ストーマーズで2季目を迎えたロビー・フレック ヘッドコーチ(HC)は、サンウルブズ戦後、後半の戦術変化についてこう振り返った。
「前半は劣勢でしたが、パニックにはなりませんでした。(ハーフタイムで)スタッフ、選手とディスカッションをして、後半のアタックを変えました」
 ストーマーズは後半に入ると、ボールを保持して徹底的にFWを走らせた。
 FW一辺倒とも言える戦い方に、この日スクラムで奮闘した右PR伊藤平一郎は、「あそこまでしてくるのは、想定外だったところもありました。ゴール前とか、そういうシチュエーション(のディフェンス)が、まだできていなかったかなと思います」。
 キッカーを務めたSO小倉順平。スーパーラグビー初先発ながら、ヒラメキ溢れるプレーでスタンドを湧かせた24歳は、敗因をこう総括した。
「後半になってペナルティを多く犯してしまって、キック一本で自陣に入られました。相手の攻め方がFWに徹してきて、そこに対応しきれず、ズルズルいってしまった感じです」
 
 3月25日、準ホームのシンガポール国立競技場で迎えた第5節ストーマーズ戦。前半26分にLOリアキ・モリがゴールポスト脇に飛び込み、一時はリードを14点(24-10)に広げたが、後半13分から4連続トライを浴びるなどして、31-44で敗戦。7点差以内のボーナスポイントも逃し、開幕5連敗を喫した。
 
 前半は今季初勝利を予感させた。
「前半はスペースをうまく使って走れたことが良かったと思います。特に中盤での攻め方はうまくいっていました」(CTBティモシー・ラファエレ)
 前半7分、オープンサイドの数的有利を活かしてCTBデレック・カーペンターがゴール下を陥れた。22分、WTB江見翔太が「トイメンがウイングじゃなかった(SOロバート・デュプレア)ので、“半ズレ”でいけるかなと自信もあった」と、右スミにジャンピングトライ。その4分後のLOモリのトライで、初勝利の気運は充満した。

 しかしキックカウンターのディフェンスが崩れるなど、敗戦の予兆もあった。7人制南アフリカ代表のWTBシアベロ・セナトラには、再三のゲインを許した。
「ふとした時に蹴ったさい、(キックの)チェイスがバラバラでした。どこのチームもバックスリーのレベルが高いので…」(SO小倉)
 だからこそ、味方による予定外のキックに対し、どう対処するか。キック戦術を活用しているチームにとっては、見過ごせない課題だ。
 WTB江見は問題意識を語る。
「全員で同じ絵が見えているというのは、一番大事なところだと思います。個人の判断で蹴ったりしたときの順応性が、まだ足りてないのかなと」

 収穫のひとつはセットプレーの安定か。
 ラインアウト獲得率は91.7パーセント(11本中10本成功)。マイボールスクラムの獲得率は100パーセント(6本中6本成功)だった。
 PR伊藤もこの日のスクラムについては、改善の余地があるとしながらも「全然やれました。負けたイメージはないです」と胸を張る。

 しかし後半、相手FWにフィールドで劣勢を強いられた。
 サンウルブズのフィロ・ティアティアHCは試合後の記者会見で「最後の20分間がどうして上手くいなかったのかは、我々としても振り返らなければいけないポイントです。私は最後の20分間について、まったく満足していません」。
 ただ昨季はFWコーチを務めた指揮官には、手応えもある。
「プレシーズンの準備も含め、去年と比べると、すべてが素晴らしいチームだと思っています」
 選手の奮闘にも驚かされている。
「ツアーに来てくれたほとんどの選手が、我々の期待値を超える働きをしてくれました。彼らのプレーに本当に驚かされました。素晴らしい競争が、チームに起きています」

 ホーム戦8試合中3試合が準ホームのシンガポールという条件のもと、強豪4か国のスペシャルチームと戦い、同時に、「ファンに勝利を届ける」というプロチームとしての宿命とも戦う狼軍団。
 次戦第7節は、今季初となるBYEウィーク(休みの週)を挟み、東京・秩父宮ラグビー場にブルズを迎える。
 チーム力は確実に向上している――その事実を、「勝利」を勝ち取ることによって、広く、たくさんの人へ届けたい。(文/多羅正崇)