10月11日に迫るドラフト会議。昨年4球団から重複1位指名を受けた佐藤輝明(阪神)や早川隆久(楽天)ほどの圧倒的な大物…

 10月11日に迫るドラフト会議。昨年4球団から重複1位指名を受けた佐藤輝明(阪神)や早川隆久(楽天)ほどの圧倒的な大物は今のところ見当たらず、1位指名は各球団の補強ポイントによってバラけそうだ。

 今年のドラフト戦線は「投高打低」の傾向が強いものの、プロ側としては数少ない野手の逸材を確保したい思惑もある。それだけに、順位を繰り上げてでも野手を1位指名する球団が出てくるかもしれない。近年のドラフトで言えば、2019年の小深田大翔(楽天)、佐藤直樹(ソフトバンク)、2020年の渡部健人(西武)、井上朋也(ソフトバンク)などが好例だ。

 思いがけない1位指名選手の名前が挙がる可能性もあるだけに予想は難しいが、現段階で1位指名されそうなドラフト候補をピックアップしてみよう。



ドラフト1位候補の(写真左から)風間球打、小園健太、森木大智

 今年は高校生右腕と大学生左腕に有望株が多い。高校生は小園健太(市和歌山)、風間球打(ノースアジア大明桜)、森木大智(高知)の3人の右腕が中心になるだろう。

 とくにプロスカウトが高く評価するのは小園だ。身長185センチ、体重90キロと長身ながらコントロールがよく、精度の高いカットボールやツーシームなど変化球も巧みに扱う。打者のレベルや状況に応じて投球を自在に変えられるセンスは、最高峰の舞台でこそ発揮されるはずだ。

 今春の選抜高校野球大会(センバツ)では「ストレートの球威が物足りなかった」と言うスカウトの声もあったが、その点を伸びしろとポジティブにとらえる球団もあるだろう。重複1位指名が最有力視される存在なのは間違いない。

 風間は今春に一皮むけた姿を見せ、スカウト陣の評価がうなぎのぼりになった大器。今夏に最速157キロをマークした馬力に、真上から叩きつけるような縦の角度が大きな武器だ。変化球の投げ分けや精度に課題を残すものの、スケールの大きさは魅力。先発かリリーフか、投手としての適性をどう評価するかも注目ポイントだ。

 森木は中学3年時に軟式球で最速150キロを計測した、"元・スーパー中学生"。高校3年間では明徳義塾の高い壁に跳ね返され、甲子園出場はならなかったものの着実にレベルアップしている。打者に向かって加速する体感の快速球に、カーブ、スライダー、スプリットなどの変化球も質がいい。投手としての総合力は白眉だ。早熟に見られがちだが、現時点ではスキも多い素材型。本格開花するのはこれからだろう。

 大学生左腕なら隅田知一郎(西日本工業大)、佐藤隼輔(筑波大)が双璧だ。

 隅田は今春の大学選手権で強打の上武大を相手に8回14奪三振の快投で一躍ブレークした。今永昇太(DeNA)を彷彿とさせるタイプで、キレのいいストレートは空振りを奪える好球質。スライダー、カットボール、チェンジアップ、ツーシーム、スプリットとどの球種でも勝負できる点もアピール材料になる。

 佐藤は仙台高時代からドラフト候補に挙がる大器。スポーツ科学の最先端を走る筑波大で体をつくり、変化球をあえてスライダーとチェンジアップの2球種に絞って慎重に育成されてきた。リリーフ時の登板では150キロ前後の快速球を投じる反面、先発時は力をセーブして140キロ前後と球速が落ち、迫力に欠ける時期もあった。

 だが、今秋のリーグ開幕戦では先発時でも自己最速の152キロを計測するなど、快投を披露。途中で腹部を痛めて降板したものの、ドラフト直前にスカウト陣に潜在能力を見せつけた意味は大きい。

 以上の5投手は重複1位指名があっても不思議ではない。彼らに続く存在をカテゴリー別にピックアップしてみよう。

 高校生投手なら、達孝太(天理)も1位候補になる。身長193センチ、体重88キロの長身右腕で、ポテンシャルにかけては風間、小園、森木をもしのぐ。現時点での姿を論じても無意味に思えるほど将来性があり、自分の肉体や感覚と向き合えるクレバーさも持っている。あとは本人が強いMLB志向を公言している部分を各球団がどう受け止めるか。

 大学生投手は鈴木勇斗(創価大)、山下輝(法政大)の2名も1位指名をうかがう。

 鈴木は昨秋の横浜市長杯でブレークした速球派左腕。空振りが奪えるうえに、打者のバットを押し返す球威は今年のドラフト候補でもトップ級。今年に入って変化球の精度が向上しており、「創価大OBの八木智哉(元日本ハムほか)より上」という評価もある。ただ、今季に入って自慢の快速球が鳴りを潜めているのは少し気がかりだ。

