9月19日にさいたまスーパーアリーナで行われた格闘技イベント「Yogibo presents RIZIN.30」。RIZINバンタム級トーナメント2回戦など10試合が行われた。現地でこの熱戦を全力応援した元PRIDE戦士の大山峻護さんに、…

 9月19日にさいたまスーパーアリーナで行われた格闘技イベント「Yogibo presents RIZIN.30」。RIZINバンタム級トーナメント2回戦など10試合が行われた。

現地でこの熱戦を全力応援した元PRIDE戦士の大山峻護さんに、元総合格闘家から見た勝負の分かれ目や、年末に行われるバンタム級トーナメント準決勝の見どころを聞いた。

 

大山峻護さん

 

・今すぐ読みたい→
『生きる格闘文化財』 総合格闘技 堀口恭司 特集 https://cocokara-next.com/feature_archive/kyojihoriguchi-feature/

○朝倉海 vs アラン・ヒロ・ヤマニハ● 3R 判定(3-0)

 

ヤマニハ選手はフィジカルが強くて冷静でしたね。普通の選手だったら、朝倉選手の打撃でそのまま押し切られてしまいますが、ヤマニハ選手は倒れなかった。朝倉選手にとっても、ヤマニハ選手のタフさは想像を越えてしまっていたと思います。1Rのラッシュで倒せると思っていたけど、倒れなかった。朝倉選手は今まで日本人選手と戦うことが多かったので、フィジカルの力が全然違う外国人選手と戦うことはすごくいい経験になったと思います。

ヤマニハ選手は打撃も良くて結構ヒットを与えていましたが、ギリギリの中でも自分の距離感で最後まで戦えたことが朝倉選手の勝因。戦況に応じて戦い方を変えられたことも強い選手ならでは。どんな状況でも勝ち切れるというのがスターの証なので、さすが朝倉選手でした。次回の試合はこの経験を生かし、さらに強くなった姿を見せてくれると思います。

○井上直樹 vs 金太郎● 3R 判定(3-0)

緊張感のある素晴らしい試合でした。最初、井上選手の動きを見てバケモノ級だなと身震いしました。凄まじい格闘技のセンスの持ち主。動体視力が良くてバックステップが速く、距離の取り方も天性のものがあるので、まともに打撃を食らわない。しかも、思うような展開にならなくても、戦略を遂行し切れる冷静さ、クレバーさをあの若さで兼ね備えています。

一方の金太郎選手はすごくタフな選手。覚悟を持って挑んでいて、多くの修羅場を乗り切ってきただけあります。井上選手のカーフキックが効いていたはずですが、3Rまで攻め続ける根性は心を揺さぶりますね。ここ最近の井上選手では、一番苦戦を強いられたのではないでしょうか。どれだけ圧をかけても折れない金太郎選手のような相手と対戦したことで、井上選手の経験値は上がりました。底知れぬセンスと能力を持っているので、さらに強くなりますね。

 

○扇久保博正 vs 大塚隆史● 3R 判定(3-0)

2人とも総合力に長けた実力者で経験も豊富。両者同じタイプで、お互いにとって一番やりにくい相手だったと思います。一見地味な攻防に見えますが、目に見えない細かなところでフェイントを掛け合うなど、究極のつばぜり合いで、玄人好みの試合でしたね。打撃で押した扇久保選手が接戦を制しましたが、フルラウンドで削り合った上でこのような試合を勝ち切れたというのは、さすがだなと思いますね。準決勝でも若い選手達相手に熟練の技術を見せて欲しいです。

●元谷友貴 vs 瀧澤謙太○ 1R 2分27秒 TKO

瀧澤選手は新しいタイプのスターになるオーラを感じました。今回の試合は、前回から構えを変えてきたことが勝因の一つではないでしょうか。今まではテイクダウンを恐れて腰を落として戦っていましたけれど、それは瀧澤選手本来の構えではなかったんですよ。前回の試合で消極的だと賛否両論あって、いい意味で開き直ったんでしょうね。本来の構えに戻しました。伸び上がるような打撃が瀧澤選手の持ち味なので、今回のように本来の姿で自信を持って戦って欲しいです。元谷選手を倒し切るなんて本当の実力がないとできないことなので、トーナメントのダークホースになる存在だと思います。

