今季は1番打者で全試合に出場、リーグ最多安打でチームを牽引 現在パ・リーグ首位を走るロッテの荻野貴司外野手が「THE A…

今季は1番打者で全試合に出場、リーグ最多安打でチームを牽引

 現在パ・リーグ首位を走るロッテの荻野貴司外野手が「THE ANSWER」のインタビューに応じた。10月に36歳となるベテランは、1番打者としてリーグ最多136安打を放つなどチームを牽引している。度重なる怪我に苦しんだ時期も長かったが、今季はここまで全試合に出場中。故障をしなくなった要因、ある大怪我で得た貴重な経験を振り返るとともに、今季のロッテの強さについても語ってくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

 ◇ ◇ ◇

「正直、何か特別なことをした訳でもないんです。だから、なぜこの成績が出せているか……今パッと思いつくことはないですね」

 リーグ5位の打率.303、同2位の73得点と開幕から貢献を続ける荻野。放ったヒットの数は吉田正尚(オリックス)、柳田悠岐(ソフトバンク)ら並み居る好打者を抑えて1位だ。オールスターゲームにも出場するなど充実のシーズンを過ごしているが、オンライン取材で今季の好成績について尋ねると、ちょっと困ったように笑った。

 今年10月に36歳を迎える。チームの生え抜きでは最年長だ。毎日試合に出て、パフォーマンスを継続することが難しくなってもおかしくない年齢。しかし、常識に逆らうかのようにプロ初の全試合出場へ突き進んでいる。

「確かに普通に考えたら全部出るのは難しい年齢なのかもしれないですが、意外にも例年より体はしんどくないですね。局部的にどこかが痛かったり、膝をかばって肉離れしたりが多かったのですが、今年はそういう感じもなくいい状態で来られています」

 荻野のプロ生活を振り返ると、怪我と付き合った時期も長い。ただ、入団10年目の2019年には自己最多の125試合に出場し、初めて規定打席に到達。初のベストナイン、ゴールデン・グラブ賞にも選ばれた。そして今年の活躍と、近年は故障に強くなった印象を持たせる。

 一体何が変わったのか。率直な疑問を尋ねると「本当に日々のケアだと思います」と答えつつ「後はやっぱり、スピードがちょっと落ちてきたというのは自分でも感じていて、(体の)負担は若干減っているかもしれないですね」と明かしてくれた。

スピードと引き換えに手に入れたもの「今の状態もいい」

 圧倒的なスピードを武器に、ルーキーイヤーの2010年は46試合で驚異の25盗塁をマーク。球界屈指の凄まじい出力を生み出す代償に、体への負担は大きかったのかもしれない。それが3年ほど前から、少し状況が変わってきた。

「盗塁のスタートが切れないときが増えたり、切れてもアウトにされたり、自分のイメージと変わって来ているなと感じますね。今まで出ていたスピードが出なくなった分、ちょっと体の負担が減ったような気がします」

 あの唯一無二の脚力が衰えつつあることは、本人にもファンにとっても喜べることではない。可能ならスピードを保ったまま、全試合に出場できれば最高だとも思っている。ただ、悪いことばかりではないのも事実。欠かせない1番打者として、毎試合グラウンドに立てているから「今の状態もいい」と受け入れられている。

 以前よりスピードが出なくなったとはいえ、今季もここまで17盗塁を決め、入団から12年連続2ケタ盗塁という球団新記録を達成。まだまだ足は大きな武器だ。長くなったプロ人生を支えているのは、ある大怪我で得た忘れられない出来事だと語る。

 打率.326と打撃も好調で、新人王間違いなしと言われていた1年目。5月21日のヤクルト戦で初回に二盗を成功した時、右ひざに経験のない感覚を覚えた。「何だ、この変な痛みは」。この試合はフル出場したものの、試合後に病院で検査。半月板損傷と診断された。

 無我夢中、がむしゃらにプレーしていた当時。試合後の悔しさは当然あったが、はっきりとは覚えていない。ただ、この怪我で体の大切さに気付き、リハビリ中も強い体を作るためのトレーニングを十分に積み、学ぶことができた。

「あの時怪我したから、もしかしたら長いことプロ野球生活ができているかもしれないですね。もし順調に行っていたら、もっと早く終わっていたかもしれない」。プラス思考で、実直な人柄。怪我は多くても、その度に「この時間を使ってレベルアップできることはある」と考え、無駄にしなかった。今の荻野は、その積み重ねでできていると言って過言ではない。

ロッテは今日にもマジック点灯「実感はまだない」

 ロッテは2010年に日本一になったが、これはリーグ3位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がっての下剋上。リーグ優勝&日本一だった05年も、レギュラーシーズンは2位だった。勝率1位でのリーグ優勝となれば、1974年以来47年ぶり。およそ半世紀ぶりの快挙に手が届きそうなところまで来ている。

 荻野の入団以来、この時期にチームが首位であることも初めてのシチュエーションだ。今年のロッテは何が違うのか。

「打線もピッチャーも皆で繋げて、凄く目立った選手はいないんですけど、束になって戦えている。上位が打てないこともありますが、その時は下位打線がチャンスを作ってくれますし、誰かが誰かをカバーすることができているのが強みだと思います」

 安田、藤原、和田、山口らのびのびとプレーする若手野手の姿に頼もしさも感じながら「どちらかというと背中で見せていきたい」という荻野。個人的な目標は、未体験の全試合出場。10年日本一の時は歓喜の輪に入れなかっただけに、Vへの思いも強い。

「(勝率1位のリーグ優勝なら)僕も初めてのことですし、おそらくほとんどのファンの方も初めてじゃないかと思う。実感はまだないんですけど、優勝を届けられるようにやりたい」

 残り33試合。早ければ今日16日にもマジック26が点灯する。マジック点灯なら、さらに歴史をさかのぼり1970年以来。球団では実に51年ぶりの出来事だ。15日のソフトバンク戦でも2安打を放った背番号0。昔とは違う肉体と変わらない精神を、歓喜の瞬間まで捧げ続ける。(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)