ーー先ほど話に出た青木宣親選手の奮闘はどう考えていらっしゃいますか?
真中 青木は正直、近年にないくらい苦しいシーズンを過ごしていると思いますよ。自主トレ期間中、そして開幕してからと二度の濃厚接触者として離脱。今季は最悪なスタートだったと思います。でも、青木は苦しくてもやるじゃないですか。たとえ数字には残っていなくても、チームのために何かをできるタイプですから。成績は納得がいっていなくても、優勝争いをしている現状を喜んでいると思いますね。数字に変えられない充実感をすごく感じているはずですよ。

今季8勝を挙げている奥川恭伸。真中氏の評価も高い photo by Kyodo News
ーー打撃陣もそうですが、今シーズンは先発投手陣、中継ぎ陣が本当によく頑張っていると思います。真中さんの印象を教えてください。
真中 やっぱり、奥川(恭伸)の印象がいちばんかな? 中10日のローテーションで、高津監督が大切に起用してきて、それがいい結果に結びついていますよね。でも、チーム状況が苦しければ、そんな余裕のある使い方はできないわけです。今年はようやく高橋奎二が出てきて、原樹理が成績を残したり、(アルバート・)スアレス、サイスニードがローテーションを回したり、谷間に登板した高梨(裕稔)がいいピッチングをしたり、高津監督、伊藤智仁ピッチングコーチを含めたチーム内の連携がうまくいっていると思います。
ーー石川雅規投手も好投を続けてローテーションを守っています。
真中 失礼、失礼。石川もすごく頑張っていますよね。ベテランの石川、高梨、若手の奥川、高橋奎二、そして外国人のスアレス、サイスニード。去年までの「今日は誰が投げるの?」という誰もいない状況から、今年は「一枚、二枚余っているんじゃないの」というぐらいの質と量を誇っていますよね。だからこそ、田口(麗斗)やスアレスをリリーフに配置転換したり、奥川をいいコンディションで回すことができているんだと思いますよ。
【延長戦があれば、ヤクルトはもっと強かった】
ーープロ2年目を迎えた奥川投手については、どのように評価しますか?
真中 昨年のシーズン最終戦のプロ初登板を見た時には「まだ時間がかかるかな?」と思っていたんだけど、今季は高津監督の辛抱強い起用もあって、投げるたびに成長しているのを感じますよね。これ以上ないぐらい順調なペースで、来年からは普通に中6日の間隔で投げるんじゃないのかな? まだ20歳だけど、投手陣に柱ができた感じがするし、来年以降のイメージがすごくいいと思いますね。
ーーオリンピックによる中断期間を経た後半戦再開の初戦、その後の3連戦の頭など、高津監督は奥川投手を軸にローテーションを編成しているように見受けられますね。
真中 後半戦の投球内容を見ていたら、奥川が軸でいいと思いますよ。これから優勝争いが本当の佳境を迎えるなかで、どれくらいの間隔で投げさせるのかに注目ですね。ここ最近は「投げ抹消」をさせずに一軍に置いています。登板間隔も詰まってくる可能性がありますよね。高津監督はコロナの特例措置を上手に活用していると思いますね。
ーーどういうことでしょうか?
真中 今季もコロナによる特例措置で出場選手登録が29人から31人に増えたでしょ。これを上手に活用して奥川を起用していますよね。
ーー今季は延長戦を行なわず、9回引き分けというのもヤクルトには有利に働いているんじゃないでしょうか?
真中 確かにチーム成績がよければ「有利だ」というふうに見えるけど、僕としては延長戦があれば、もっとヤクルトの白星は増えたと思っていますね。たとえば、阪神のリリーフ陣を見てみると、きちんと計算できるのが岩崎(優)、(ロベルト・)スアレスぐらいですよ。巨人は(ルビー・)デラロサも、(チアゴ・)ビエイラも投げてみないとわからない。阪神も巨人も9回までの継投でいっぱいいっぱいです。
でもヤクルトの場合は今野(龍太)、清水(昇)、(スコット・)マクガフが確立している。少し落ちるかもしれないけれども、他にも星(知弥)がいて、石山(泰稚)、終盤から配置転換された田口、スアレスもいる。もしも延長12回まで行なわれていれば勝てた試合もたくさんあったと思うんですよね。他球団から見たら、かなりぶ厚い陣容だと思いますね。
ーー後編ではぜひ、ライバルである阪神、巨人について中心に伺いたいと思います。
真中 僕のなかでは「ヤクルト有利」の思いが強いので、今シーズンのここまでを振り返りつつ、その点もお話ししましょうか。
(後編へつづく)
【profile】
真中満 まなか・みつる
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、92年ドラフト3位でヤクルトに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、08年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。15年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。