メルセデスのルイス・ハミルトン(36)=英国=が26日のF1第15戦ロシアGPで雨を味方につけた見事な逆転優勝を飾り、史上初の通算100勝を達成した。つまり自身が持つF1最多勝記録を塗り替えたということにもなる。 勝利数の史上2位は7度の…

 メルセデスのルイス・ハミルトン(36)=英国=が26日のF1第15戦ロシアGPで雨を味方につけた見事な逆転優勝を飾り、史上初の通算100勝を達成した。つまり自身が持つF1最多勝記録を塗り替えたということにもなる。

 勝利数の史上2位は7度のタイトルを誇るミハエル・シューマッハー(ドイツ)の91勝。次いでセバスチャン・ベッテル(同)の53勝、アラン・プロスト(フランス)の51勝、アイルトン・セナ(ブラジル)の41勝と続く。

 

通算100勝目をマークしたメルセデスのルイス・ハミルトン(ダイムラー提供)

 

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 歴史の長いスポーツでは「GOAT」と呼ばれる表現がある。「The Greatest Of All Time」の略で「史上最高」を意味する。例えば、米NFLの名クオーターバッグだったペイトン・マニングやトム・ブレイディはこのように形容されることが多く、最近では大リーグで投打の二刀流を武器とするエンゼルスの大谷翔平を「GOAT」と「OHTANI」を組み合わせて「GOATANI」と称賛する米メディアもあった。

 さて、ハミルトンである。通算100勝の大台に乗せ、今季は歴代単独トップとなる8度目のタイトルがかかっているが、これまでの実績が「史上最高」の称号に値するものなのか、世界中のメディアから議論されている。

 特に指摘されていたのはライバル不在だった点だ。F1では2014年からエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドエンジンが採用され、ハミルトンが所属するメルセデスが製造者部門で目下、7連覇中。今季に入ってようやくレッドブル・ホンダが肩を並べるようになったが、それまではメルセデスが高性能なパワーユニットを武器に長らく1強状態を続けていた。

 

 しかもF1の年間開催数は2016年に初めて20戦の大台に乗るなど増加の一途をたどっており、今季は史上最多の計22戦を予定している。

 

ゴールの瞬間には100勝を示すボードも出される(ダイムラー提供)

 

 

 セナ、プロストが活躍した1980~90年代は年間16戦制で、シューマッハーの全盛期も16、17戦が中心。圧倒的にレースの機会が少なかった。ちなみにF1草創期の1950年代は年間8、9戦で争われていた。だから、ハミルトンはシーズン中のレース数が多いのだから勝ち星も多くて当然だろうという色眼鏡で見られてしまうきらいがあるのだ。

 実際に歴代チャンピオン別の勝率をみると、ハミルトンは281戦中100勝で「.356」。好成績を収めているものの、歴代では3位に相当する。最高勝率は1950年代のF1草創期に活躍し、4連覇を含む5度のタイトルを獲得したファン・マヌエル・ファンジオ(アルゼンチン)で「.471」。歴代2位はファンジオと同時代に活躍し、52、53年と連覇したアルベルト・アスカリ(イタリア)の「.406」だ。

 ちなみに4位は1960年代のF1シーンを彩ったタイトル2度のジム・クラーク(英国)で「.342」。5位はシューマッハーの「.296」。参考までに、ハミルトンと今季のタイトルを争うレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(オランダ)を調べると134戦中17戦で「.127」。やはり負けが込んでいる。

 英紙インディペンデント(電子版)もハミルトンの通算100勝に合わせ、「ハミルトンはシューマッハーやファンジオとどれだけ比較できるか」と題した記事を掲載した。

 シューマッハーについては「脂が乗っていた時期はデーモン・ヒル、ミカ・ハッキネン、ジャック・ビルヌーブと激しいタイトルバトルをしていた」としたほか、ファンジオを「時代がまったく異なる。実働7シーズンで勝利数、ポール獲得数は少ないが、目立たないながらも勝率は秀でている」とも紹介。今回の100勝目到達を祝しながらも先人との比較が難しい点を指摘した。

 レース数が多くなったという点では年間試合数が増えて達成しやすくなったプロ野球の通算2000安打に似ているところがある。それでもハミルトンがF1史に残る金字塔を打ち立てたのは紛れもない事実。素直に称えたい。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)


 

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