9.25ガンバレ☆プロレス後楽園大会で新井健一郎とのタッグ“ハッとしてgood”が持つIJタッグ王座の防衛戦を行う翔太。最近、彼は「欲が出てきた」と話す。それは一体なぜか...(3)はプロレスに対する考え方。 …

9.25ガンバレ☆プロレス後楽園大会で新井健一郎とのタッグ“ハッとしてgood”が持つIJタッグ王座の防衛戦を行う翔太。最近、彼は「欲が出てきた」と話す。それは一体なぜか...(3)はプロレスに対する考え方。

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<(2)はこちら>

――ところで世界中のプロレスに精通している翔太さんがリスペクトするレスラーは、やはりエディ・ゲレロですか?

翔太:1番はエディ・ゲレロです。WWEネットワークにあるエディの試合は全部観ています。メチャクチャ検索して、ほぼ観ていると思います。もちろんECW時代の試合もいくつか上がっているので見ているし、6人タッグだと見てないものもあるかも知れないけどWCWの主要な試合はほとんど見ていると思いますね。

――翔太さんは新井健一郎(=アラケン)さんとタッグを組んでいることもあり職人のイメージが強いですが、「こうなりたい」とか「こう見せたい」とか目指している形はありますか?

翔太:やっぱり「エディになりたい」と思っていますけど、やればやるほど「エディになれないな」と実感します。中学・高校の頃に見ていたWWEの試合を今観るとレスラー目線でエディは驚異的です。勉強していく中、アメリカで2週間だけ元WCWのグレイシアが行うレスリングセミナーに行きました。

座学で英語だったので、なかなか理解するのが難しく大変だったけれど(苦笑)。ここでアメリカンプロレス(=アメプロ)のベースとなるマインドみたいなものを教わったんですよ。当時僕はデビュー10年目、そこで10年間疑問に思っていたことがきれい晴れていきましたね。

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それまで日本のプロレスとWWEのプロレスの違いが分からなくて「なんでWWEみたいに出来ないんだ」とずっと考えていました。WWEネットワークで過去のNWAやWCWのプロレスを観ても「どうも日本のプロレスとアメプロは違う」と。では一体何が違うのだろう...

日本のプロレスを観て自分のプロレスを観て、それを日本のレスラーに話しても理解してもらえない。長い期間「何が違うんだ...」と考えていましたが、そのセミナーで教えてくれたマインドの話で「ハァ!」と僕に気づきを与えてくれました。

――それは具体的には何ですか?

翔太:企業秘密です(笑)。

――とにかくそこで大きなヒントをもらえたということですね。

翔太:自分のプロレス観がメチャクチャ変わりました。それが自分の体に染み込むまで約1年かかりましたね。ガンプロ入って自分なりに調整していたと思います。今振り返ると1年かけて形になった。

――自分の理想とするプロレスの到達点に向けていろんなことを勉強されていますね。そんな翔太さんを見ているとユーテリティプレイヤーとして重宝され縁の下の力持ち的な役割が多くなっているように感じることがあります。

翔太:僕自身はそういうのを考えてやっているつもりはないけど、振り返れば自分の動きが自然にそういう方向に行くこともあるのだなと思います。でも自分自身は2020年の後半、KO-D6人タッグとインディージュニアを獲得、そして上野勇希が持っていたDDTUNIVERSALのベルトに挑戦した。

あの期間でよりレスラーとしての欲が増したというか、後楽園のメインイベントでシングルのタイトルマッチを行うことやガンプロのメインでタイトルマッチをやることが、やはりいいものだと思ったんですよ。それまであまり経験してこなかったことなので。

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――メインのリングの責任感や重圧は違いますか。

翔太:2021年1月9日の上野とのDDT UNIVERSAL戦、僕のレスラー人生で味わったことのない責任感や重圧を後楽園ホールのメインで初めて感じました。煽りVTRもあって「後楽園、これは俺と上野にかかっているんだ」と、あの時に初めて思いましたね。板橋グリーンホールの朱崇花さんやミスモンゴルさんのインディージュニアのタイトル戦も「やってやる!見てろよ、俺が絶対に締めてやる!」というポジティブな気持ちでいます。基本的に緊張しない。でも後楽園の時、初めてプレッシャーを感じました。ただそれが心地良かった。

だから大きな舞台でのタイトルマッチや今度ガンプロでやる天龍プロジェクトのIJタッグタイトル戦はありますけど、今でもそういう機会を逃したくない!という気持ちはすごく強いです。シングルでメインを張る、あの緊張感と高揚感・プレッシャーというのはやっぱり病みつきになる。「今のポジションでいいや」と思うことはないですね。

