勝みなみを支えた母の言葉とは 女子ゴルフの国内メジャー・日本女子オープン最終ラウンド(R)が4日、栃木・烏山城CC(6550ヤード、パー71)で行われ、23歳の勝みなみ(明治安田生命)が6バーディー、1ボギーの66で回り、通算14アンダーで…

勝みなみを支えた母の言葉とは

 女子ゴルフの国内メジャー・日本女子オープン最終ラウンド(R)が4日、栃木・烏山城CC(6550ヤード、パー71)で行われ、23歳の勝みなみ(明治安田生命)が6バーディー、1ボギーの66で回り、通算14アンダーで悲願のメジャー初優勝を達成した。ツアーを引っ張る黄金世代の代表格。アマチュア時代から何度も涙を流してきたが、54歳の母・久美さんにもらった“昭和の名台詞”に救われていた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 よく泣く。アマ時代の勝はそんな印象だった。高校3年だった2016年6月のニチレイレディス。単独首位でアマ2勝目に王手をかけて最終日を迎えたが、申ジエに逆転負けを喫した。悔し涙が止まらない。帰りの車中、母・久美さんの言葉に支えられた。

「涙は心の汗なのよ。もっとたっぷり流しなさい」

 1年後の最終プロテスト。まだ無名だった渋野日向子、新垣比菜と同組で回った。逸材の多い1998年度生まれの黄金世代。当時の世代筆頭は、15歳293日でツアー史上最年少優勝を果たした勝だった。最も注目を集め、“受かって当然”の重圧。第2日まで当落線上をさまよい、人には見られまいと帰りの車中でまた涙した。

 久美さんに励まされ、なんとか一発合格。「母がいるのは心強い」。囲み取材では「世界一、愛されるプレーヤーになりたい」と明るい笑顔でプロの抱負を語った。何度も取材していたが、勝の口から初めて聞いた言葉。「いつ頃からそう思うようになったのか」ときっかけを問うと、19歳は突如声を詰まらせ、ポロポロと泣き始めた。

「藍さんが引退されて……これからは私がやらなきゃって思って……」

 2か月前に宮里藍さんが引退を発表したばかり。勝たちは“藍ちゃんフィーバー”をきっかけにゴルフを始め、憧れた世代である。時代を築いたゴルフ界の顔。「藍さんにはなれないけど、藍さんに近い選手を目指していきたい」。次世代を引っ張る自覚と決意に満ちていた。

 プロ転向後もプレーオフに敗れると、涙が頬をつたった。仲のいい新垣のプロ初優勝でも感涙。悔しくて泣く、嬉しくて泣く。「心の汗」をたっぷりと流し、成長してきた。

久美さんに聞いた「涙は心の汗」の真意とは「昔、流行ったんです」

 極度の不振に陥った時期もあったが、今年5月に2年ぶりのツアー通算5勝目。日本一を決める今大会は圧勝し、強さを兼ね備えて完全復活を印象づけた。「勝ててほんっっとに嬉しいです!」。涙はない堂々とした優勝インタビュー。畑岡奈紗、原英莉花に続く3年連続となる黄金世代の栄冠だ。

 プロテストの時、「涙は心の汗」という言葉の真意を久美さんに聞いた。娘のプレーを横目に、陽気に歌いながら教えてくれた。

「『涙は心の汗だ~♪ たっぷり流してみようよ~♪』って歌ですよ。昔、流行ったんです。私は再放送で見ていて」

 調べてみると、1974年に放送された中村雅俊主演の青春学園ドラマ「われら青春!」の主題歌。作中に登場する「涙は心の汗だ!」の名台詞が話題を呼んだという。「いい歌でしょ? 知りません?」と笑う久美さん。平成生まれの記者にはわからなかったが、数えきれないほど汗をかいた愛娘は確かに強く成長している。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)