ステップ・アップ・ツアー山陽新聞レディース 女子ゴルフの下部ツアーに相当する「ステップ・アップ・ツアー」の山陽新聞レディース最終ラウンド(R)が19日、岡山・東児が丘マリンヒルズGC(6367ヤード、パー72)で行われた。単独首位スタートの…

ステップ・アップ・ツアー山陽新聞レディース

 女子ゴルフの下部ツアーに相当する「ステップ・アップ・ツアー」の山陽新聞レディース最終ラウンド(R)が19日、岡山・東児が丘マリンヒルズGC(6367ヤード、パー72)で行われた。単独首位スタートの19歳・岩井明愛(あきえ)は6バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの70で回り、通算8アンダー。2位に1打差で初優勝を飾った。同ツアーの前戦・カストロールレディース(1~3日)では、双子の妹・千怜(ちさと)が初優勝。レギュラーツアーも含め、国内では史上初の姉妹2試合連続優勝の快挙を成し遂げた。この日、千怜は5オーバーで54位だった。

 最終18番パー5。第2打をグリーン右の池に入れた明愛が、おもむろに右足の靴と靴下を脱いだ。無観客試合で見守る関係者が、「えっ」と声を上げる中、アドレスに入った。2位に3打差で1打罰を払って打てば、優勝がより近くなる状況下、水面から10センチ下のボールに向けてクラブを振り下ろした。瞬間、本人が見失ったボールはわずかに前に飛んで、再び池の中へ。ここで明愛が明るく言った。

「もう1回打ちま~す」

 今度は深さ3センチ程度だったが、明愛は迷わず第4打を放ち、ボールをグリーン奥に運び出した。2位のアマチュア永嶋花音はバーディーチャンスにつけ、見守る妹・千怜の表情は硬いままだが、明愛は笑顔を絶やずにプレーを続けた。そして、永嶋がパーでホールアウト。明愛はダブルボギーでプレーを終えて、1打差で下部ツアーながらプロ初優勝を飾った。

 決まった瞬間、明愛はかすかに微笑んだ。ガッツポーズはなく、千怜から「おめでとう。(最終ホールの)2打目が難しかったね」と声を掛けられると、「難しかった。でも、良かったよ」と返した。そして、優勝インタビューで最終18番のウォーターについて問われると、改めて見守る関係者を驚かせた。

「私も初めてだったので、どこに行くか分からなかったですが、チャレンジしました。前半はバーディーが来て、後半はショットが乱れる中、(16番パー4で)チップインバーディーもあったりで、18番で(2位に)3打差あったので安心してできました。でも、緊張しました」

母は「明愛らしい」、父は「感覚を大事にする強気のスタイル」

 コロナ禍の無観客試合でコース内に家族の姿もなかったが、遠征に同行している母・恵美子さんは、後で状況を知り、「見ている人はドキドキですけど、明愛らしいです」と言った。「とにかく攻める」が、明愛のプレー信条だからだ。父・雄士さんも「明愛は感覚を大事にする強気のスタイル」と話してきた。

 その「感覚」も生かして手にした1打差優勝。ステップ・アップ・ツアーの前戦では、単独首位に立ちながら、最終日に伸ばせず、優勝カップは千怜の手に渡った。幼少期から常に競い合い、小学校の持久走大会でも6年間1、2位を分け合ってきたが、その「ライバル関係」はプロになっても続いていることを示してみせた。

 ただ、岩井姉妹の目標は「ツアーで優勝争いをして、将来は海外メジャーを一緒に戦うこと」だ。優勝インタビューで「ツインズ優勝、素晴らしいですね」と振られ、「はい」と笑顔を輝かせたが、今後に向けて問われると、表情を引き締めて言った。

「こういう経験は今後も生きていくと思います。レギュラーツアーでも優勝できるように頑張ります」

 恵まれたフィジカルで、軽く振ってもドライバーショットの飛距離は250ヤード以上、切れるアイアン、強気なプレースタイル。この日は16番でピンチ一転、20ヤードのチップインバーディーを決める勝負強さも見せた。この優勝で千怜とともに、明愛は、2022年ツアー予選会(QT)の1次を免除されて、最終QTからの出場となった。驚異の岩井ツインズ。2人は着々と女子ゴルフ界のセンターに近づいている。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉/ Michinari Yanagida)