12日に行われたF1第14戦イタリアGPでチャンピオン争いを演じているレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(オランダ)とメルセデスのルイス・ハミルトン(英国)が「相打ち」の接触事故に見舞われ、両者リタイアとなった。 フェルスタッ…

 12日に行われたF1第14戦イタリアGPでチャンピオン争いを演じているレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(オランダ)とメルセデスのルイス・ハミルトン(英国)が「相打ち」の接触事故に見舞われ、両者リタイアとなった。

 フェルスタッペンのマシンがハミルトンの運転席近くに乗り上げるという派手な事故で、一歩間違えれば、ハミルトンの頭部をタイヤが直撃していたところ。運転席を覆う保護デバイス「ハロ」に守られたおかげで一大事に至らず、改めて「ハロ」による車両の安全性にスポットライトが当たった一戦にもなった。

接触事故を起こしてサンドトラップに突き刺さるマックス・フェルスタッペンのマシン(右)とルイス・ハミルトンのマシン(ダイムラー提供)

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 「本当に運が良かった。ハロをもたらしてくれた神に感謝したい。最終的に僕を救ってくれた。分かるかい? 僕の首を守ってくれたんだ」。九死に一生を得たハミルトンはレース後の現地メディアの取材に答えた。

 事故はレース中盤の26周目の第1シケインで発生した。タイヤ交換を終えてピットアウトしたハミルトンに対し、ホームストレートを駆け抜けてきたフェルスタッペンがシケイン入り口のターン1でアウトから並びかけ、シケイン出口手前で接触した。

 F1マシンはタイヤがむき出しとなっており、接触事故が起きた時に何らかの衝撃が加わって、相手のタイヤに乗り上げることがある。今回もフェルスタッペンがシケイン出口の内側に設けられていたかまぼこ形の縁石を踏んで車体が浮き上がり、ハミルトンのマシンに覆い被さる形となった。実際の衝撃度も大きく、ハミルトンの運転席の後方上部にあるエアインテークが破壊されており、ハロが取り付けられていなかった場合はフェルスタッペンの右後輪がハミルトンのヘルメットを直撃していた可能性もある。

 ハロは2018年に装着が義務づけられた。下駄の鼻緒のようなデザインで3本の柱で構成され、素材は軽量で高い強度のあるチタン合金。「ロンドンの2階建てバスが乗っても大丈夫」「アフリカ象2頭に踏まれても壊れない」という触れ込みで、12トンの荷重に耐えられる設計となっている。英語圏ではヘイローとも呼ばれるが、もともと聖像などの頭部を囲む後光や光輪を意味する単語。いわゆる「天使の輪」のことだ。

ハロに守られて無事にマシンを降りたメルセデスのルイス・ハミルトン(ダイムラー提供)


 当初は不格好さが不評で、米インディカーは透明スクリーンが装着されたキャノピー型のウインドスクリーン方式を採用したほど。それでもドライバーの命が何度も救われており、昨年のバーレーンGPでも当時ハースのロマン・グロジャンが高速でコントロールを失い、路肩のガードレールをぶち抜く炎上事故に遭遇したが、ハロに守られたおかげで軽傷で済んだ。

 ハミルトン、フェルスタッペンとも自力でマシンから脱出して事なきを得た。が、レース後は事故についてイタリアGPの審査委員会による審議が進められ、「主にフェルスタッペン側に過失責任がある」として、フェルスタッペンに対して次戦ロシアGPでの3グリッド降格処分が下された。ハミルトン側におとがめはなかった。

 フェルスタッペンはリタイア後に報道陣に「逃げ場がなかった。接触しないよう僕がコースの端によけなければならない状況だっった。彼が寄せてきた」と説明していたが、強引なドライビングがあったことは審査委員会の裁定でも明らかだ。

 ハミルトンも接触事故の後に「彼はそばを歩いて通り過ぎるだけだった」とフェルスタッペンが何も声をかけず、救護措置を怠ったことを大いに失望しており、シーズン終盤へ向けて大きな禍根を残した形となった。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

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