現役最年長の41歳でF1に参戦しているアルファロメオのキミ・ライコネン(フィンランド)が今季限りでF1から引退することを表明した。 2007年のシリーズ王者で歴代最多の345戦にエントリー。一時はラリードライバーに転向して世界ラリー選手権…

 現役最年長の41歳でF1に参戦しているアルファロメオのキミ・ライコネン(フィンランド)が今季限りでF1から引退することを表明した。

 2007年のシリーズ王者で歴代最多の345戦にエントリー。一時はラリードライバーに転向して世界ラリー選手権にレギュラー参戦したり、米NASCARにスポットで出場するなど、多才ぶりも示した。ただ、18年を最後にフェラーリを離れ、01年にデビューした際の所属先ザウバーを運営母体とするアルファロメオに移籍したことで引退へのカウントダウンはすでに始まっていたともいえる。

キミ・ライコネン(アルファロメオ提供)

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 自身のインスタグラムなどでも「今年が僕にとってF1での最後のシーズンになる。昨冬に決断した。簡単に決められることではなかったが、今季を終えた後が新しいことへの始まりとなる」とつづり、「シーズンの途中ながら、この機会に、家族、チーム、僕のレース人生に関わったすべての人たち、特に僕を応援し続けてくれた素晴らしいファンの皆さんに感謝を申し上げたい。F1の活動に終止符が打たれるが、これから経験したいこと、楽しみたいことがたくさんある。またそのうち会おう」。現王者ルイス・ハミルトン(英国)以上に孤高を持するドライバーらしく、簡潔な内容に徹していた。

 ハミルトンも最多勝、最多ポールポジションなど数多くのF1記録を打ち立ててきたが、ライコネンも負けていない。F1のエントリー数以外に、決勝スタート341回、完走271回、年間ファステストラップ獲得回数10回、3位の通算獲得回数45回はいずれも歴代最多。そのほか初優勝から直近の優勝までの期間が5181日、次に勝利をマークするまでの間隔が114戦など「珍」最長記録も持っている。

 デビューした時は大いに騒がれた。いわゆる飛び級でのF1デビューだったからだ。今でもジュニアカテゴリーのF3を経験してF1に駆け上がる選手がほとんどだが、ライコネンはF3よりもさらに下部のF・ルノー2000を経験しただけで、ザウバーと電撃契約を交わしてF1ドライバーに昇格した。そのため、発給されたスーパーライセンスは4戦限定の仮免許。デビュー戦でいきなり6位入賞を果たし、即座に正規ライセンスに切り替わったという鮮烈ぶりだった。

ライコネンの熟練の走り(アルファロメオ提供)


 ちなみに史上最年少の17歳でF1デビューを飾った現レッドブルのマックス・フェルスタッペン(オランダ)は1年間だけ欧州F3にフル参戦している。F3未経験者には現アルピーヌのフェルナンド・アロンソ(スペイン)がいるが、F2レベルに相当する排気量3000ccの国際F3000を経ており、飛び級でのF1参戦とはいえない。

 ライコネンはF1でのフィンランドの存在感を大きく高めた。同国出身ドライバーは1989年から33年連続でエントリーしており、更新中の国ではF1初年度の1950年から絶えたことのない英国、1982年から続いているドイツに次いで3番目に長い。実績のあるフランス、イタリア、ブラジルは2000年以降に途絶えている。同郷で王者2回のミカ・ハッキネンが引退したのが2001年。その後のフィンランド人の系譜を長らく支えたのがライコネンだった。

 フィンランド人F1ドライバーはここまで計9人しかいないが、ケケ・ロズベルグ、ハッキネン、ライコネンと3人の王者を輩出。F1ではドイツ国籍を選んだケケの長男ニコ・ロズベルグも2016年の王者だから4人と数えてもおかしくない。F1にエントリーした選手が21人もいながらチャンピオンはおろか、未勝利が続く日本とは大違いだ。

 ライコネンにとって9月5日に決勝が行われたオランダGPは引退表明後最初のグランプリだったが、予選、決勝の出走を急きょ断念した。初日のフリー走行を終えた後に新型コロナウイルスの検査で陽性となったことが判明。急きょリザーブのロベルト・クビサ(ポーランド)が代役出場した。発熱などの諸症状は出ていないようだが、F1の現役生活もあとわずか。発症して病状が急変しないことを祈りたい。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)



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