――上野選手とのDDTUNIVERSAL戦のお話がでましたが、あの試合は2020年12月27日後楽園で翔太さん・彰人選手・平田一喜選手が持つKO-D6人タッグベルトに勝俣瞬馬選手・MAO選手・上野勇希選手が挑戦しました。結果は翔太さんが上野選手から雁之助クラッチでフォールを取りました。試合後の翔太さんのマイクがカッコ良かったですね。

「俺の野望はスーツケースにコスチューム入れて、パスポート片手に世界中を回ることだ。世界中を回るには、もちろんもっとオファーされるためには知名度を上げないといけない!DDT UNIVERSALのベルト、それを獲ることで俺の世界中を回るプロレスラーになるという夢に一歩二歩近付く、さぁどうだ、リベンジしたいんだったら、そのベルトを懸けてシングルマッチ、やらせてもらえないかな?」とあの言葉にグッときました。

コロナ禍で声が出せない中、会場のお客さんの拍手の大きさで試合に対する期待感を感じました。

翔太:それは嬉しいです。

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――翔太さんは技の入り方のパターンが多く、観ているファンを驚かせてくれますよね。

翔太:プロレスの美学は引き算です。でもどこかで僕は足し算になった。10年以上、ずっと僕は引き算をしていた。やっぱりWWEのプロレスは引き算で洗練されたもの。要は選手1人1人手札がいっぱいあるわけじゃなくてジョン・シナと言えば「アティテュード・アジャストメント」があって「STF」がある。それらの技を繋げて勝利に持っていくパターンがあるんですけど、僕はちょっとそれを止めて逆にパターンを増やした。去年の9月か10月ぐらいから、とにかく手札を増やしました。それが僕のスタイルだろうと思って。

実はその少し前、2019年から2020年前半に勝った僕の試合結果を見ると、意外に同じ技で勝っているのはメチャクチャ少ない。その頃から僕は「勝てる技を増やす」というのを考えていた。なぜかというと「一撃必殺で倒せるような技が僕にはない」と気づいたんです。

実は雁之助クラッチもカウント2で返されていることがある。それは僕が試合の中盤で雁之助クラッチを出して意図的にカウント2で返させている。するとお客さんと対戦相手に雁之助クラッチの印象が残る。それは最後に「別の技」でフォールを取るため。試合結果だけを見ると毎回別の技で勝っている。そうすると僕は一撃必殺じゃなくて「何で勝つかわからない男」になるのです。

――現在のプロレスは選手ごとに一撃必殺の技があります。今の話を聞いていると藤波辰爾選手が思い浮かびました。

翔太:藤波さんは何の技で勝つか分からなかったですよね。回転エビ固めや逆さ押さえ込み、ドラゴンスープレックスもあった。

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――翔太さんのプロレスは藤波さんと通じるものを感じます。

翔太:僕も「何で勝つか分からない」を狙っています。だからフォールを取れる技を増やしました。カウント3を取ってもおかしくない技や関節技をいろいろ試してみる。「この技、普段使ってなかったけど試してみよう」と。キャリア15年近くにしてようやくですが(笑)

新人の頃はアメプロが好きすぎて、とにかく技を削った。「一撃必殺こそ正義だ!引き算こそ正義だ!」だと...でも当時やり過ぎた(苦笑)。今こそ選択肢を増やして増やして増やして、ここだという時にフォールを取れればいいと思った。DDT UNIVERSALに挑戦した時やインディージュニアのタイトルを持っていた2020年後半から今年の1,2月辺り本当にそれが自分の体にしっくりきたタイミングだったと思います。

――だから翔太さんのプロレスはワクワクするんですね。「えっ、ここからその技に持っていくのか!」とか「まさかその入り方でフォールの体勢までいくのか!」と。

翔太:それは結構考えています。一つの技で入り方を2パターン3パターンぐらい作っておくと対戦相手にどんな攻め方をされても常に選択肢がある状態なので困ることがなくなります。僕は体格と身体能力に恵まれなかったから、そこを補うためには人と違うことをやるしかないんです。

<(4)に続く>

<インフォメーション>
9.25東京・後楽園ホールにて「BAD COMMUNICATION-ULTRA Pleasure Style 2021-」が行われます。“ハッとしてgood”翔太&新井健一郎組が持つIJタッグ王座に新納刃&冨永真一郎組が挑戦。翔太組はタイトルを守り無事天龍プロジェクトにベルトを持ち帰ることができるのか。

チケット等、詳細はDDTプロレスリング公式サイトをご覧ください
また試合は動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで生配信されます。

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取材・文/大楽聡詞
写真提供/DDTプロレスリング