 山下は直前でドラフトをかき回す可能性を秘めた大型サウスポー。木更津総合時代からドラフト候補に挙がったが、法政大では1年時にトミー・ジョン手術を受けて長いリハビリ生活を送った。今春のリーグ戦では今ひとつアピールに欠けたが、今夏はオープン戦で開花の兆しを見せた。「あの状態なら当然、12人(ドラフト1位)に入ってくる」と語るスカウトも複数いた。

 だが、8月下旬に寮内で新型コロナウイルスのクラスターが発生したため、活動自粛を余儀なくされた。法政大のリーグ戦初戦はドラフト2日前の10月9日にずれ込んだ。もし、山下がドラフト直前の登板で衝撃的な投球を見せたら、各球団のドラフト戦略は大きなパニックを起こすかもしれない。

 社会人投手の筆頭格は廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)。昨年から公式戦で頭ひとつ抜けたパフォーマンスを披露しており、即戦力度は随一。最速154キロの剛速球に、縦に割れるカーブ、ストレートの軌道から小さく曲がるスライダーと高い次元の変化球を操れる。技術に対する探究心も旺盛で、チーム内にいい刺激を与える可能性を秘めた存在だ。是が非でも即戦力投手を補強したい球団は、廣畑に触手を伸ばすに違いない。

 この数カ月でドラフト上位戦線に急浮上してきたのは、高卒3年目左腕の山田龍聖(JR東日本)だ。高岡商では甲子園に出場し、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)らを擁して春夏連覇した大阪桐蔭から11奪三振をマーク。侍ジャパンU−18代表にも選出されたホープだった。社会人では左ヒジ痛に悩まされたものの、回復した現在はイキのいいボールを投げている。気迫を前面に押し出し、ストレート中心に荒々しく投げ込む姿は夢がある。

 希少価値の高い野手は、とくにプロ側の需要が高い右の強打者に注目したい。なかでも正木智也(慶應義塾大)、ブライト健太(上武大)の大学生スラッガーは1位指名を受ける可能性がある。

 正木は今春のリーグ戦で4本塁打、大学選手権で2本塁打と結果を残してきた。ストライクゾーンからボールゾーンに曲がる変化球にピタッとバットが止まる選球眼も光り、甘いボールを逃さない集中力がある。やや遠回りする傾向があったスイング軌道が改善され、右方向にも本塁打が出るようになった。

 ブライトはレギュラーになったのは4年春からという遅咲きのロマン枠。今春の大学選手権では前出の隅田から特大アーチを放ち、度肝を抜いた。常人離れしたパワーに頼るのではなく、自分の間合いに呼び込む技術も持つ。細かな課題には目をつぶり、長所を評価してくれる球団でプレーできれば爆発的なパフォーマンスを見せてくれるかもしれない。

 正木もブライトも村上宗隆(ヤクルト)、安田尚憲(ロッテ)、清宮幸太郎(日本ハム)と同学年。あらためてスラッガー大豊作の学年だと再認識させられる。

 以上で12名の名前を挙げ終えたが、ほかにも有力なドラフト上位候補を挙げておこう。

 捕手では、プロでもディフェンス力を売りにできる古賀悠斗(中央大)が目を引く。課題だった打撃も今春はノーステップ打法を取り入れて改善し(現在は通常のステップに戻している)、リーグ戦で3本塁打を放った。

 右の強打者タイプでは、有薗直輝(千葉学芸)、吉野創士(昌平)、松川虎生(市和歌山)も魅力的な素材だ。

 有薗は高校通算70本塁打の長打力だけでなく、ケガに強い肉体と投手としても最速148キロを計測した強肩を武器にする。吉野は力感なくボールを運ぶスイングで飛距離を伸ばせる特長に、肉体的に成長の余地を残している点もプラス材料だ。松川は体重98キロの巨漢で、高校生離れしたパワーとバッテリーを組んでいた小園に絶えず気配り、目配りしていた内面も評価できる。

 最後に紹介したいのは、眠れる大器・阪口樂(岐阜第一)だ。昨夏の岐阜県独自大会で帝京大可児・加藤翼(現・中日)の149キロをライトスタンドに叩き込むなど、高校屈指のスラッガーとして2021年ドラフト戦線の先頭を走るかに思えた。だが、昨秋以降は公式戦で結果が出ない苦しい状況が続いている。それでも身長187センチ、体重90キロの巨体が打席で構える姿は、大谷翔平(エンゼルス)に重なる。その才能を信じる球団がサプライズ1位指名をする可能性はゼロではない。

 今回挙げた選手のなかにドラフト1位選手はいるのか、それとも意外な名前が呼ばれるのか。すべての答えは10月11日に出る。