立浪和義インタビュー 前編セ・リーグ優勝争いと古巣・中日の現状 2021年のプロ野球も終盤戦に入り、セ・リーグは阪神、ヤ…
立浪和義インタビュー 前編
セ・リーグ優勝争いと古巣・中日の現状
2021年のプロ野球も終盤戦に入り、セ・リーグは阪神、ヤクルト、巨人がリーグ優勝を争っている。そこから抜け出し、クライマックスシリーズを首位で迎えられるのはどのチームになるのか。
現在は解説者として活躍する「ミスタードラゴンズ」立浪和義に、3チームの戦力分析と、そこから大きく離されてしまった古巣・中日について聞いた。

セ・リーグ首位を争う3チームの、巨人・菅野、阪神・西、ヤクルト・村上
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――現在セ・リーグは、阪神、ヤクルト、巨人による首位攻防が激化しています。まずは、首位の阪神の印象から聞かせていただけますか?
「先発投手の調子がイマイチでしたが、西(勇輝)投手がようやく通算100勝を達成(シーズン成績は5勝9敗)し、秋山(拓巳)投手も10勝目を挙げるなど、明るい兆しが見えてきた感じがします。
前半戦からリリーフ陣は踏ん張っていて、打線も好調だったので安定した戦いができていた。昨年はなかなか得点がとれなかったのが、佐藤(輝明)選手の加入と外国人バッターの活躍でつながりが生まれましたね。その佐藤選手が調子を落とし、二軍に落ちた今後がどうなるか注目です」
――最後まで首位を守るために、重要になりそうなのは?
「単純なミスを失くすことでしょう。阪神はどうしても、エラーがらみで失点してしまうことが目立ちますから(エラー数はリーグワーストの73個)。勝てるはずの試合を落とすことが続いたりすると、優勝争いは苦しくなります」
―― 一時は首位に立つも、6連敗もあって順位を落とした巨人はいかがでしょうか。
「エースの菅野(智之)投手が、打ち込まれることもありながらなんとか復活してきたことは、首位の阪神に追いつく、そこから突き放していくための好材料です。
あとは何よりも、ここ数年は必ず優勝争いに絡んで、2年連続でリーグ優勝を果たしている経験値が大きい。今年は東京五輪で中断もありましたが、優勝を争っているなかでの残り約30試合は選手にとってすごくキツいんです。そんな終盤戦で力を出しきれる選手が揃っているのは、巨人のような気がします」
――日本ハムから加入した、中田翔選手についてはどう見ていますか?
「あれだけバットを振れる選手が加入したことは、戦力的にプラスであることは間違いありません。ホームランが出やすい東京ドームが本拠地になったので、他球団のピッチャーからすると脅威でしょう。
ただ、今シーズンは日本ハムの時から打率が1割台で、巨人に移ってからも調子が上がらずに二軍に落ちてしまった。移籍の経緯も特殊で、巨人という伝統のある球団ですし、『結果を出さないと』という気持ちが強すぎて力が入ってしまったのかもしれないですね」
――具体的に、バッティング不調の原因はどこにあると感じますか?
「これは私個人の印象ですが、構えたところから左足を上げて、軸足に体重が乗った状態でタイミングを取りたいところなんですけど、そこから頭の位置が投手側に倒れ、かつホームベース側に寄ってしまう傾向があるように見えました。そのためバットがスムーズに出ず、打てるはずのボールがファールになったり、詰まったりする原因になっているんじゃないかと。
もともと持っている能力は、今季の成績どおりではないはず。ファーストの守備ではグラブ捌きも柔らかく、ハーフバウンドもうまく捕球していました。二軍で調子を上げて一軍に戻れたら、土壇場での大きな力になるでしょう」
――ヤクルトに関してはいかがですか?
「少し打線が下降気味なようにも感じますが、一番の塩見(泰隆)選手が台頭し、二番の青木(宣親)選手、三番の山田(哲人)選手、四番の村上(宗隆)選手へと続く流れはやはり強力。今シーズンはキャッチャーの中村(悠平)選手も打撃の調子がよく、(ホセ・)オスナ選手、(ドミンゴ・)サンタナ選手の両外国人も機能して得点能力がすごく高いです。代打に、左の川端(慎吾)選手、右の内川(聖一)選手という最高の2人が控えているのも心強いですね」
――投手力に関してはいかがですか? ここ数年、4点台後半と苦しんでいたチーム防御率が今季は3.61(9月16日時点)と改善しています。
「先発陣は、小川(泰弘)投手をはじめ、高橋(奎二)投手、奥川(恭伸)投手などが頑張っていますが、長いイニングを投げられる投手が少ないことが気がかりです。開幕直前にトレードで巨人から加入した田口(麗斗)投手を中継ぎに回すなど強化を図っているものの、リードを守れないことも多いですね。
やはり打線は好不調の波がありますから、もっとも大事なのは投手力。そこが改善され、打線がまたつながりだしたら勢いに乗れると思います」
――総合すると、終盤戦を優位に進めそうなのはどの球団になりそうですか?
「投打のチーム状況のバランスを見ると、やはり巨人になるのかな、という印象です。投手陣は、守護神の(チアゴ・)ビエイラ投手の離脱は痛いものの、先発陣は菅野投手の他にも髙橋(優貴)投手、戸郷(翔征)投手、(C.C.)メルセデス投手など、誰かの不調をカバーできる枚数が揃っています。
打撃面は代打陣まで層が厚く、たとえば試合終盤に競った展開になって下位打線から始まる回でも、亀井(善行)選手、中島(宏之)選手など上位打線のような代打攻勢ができる。打線ではヤクルトも負けていませんが、投手力も考えると巨人が優勢になりますね」
――ちなみに、その3強から大きく離されてしまった、立浪さんの古巣である中日の戦いについてはどう見ていますか?
「なんといっても課題は打線。打点は四番の(ダヤン・)ビシエド選手頼みで、大島(洋平)選手を三番で起用せざるを得ないなど、明らかにクリーンナップの枚数が足りていません。
打ってもらわないといけない選手が、軒並み調子を落としているとなるとやはり苦しいですよ。高橋(周平)選手、阿部(寿樹)、平田(良介)選手もそう。それらの選手が"普通"にやっていれば、ペナントレースも違った展開になっていたでしょう」
―― 一方、チーム防御率は断トツのリーグトップです。
「それも、広いバンテリンドームの恩恵を受けた形になっていて、他の球場では失点の確率がぐっと高くなるイメージがあります。上位を狙うチームになるには、そこも改善していかないといけません。
柳(裕也)投手などが一本立ちしたなかで、小笠原(慎之介)投手、福谷(浩司)投手も貯金が作れていませんし、投手の駒が揃っているようで揃っていない。シーズンを戦い抜ける"一人前"の投手がもっと台頭してきてほしいですね」
(後編:「守備は私より格段に上」の新人と阪神・佐藤輝明のスランプ>>