久保選手の対応力と女子格闘技に注目

 

 

太田忍選手と久保優太選手の一戦は判定で太田選手が勝利しましたが、久保選手はMMA初参戦とは思えない、MMAのセンスを感じました。足の使い方や体の使い方が上手いので、太田選手でも仕留め切れなかった。久保選手はこれから戦うたびに強くなって素晴らしいMMAファイターになると思うので、とても楽しみです!勝者の太田選手はさすがのフィジカル、テクニックでした。テイクダウンに持っていく駆け引きやタイミング、距離感は王者の風格でしたね。太田選手はこれがMMA初勝利なので、これからもっとのびのびと戦えると思います。

昇侍選手と鈴木千裕選手はどちらもエンターテイナーで、入場から会場を沸かせてくれました。38歳と22歳のマッチアップでしたが、昇侍選手が1R20秒でTKO勝ち。多くの悔しい思いをして乗り越えてきた昇侍選手が、諦めないで勝利を掴み取る姿に心を打たれました。

浜崎朱加選と藤野恵実選手の女王対決も素晴らしかったですね。浜崎選手が判定勝ちとなりましたが、お互い切磋琢磨しながら女子格闘技を引っ張ってきた存在。お客さんがいなくてガラガラだった会場から、さいたまスーパーアリーナの舞台まで女子格闘技を引き上げてきました。感慨深いでしょうね。頑張れば報われるということを体現してくれたように感じました。第一試合で行われた「○ぱんちゃん璃奈vs百花●(判定)」のように、華や勢いのある若手選手も出てきているので、女子格闘技にますます注目ですね。

スポーツの力を実感した嫉妬するほど素晴らしい大会

全体を通して、格闘技って素晴らしいなと改めて思わせてくれた大会でした。実力が均衡したいいマッチメイクでしたね。エンターテイメント性もあり、すごくワクワクさせてもらいました。

僕は現役を引退して7年経ちますが、久しぶりに選手達に嫉妬しました。すごくキラキラ、ギラギラと輝いていて、羨ましかったです。このコロナ禍ですが、勇気を与えられるのがスポーツの力。それができるのって限られた人しかいないので、この場に立てている選手は羨ましいなって、久しぶりにジェラシーが湧いてきました。みんな輝いていて、悔しいけどありがとうって心の底から思いました。そのくらい、素晴らしい大会でした。

年末に行われるバンタム級トーナメントは、泥臭く勝ち上がってきた扇久保選手、新しい感性の持ち主の瀧澤選手、これからの格闘技界を引っ張っていく井上選手、今の時代を作っている朝倉選手による、プライドをかけた果し合いになります。猛者がひしめくバンタム級で頂点に立つ選手は誰なのか、今から楽しみです。

 

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

・今すぐ読みたい→
『生きる格闘文化財』 総合格闘技 堀口恭司 特集 ​https://cocokara-next.com/feature_archive/kyojihoriguchi-feature/

大山峻護(おおやま・しゅんご)

5歳で柔道を始め、全日本学生体重別選手権準優勝、世界学生選手権出場、全日本実業団個人選手権優勝という実績を持つ。2001年、プロの総合格闘家としてデビュー。同年、PRIDEに、2004年にはK-1・HERO‘Sにも参戦。2012年ロードFC初代ミドル級王座獲得。現在は、企業や学校を訪問し、トレーニング指導や講演活動を行なっている。著書に「科学的に証明された心が強くなる ストレッチ」(アスコム)。ビジネスマンのメンタルタフネスを高めていくための本「ビジネスエリートがやっているファイトネス~体と心を一気に整える方法~」(あさ出版)を出版。

大山峻護さんInstagram
https://www.instagram.com/shungooyama/
オンライン家庭教師 with アスリート
http://virus-busters.spo-sta.com/
ファイトネス
http://shungooyama.spo-sta.com/