ディラン・オルコット(オーストラリア)とディーダ・デ グロート(オランダ…

ディラン・オルコット(オーストラリア)とディーダ・デ グロート(オランダ)は、過去にシュテフィ・グラフ(ドイツ)ただ1人しか達成したことのない偉業、年間ゴールデンスラムに挑もうとしている。2人は「東京パラリンピック」で金メダルを獲得し、現在行われている「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月30日~9月12日/ハードコート)で本日から始まる車いすの部に出場するのだ。【全米オープン】男子車いすシングルスのドロー

これまで、オルコットもデ グロートも年間ゴールデンスラムの可能性については口にしたがらない様子だが、それは4つのグランドスラム全てのタイトルとオリンピックないしパラリンピックでの金メダルを同一の年に獲得するということの重大さによるものだろう。彼らがこれについて語りたがらないのは、2019年の彼ら自身の経験に基づいているようだ。この年オルコットは、車いすテニスのシングルスの選手として初めての年間グランドスラム達成に限りなく近づいていた。

オルコットはこの夢を叶える可能性を残したまま、2019年の「全米オープン」でクァードシングルス決勝まで進出したが、決勝では彼自身がほぼ間違いなくグランドスラムでの最悪のパフォーマンスと呼ぶプレーを見せるに終わった。シーズン唯一のシングルスでの敗戦となったこの試合で、オルコットはアンディ・ラプソン(イギリス)を相手に1ゲームしか奪えなかったのだ。

デ グロートの場合、2019年の「全米オープン」では、現在までに獲得している同大会女子シングルスでの3度のタイトルのうち2つ目を獲得したが、その前に「ウィンブルドン」で同胞のアニーク・ファンクォト(オランダ)に敗れたことで、年間グランドスラムの夢が断たれてしまっていた。

オルコットとデ グロートに、年間ゴールデンスラムの達成者としてグラフの仲間入りをする機会があるということは、それだけでも歴史的なことだ。今年は、パラリンピックの車いすテニス競技と同じ年に「全米オープン」で車いすの部が開催される、初めての年である。

さらに、「全米オープン」のクァード部門に8人の選手が出場する初めての年でもある。このため、今年のクァードは他部門と同じように勝ち抜き戦で行われる。したがって、ニューヨークの観客を沸かせる車いすテニスの出場選手は合計で24人となる。

そう、観客だ。これはパンデミックが始まってからというもの、世界トップの車いすテニス選手たちがグランドスラムで恋しく思ってきたものだ。12ヶ月前の「全米オープン」は、車いす部門のあるグランドスラムの歴史上で初めて、無観客で行われた大会であった。

しかし2020年の「全米オープン」には、もっと重要な車いすテニスの歴史が刻まれた。国枝慎吾(日本/ユニクロ)が男子シングルスで7度目となるタイトルを獲得し、車いすテニス選手としてのグランドスラム最多優勝回数を更新したのだ。

国枝はシングルスとダブルスあわせてグランドスラムで45個のタイトルを獲得しているが、先週、母国でのパラリンピックで自身3個目となる男子シングルスの金メダルを獲得した直後であるだけに、「全米オープン」で2021年最初のグランドスラムタイトルを獲得できるかに注目が集まる。

男子、女子、そしてクァードのシングルス準々決勝に始まる4日間の戦いが本日から行われるのを前に、「全米オープン」車いすの部の抽選会が火曜日に行われた。ダブルスの決勝は土曜に、シングルスの決勝は全て日曜に予定されている。

アルフィー・ヒュウェット(イギリス)とゴードン・リード(イギリス)の、ダブルス初のゴールデンスラム達成の希望は東京で断たれてしまったが、この2人も年間グランドスラムの達成を懸け、また「全米オープン」男子ダブルスの5年連続優勝、そしてペアで連続8つ目となるグランドスラムタイトルを懸けて、「全米オープン」に登場する。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「全仏オープン」での国枝(右)、オルコット(中)デ グロート(右)

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)