9.26後楽園ホールで2年ぶりに竹下幸之介の持つKO-D無差別級王座へ挑戦するクリス・ブルックス。リング外では互いに悩みを相談し合う竹下とクリス。現在の心境は… <(2)はこちらから> ――8.21富士通スタジアム川崎…

9.26後楽園ホールで2年ぶりに竹下幸之介の持つKO-D無差別級王座へ挑戦するクリス・ブルックス。リング外では互いに悩みを相談し合う竹下とクリス。現在の心境は…

<(2)はこちらから>

――8.21富士通スタジアム川崎で葛西純選手と組んでvs勝俣瞬馬選手・MAO選手とハードコアマッチをしました。この試合の感想を教えて下さい。

クリス・ブルックス(以下 クリス):富士通スタジアム川﨑は元々「川崎球場」で、僕が大好きだったIWA JAPANやFMWの聖地だった場所。プロレスラーになる前、13~15歳ぐらいの時ビデオテープで幾度となく繰り返し見ていました。僕にとっては憧れるというか「神格化」するような存在。それが今自分のツアースケジュールの一部として組み込まれている。川崎大会前日の夜、いつものように荷物をスーツケースに詰め試合の準備をしている時、ふとそのことに気づきました。「これはどんなにありえないことなのか」とね。

昔、海外からビデオテープを取り寄せ画面の向こう側で観ていた場所が自分の生活の一部になっているということが、どれだけありがたく信じられないことかと、親友である大日本プロレスのドリュー・パーカーに話をしました(笑)。

――その憧れの場所である川﨑のリングで葛西選手の隣に立つのは、どんな気持ちでしたか?

クリス:緊張したり興奮したりというのは自分がプロレスファンだった頃の感覚に近い。友達のドリューとかと「川崎のリングに立つよ。やばいよな~」と話している時とかね(笑)。また試合後ファンが撮ってくれた写真を見て「いい写真だな」「すげぇな~」とか思ったりしますが、その一方で自分はもうキャリア15年のプロレスラーであり試合を全うしなければいけない責任があります。

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実際に葛西さんの入場曲が流れてきて、「これから入場するぞ」と思うとスイッチが切り替わり、試合中は「プロとして自分がやらなければいけない仕事を全うする」という想いが先にきます。さっき言った緊張とか興奮のような感情は試合の前後感じること。

もちろん自分がプロレスファンとして、いろいろ興奮することはあるのだけれど、会場にはお金を払って観に来てくれているお客さんがいる。僕はエンターテイナーとして提供する側の責任を全うしなければいけない。だから自分自身の「ファンとしての気持ち」は一旦抑えて、あくまで自分はそれを与える側に回らなければいけない。自分がプロレスファンだったからこそ「観にきてくれるお客さんのためにやらなければいけない」と言う責任感が強いですね。

――プロ根性ですね。ところでハードコア・マッチで使う道具は全て痛いと思いますが、竹串ってメッチャクチャ痛いですか?

クリス:あなたが言うように「メチャクチャ」痛いです(苦笑)。例えば竹串は過去にもドリュー・パーカーに試合でやられたことがあったけど、竹串がきれいに1束刺さったことがなく「全部刺さると、こんなに痛いんだ」と気付かされました。髪の毛を洗うたびに、かさぶたが取れてきて結局2週間くらい痛いままでした(苦笑)。

竹串がきれいに抜けず折れたりすると頭の中に竹串の欠片が残り数日経ってから出てくることがあります。MAO選手は数日後、それが頭皮から出てきたみたい(笑)。

――竹串が刺さったまま椅子で叩かれましたよね。

クリス:椅子で叩かれたりパイルドライバーでマットに頭を打ち付けられたりすると欠片が残りがちになります(苦笑)。痛いのはみんな嫌だし不快な気持ちになるけど、プロレスラーは「自分が流血しているところを見ると興奮する」と思います。これはレスラーに共通して言えることだと僕自身は感じています。

――その川崎大会のメイン終了後、KO-D無差別級王者になった竹下幸之介選手の前にクリス選手が登場し、9.26後楽園でタイトル戦が決まりました。現在の心境を教えてもらえますか?

