「オープン球話」連載第81回 第80回を読む>>【祝・侍ジャパン金メダル! 八重樫はこう見た!】――さて、先月の話題とな…

「オープン球話」連載第81回 第80回を読む>>

【祝・侍ジャパン金メダル! 八重樫はこう見た!】

――さて、先月の話題となってしまいますが、稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンが見事に金メダルを獲得しました。八重樫さんは試合をご覧になっていましたか?

八重樫 何試合かはテレビで見ました。金メダル獲得はすごくうれしかったけど、ある意味では「まぁ、順当だよね」という思いもありますね。参加チームも少なかったし、コロナ禍ということで、満足に有力選手をそろえられなかった国もあったし。一方で、日本は「地元開催」ということで、早くから万全の準備をしていましたから。



東京五輪で日本代表の正捕手を務めたソフトバンクの甲斐拓也

――とはいっても、「地本開催だから絶対に金メダルを!」というのは、かなりのプレッシャーになっていたと思います。

八重樫 確かに稲葉のプレッシャーはとても大きかったと思いますし、選手もプレッシャーがかかる中で結果を出すのは簡単ではないです。でも、決勝を戦ったアメリカチームは、メジャー選手は選出されず、ほぼマイナー選手だった。日本でプレーする選手ばかりだったから、やっぱり「日本有利」は変わらなかったですよね。関係者たちも「よく頑張った」と思いつつ、「優勝して当たり前だよ」という思いも持っていると思いますけどね。

――侍ジャパンの中で印象に残っている選手はいますか?

八重樫 甲斐拓也が、僕の期待以上に目立ちましたね。守りにしても、打つにしても、すごく光っていた。開幕の対ドミニカ共和国戦でのセーフティスクイズ、ノックアウトステージ初戦のサヨナラタイムリーも立派だったし、リードもスローイングも、2019(令和元)年のプレミア12の時よりも成長しているのがよくわかりました。

――「リード面の成長」とは、どういった点でしょうか?

八重樫 プレミア12では、相手の弱点を突くために極端に同じボールを続けるリードが印象的だったんだけど、今回のオリンピックではバッターを見ながら、その裏をかくような細かいリードをしていた印象が強いですね。日本の正捕手として、安心して任せられる存在になったと言えるでしょう。

――ヤクルト勢の山田哲人、村上宗隆はいかがでしたか?

八重樫 山田、村上に関しては、2人とも本来の力を存分に発揮できたということだと思います。稲葉監督は山田をピンチヒッターで使うのかなって思っていたんだけど、結果的にスタメン起用されたことで打席も多く回ったし、そもそも山田は大舞台が大好きなヤツだから、気持ちと技術、そして体調面がうまくマッチして大会に臨めたんじゃないのかな?

【裏MVPをあげたい選手は?】

――八重樫さんからご覧になって、山田選手は「大舞台に強い」という印象ですか?

八重樫 やっぱり、2011(平成23)年のクライマックスシリーズ(CS)の印象が強いんですよ。ルーキーイヤーだったこの年、一軍選手に故障が相次いだことで、一度も一軍出場経験がないのにCSで一軍デビューして臆せずに活躍したでしょう。新人なのに大舞台で堂々とプレーしていた印象が強烈に残っているので、山田は大舞台が好きなはずです。

――前回のプレミア12でも、韓国との決勝戦で逆転スリーランを放ちましたが、今回の東京五輪でもメキシコ戦でスリーランを放ち、韓国戦でも勝ち越し3点タイムリーツーベースヒットを放ち、大会MVPに輝きましたからね。

八重樫 すべてはルーキーイヤーのCSから始まっているんだと思います。もともと度胸があるタイプだったけど、11年の経験があって、大舞台に気持ちを持っていくことが上手になったんだと思うんですよ。

―― 一方の村上宗隆選手はどう見ていましたか?

八重樫 一時期、「侍ジャパンの4番か?」という報道もあったけど、結果的に8番で本当によかったと思います。プレッシャーが少ないなか、いい場面で村上に打順が回ってきましたよね。この打順については稲葉監督の力量、見る目がすごかった。打線でいえば、5番の浅村(栄斗)が、個人的にはすごく光ったと思いますね。

――その理由を教えてください。

八重樫 4番の鈴木誠也の調子が上がらないなかで、5番打者まで不調だと打線はまったく機能しなくなります。でも、浅村は粘り強いバッティングできちんと6番の柳田(悠岐)につなぐことができた。鈴木誠也も好調だったら、侍ジャパンはもっとラクに勝てたと思います。でも、浅村がきちんとつないだことで、準々決勝のアメリカ戦も延長戦に持ち込めたし、サヨナラ勝ちも可能になったんだと思います。浅村が機能していなければ、延長戦にすらならなかったでしょう。個人的には彼に裏MVPをあげたいですね。彼のおかげで、山田も村上もラクに打席に立てたと思いますから。

【ルーキーの快投に惚れ惚れとした】

――ピッチャーで印象に残っている選手はいますか?

八重樫 日本ハムの伊藤(大海)ですね。シーズン中のピッチングを見ていて、「独特なカーブを投げるな。バッターは打ちづらいだろうな」とは思っていたんです。でも、オリンピックではとにかく度胸のよさが目立ちました。どんどん、どんどんストレートを投げ込んでいく。相手バッターを"なめる"というのか、完全に見下ろしていましたから。

――ペナントレースではカーブの印象が強かったけど、オリンピックではストレートが印象に残ったということですね。

八重樫 投げるたびにどんどんキレを増していって、スピードも速くなっていったように感じました。新人でありながら、あれだけの大舞台で「怖さ」を感じさせることなく、堂々としたピッチングを披露する。しかも、リリーフという難しい役どころでしょ? 気持ちの強さ、技術面の高さがすごく印象に残りました。

――同じくルーキー、広島の栗林良吏投手の印象はいかがですか?

八重樫 面白いピッチャーですね。キレイに落ちるボールがいい。シーズンでも安定したピッチングをしているけど、オリンピックでもいかんなく実力を発揮した。彼もまたいい度胸をしていて、見ていて気持ちがいいピッチャーでしたよ。

――八重樫さんが現役だった頃は、国際大会とは無縁でした。でも、高校時代に日本代表として海外チームと戦った経験はありますよね。

八重樫 一応、名称は「全日本代表」だったけど、ユニフォームに日の丸が刺繍されていたわけじゃないし、地球の裏側のブラジルで戦ったから世間の注目も低かった。「日の丸の重み」というほど、大げさなものではなかったですけどね(笑)。

――常にしびれるような戦いが続く国際大会で活躍する現役選手を見て、「うらやましいな」と思ったりはしないですか?

八重樫 そういう思いもあるけど、逆に「今の選手は大変だな」という思いのほうが強いです。今の選手たちは試合が大好きな子ばかりだから平気なんだろうけど、ペナントレースがあって、国際大会があって、オフも短くて、本当に大変だと思いますよ。でも、岩村明憲たちが第1回のWBCに出てから、ヤクルトの選手たちも「日本代表に選ばれたい」と目の色が変わって急に熱心に練習するようになったから、僕らにはわからない魅力があるんでしょうけど。

――さて、次回からは八重樫さんも指導した稲葉篤紀さんについて伺っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

八重樫 稲葉や、オリンピックに2度出場している宮本(慎也)などは僕が打撃コーチだった頃の選手だから、思い出も多いですよ。次回から、じっくりとお話ししましょうか。

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