全農2021女子カーリング日本代表決定戦は、ロコ・ソラーレが2連敗のあと3連勝という劇的な幕切れで北海道銀行フォルティウスに勝利。日本代表として、12月にオランダ・レーワルデンで開催される北京五輪の最終予選に出場することになった。日本代表…

 全農2021女子カーリング日本代表決定戦は、ロコ・ソラーレが2連敗のあと3連勝という劇的な幕切れで北海道銀行フォルティウスに勝利。日本代表として、12月にオランダ・レーワルデンで開催される北京五輪の最終予選に出場することになった。



日本代表決定戦を制したロコ・ソラーレ。左から吉田知那美、鈴木夕湖、石崎琴美、小野寺亮二コーチ、吉田夕梨花、藤澤五月

 今回の代表決定戦に臨んだ2チームは今年2月、今大会と同じ北海道・稚内のみどりスポーツパークで行なわれた日本選手権決勝で対戦。その時は北海道銀行が第10エンドで逆転勝ちを収めている。

「負けたあとは2日間、ほぼずっと泣いていました」と、ロコ・ソラーレのスキップ藤澤五月。また、リードの吉田夕梨花は「あの負けを一日も忘れたことはない」と話す。

 その悔しさを糧にこの半年、ロコ・ソラーレはトレーニングや練習試合を重ねてきた。サードの吉田知那美は「本当にたくさんのチームの胸を借りて、本当にたくさんの試合をやってきた」と振り返る。

 注目すべきは、その練習試合の組み方だ。稚内や札幌、軽井沢などの各地で、今大会と同じく3戦先勝のベスト・オブ・ファイブ方式を採用。なるべく同じチームと3日間で5戦する"プレ・トライアル"を敢行した。

 さらに、試合開始時間やその前後の食事やミーティングのタイミングも、極力、本番の"稚内決戦"に近づけた。時にはメンバーに何かあった時のためにフィフスの石崎琴美も起用し、試合後には記者からの質問を受ける念の入れようだった。

 連戦の疲れからパフォーマンスが上がらず、連敗を喫したことも一度や二度ではなかった。しかし「今は苦しいけれど、それが力になると信じている」と吉田知。ディティールと勝負にこだわり続けた。

 セカンドの鈴木夕湖は、7月の軽井沢合宿でこんなことも言っていた。自身もミスが増え、デリバリー(投石)フォームすら見失いつつある時期だった。

「それでも、試合は続く。場合によっては開き直ることも大事だし、試合までにアジャストできることは自分でして、できないことはチームでコミュニケーションをとって(解決して)いきたい」

 そうした意識や姿勢が、まさに今大会で生きた――。

「何度も、何度もチャンスを作っても、何度も、何度もかわされる。2戦目は私のミスで負けた」

 藤澤がそう振り返ったように、序盤戦は北海道銀行が巧みにロコ・ソラーレをいなした。特にスキップ・吉村紗也香が幾度となく好ショットを放ってチームを救い、接戦をモノにして2連勝を飾った。

 その結果、ロコ・ソラーレはあとがない状態に追い込まれたが、「崖っぷち(での戦い)は何百回もやってきた。私たちはまだ強くなれると信じている」と吉田知。以降も、ロコ・ソラーレの選手たちは皆、調子が上がらなくても、報われなくても、もうこれ以上、負けられないところで、自分たちの積み重ねてきたことを信じて、今できる最善のショットを求め続けた。

 象徴的な場面があった。第5戦、1点差に迫られた第9エンドだ。

 有利な後攻だったロコ・ソラーレは、藤澤のラストロックの時点でハウス内に石はなかった。あえて得点をとらずに、両者得点が入らない「ブランクエンド」にするのがセオリーだ。そうすれば、有利な後攻の権利を持ったまま最終第10エンドを迎えることができる。

 しかし吉田知と藤澤は、ハウスからみて10時方向に残った自軍のハウス外の黄色い石をハウス側に押しつつ、投げた石もハウスの端に残す2点ショット、ダブルロールインの検討をし始めた。

 結果的には「(うまくいかずに1点をとってしまって後攻が相手に移る)リスクあるから、(トライしなくて)いいよ」という鈴木の意見もあり、ブランクエンドとなったが、ロコ・ソラーレの「1%でも可能性があれば、検討する」あるいは「よりよい石の位置、ベターでなくベストを求める」という貪欲さが、北海道銀行に対してボディブローのように小さなプレッシャーをかけ続けた。明暗を分けたのは、そんなところにもあるのではないか。

 準備のディティールと貪欲な姿勢、強靭なメンタルで日本代表の座についたロコ・ソラーレは、冒頭で触れたオランダ・レーワルデンでの北京五輪最終予選に向けて、再びピーキングを始めることになる。

 最大7カ国で競われる大一番には、2018年平昌五輪銀メダルの"メガネ先輩"ことキム・ウンジョン率いる韓国代表や、同4位で日本と銅メダルを競ったイギリス代表など、強豪がひしめく。劣勢になることも少なくないだろうし、黒星がつくことだってあるに違いない。

 それでも、崖っぷちから自分たちを信じて3連勝を成し遂げたロコ・ソラーレならやってくれる。"カーリング・ニッポン"の総力を、世界に見せつけてほしい。