クリス:彼とKO-D無差別級のタイトルをかけて戦うのは2年ぶり。DDTの中である種別格の存在としてHARASHIMA選手がいますが、竹下選手は「ベンチマーク」、指標となる一定の水準を保っているレスラーなので、彼に挑戦することはエキサイティングであると同時に緊張感もある。とても楽しみにしている一方で不安もある…という複雑な気持ちです。

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2年前の彼とのKO-D無差別級戦は僕の中でもベストマッチの一つにあげられます。ただそこから2年間お互い成長しているし、なにより彼と友人としての関係ができた。日本に住んで彼は僕の私生活をサポートしてくれるし試合に対するコメントやアドバイスもくれる。逆に僕も彼の相談にのることもある。彼から「海外に行きたい」と相談を受けた時、「WWEではなくAEWがいいのではないか?」と言うアドバイスをしました。

そのように友人としてもプロフェッショナルとしてもお互い支え合ってきている。そうして培った関係やお互い成長したものが9.26後楽園ホールのKO-D無差別級戦で試され、その成果が見えると考えただけで興奮しているし楽しみでもあります。しかし同時にメインイベントでKO-D無差別級のタイトル戦。リング上で良い試合をしなければいけないので不安もあるし緊張もしています。

――現在、そのタイトルマッチに向けて竹下選手との前哨戦が始まっています。感触はいかがですか?

クリス:まるで一から彼を知り直すようなプロセスです。対戦成績は3勝1敗で僕に分があるけど、今の竹下は僕が3勝した頃の竹下ではない。あれ以来、彼は秋山選手に2度負けて、3度目の正直でKO-D無差別級のタイトルを獲得した。その過程の中で彼がいろいろと成長しました。

例えば彼が今フィニッシュとして使っている関節技「Plus Ultra」は、新技なので彼からも受けたことがないし他の誰からも受けたことがない。そういった面も含め技だけでなく彼の試合のリズムや組み立てがすべて変化しているので、過去の戦績があまり当てにならない。また一から新しいレスラーを研究し直すような過程を味わっています。

――9.26後楽園での戦いが楽しみになってきました!最後にKO-D無差別級タイトルマッチを心待ちにしているファンの方にメッセージをお願いします。

クリス:一般的にプロレスの戦いは争いや憎しみのような分かりやすいテーマがあるとファンの皆さんに伝わると思うけど、この試合はそうではない。僕たちは友人でありお互いがお互いの成長を後押しする存在。だからこそ2人の良いところを見せたいし負けたくないと言う気持ちがすごく強い。

ある意味、僕にとって2年間DDTでやってきたことを見せる集大成の試合です。そしてその相手が成長に協力してくれた竹下。彼も似たような気持ちでこの試合に臨んでくるだろう。本当に負けたくない試合としてすごく楽しみにしているメインイベントです。もしかしたら2年前の竹下とのKO-D無差別級戦以来、ここまで試合に向けてワクワクする気持ちになっているのは初めてかもしれない。ファンの人たちには、それが伝わるといいし、それだけの試合をお見せできると思うので9.26後楽園大会を是非楽しみにお待ち下さい。

<終わり>

<インフォメーション>
9.26東京・後楽園ホール「Who's Gonna TOP? 2021」が行われます。KO-D無差別級王者 竹下幸之介に挑戦するクリス・ブルックス。これまでDDT UNIVERSAL、DDT EXTREME王座の獲得はあるがKO-D無差別級王座の戴冠歴はない。クリス・ブルックス、DDT頂点のベルト初戴冠なるか。

チケット等、詳細はDDTプロレスリング公式サイトをご覧ください。
また試合は動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで生配信されます。

DDTプロレスリング Twitter
クリス・ブルックス Twitter

通訳/Mr.HAKU

取材・文/大楽 聡詞
写真提供/DDTプロレスリング

 

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