9月14日と15日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16の結果、東地区では韓国の3チームがベスト8…
9月14日と15日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16の結果、東地区では韓国の3チームがベスト8入り。日本から残ったのは大邱(テグ)FCを破った名古屋グランパスのみとなった。
長居球技場(ヨドコウ桜スタジアム)でのセレッソ大阪対浦項(ポハン)スティーラーズの試合は、前後半でまったく様相の異なる試合となった。
立ち上がりから積極的に仕掛けたのは浦項。右サイドのパラシオスのスピードを生かしたドリブル突破と、左サイドでのサイドハーフの姜祥佑(カンサンウ)とそれを追い越していく金侖成(キムリュンソン)のコンビネーションによってサイドを攻略。そして、ピッチ中央ではアンカーの申光勳(シングアンフン)ともう一人のMF申嗔浩(シンジンホ)が巧みにボールを裁く。ワンタッチパスやヒールパスも多用していたから、テクニックにはかなりの自信を持っているのだろう。
これに対して、かなりC大阪は引き気味だった。最終ラインとMFのラインが10~20メートルとコンパクトなのは良いが、浦項はここにもプレッシャーをかけてきた。
■狙われたボランチと後半の逆襲策
C大阪は、ボールを奪ってからも変化がなかった。そのため、浦項にとってはC大阪の攻め手を読むことができるようになってしまった。C大阪のMF4人のラインにもプレッシャーをかけてきたのだ。
そして、C大阪がボールを奪ってから必ずと言っていいほど低い位置にいるボランチ(原川力と藤田直之)にパスを付けるので、浦項は途中からMFを完全に逆三角形にしてマルコ・クヴェシッチと申嗔浩の2枚で原口と藤田に圧力をかけてきた。この結果、C大阪は危険な位置で何度もパスカットを狙われ、34分には鳥海晃司から藤田へのパスを申嗔浩にカットされ、一気にゴール前まで迫られるピンチも生まれた。
相手のボランチに対するマークをどうやってはがすかが、大きなテーマのはずだったが、前半のうちはとくに何かを工夫したようには見えなかった。
C大阪は25分にCKからつながれて、1トップの李勝模(イスンモ)に決められて先制されたが、前半だけを見ていたら「1点ですんで良かった」としか言いようがない展開だった。C大阪の攻め手は、ボールがたまたま乾貴士に行った時に彼のアイデアとテクニックを生かした攻撃が見られるくらいだった。
ところが、後半に入ると形勢は逆転C大阪が攻め続ける展開となった。
狙われていたボランチ2人のうち藤田が下がってDFラインの間に入り、両サイドバックが高い位置に進出。とくに左サイドの丸橋祐輔はインナーラップをしかけて、バイタルエリアや相手ペナルティーエリア内まで積極的に進出し、右サイドの松田は主にタッチラインに沿ったオーバーラップを仕掛け、浦項の守備を混乱させた。
そして、完全に相手を押しこんだ後、大久保嘉人や若い西川潤など点が取れる選手を次々と投入したものの、アディショナルタイム3分も含めて最後まで得点は生まれず、前半の1点を守り切った浦港が競り勝つことになった。
■苦戦の原因は試合への入り方
ラウンド16での日韓対決は、最初にも書いたように1勝1分1敗だった。そして、グループステージでの日韓対決はガンバ大阪が全北現代に敗れただけで3勝2分1敗と日本側が勝ち越していた。
しかし、肝心のノックアウト・ステージに入ると、準々決勝進出を決めたのは韓国の方が多かったのだ。力は互角(あるいはそれ以上のはず)なのに、何故勝ち抜けないのだろうか?
一つの原因は、ゲームの入り方の拙さなのではないだろうか。
名古屋は楽に勝てるゲームだったのに、前半のうちに守備が乱れて2失点してしまったし、C大阪は前半はあらゆる局面で劣勢に立ち、一方的に攻め込まれてしまう(もし、乾がいなかったら、さらに押し込まれたことだろう)。
前半のキックオフとともに相手を圧倒して、早い時間帯に先制することができれば、主導権を持ってゲームを進めることができる。ところが、日本チームは「大事に入る」と言えば聞こえはいいが、相手の積極的なサッカーに対して受けに入ることが多くなってしまうのだ。
そして、試合の途中でゲームのやり方を変化させることが下手なことも指摘できるだろう。
C大阪は、後半に入ると見違えるような攻撃的な姿勢を見せて猛攻をかけた。両サイドバックが高い位置を取ったことが最大の変化だったし、前半インターセプトを狙われていた原口と藤田のところを修正して、藤田が最終ラインに落ちることで落ち着いてボール回しを行うこともできた。
後半に入ってやり方を変えて主導権を取り戻したのだから「見事」と言っていいのかもしれない。だが、それなら、「前半のうちに、ハーフタイムを待たずに試合のやり方を修正することは出来なかったのか」という疑問が生じる。
たとえば、インターセプトを狙われていた藤田は、自分の判断、あるいはべンチの指示で、ポジションを変えることができなかったのだろうか? あるいは、ボランチへ出すパスのパス・スピードをもっと速くすることだってできたはずだ。
■韓国から学ぶべきこと
韓国チームの方は、そのあたりは臨機応変に戦うことができていた。たとえば、その原口と藤田へのプレスのかけ方がそうだ。
前半の立ち上がりの浦項の中盤は申光勳をアンカーにして申嗔浩とマリオ・クヴェシッチが2列目の4-3-3が基本で、もしくは2人の申がボランチでクヴェシッチをトップ下に上げる4-2-3-1も併用していたが、1点を先制した直後あたりからクヴェシッチと申嗔浩が前目に位置して原口、藤田との間合を詰めてボールを奪いに来たのだ。
試合前にそうしたやり方もオプションとして持っていたのかもしれないし、あるいは試合の流れを見て急遽判断したのかもしれない。だが、いずれにしても彼らは試合の途中で相手の弱点を見て、戦い方を変えたのである。
ACLのラウンド16では日本勢は不本意な結果に終わった。
だが、決勝トーナメントの初戦で苦戦するのはACLだけではない。たとえば、ロシア・ワールドカップの決勝トーナメント初戦(ラウンド16)ではベルギーに2点を先行しながら逆転されたし、日本代表が出場する多くの大会(男女各カテゴリーのワールドカップを含む)でも、決勝トーナメント1回戦は鬼門となっている。
また、事前に準備した戦術が機能しないときに、すぐにシステムやコンセプトを変更して対処することも、日本のチームは苦手としている。先日の東京オリンピックでも、グループステージでは快進撃を続けていたU―24日本代表だったが、決勝トーナメントに入ると苦しい戦いが続き、相手に合わせて、あるいは試合の流れに合わせてシステムや戦術を変更することが最後までできなかった。
良い内容の試合をすればいいリーグ戦形式の戦いでは強い日本も、一発勝負となるノックアウト・ステージでは立ち上がりから相手を圧倒することもできないし、また、試合の途中でも進め方をどんどん変えていくこともできないのが弱みとなってしまう……。
韓国のサッカーは、そのあたりが日本よりうまい。
韓国勢が3チーム残り、日本はわずかに1チームとなった2021年のACLの戦いだったが、実は日本サッカー界全体の問題にもつながっていたようである。いずれにせよ、唯一残った名古屋には今後はアウェー続きとなるはずだが、ぜひとも頂点を狙って頑張ってもらいたいものである。