以下は、W杯アジア最終予選出場12カ国、及びW杯開催国カタールの、2018年8月16日から最新の2021年8月12日へ…

 以下は、W杯アジア最終予選出場12カ国、及びW杯開催国カタールの、2018年8月16日から最新の2021年8月12日へのFIFAランキングの推移である(カッコ内はアジアでの順位)。

グループA
イラン 32位(1位)→26位(2位)
韓国 57位(4位)→36位(4位)
UAE 77位(9位)→68位(7位)
イラク 89位(11位)→70位(8位)
シリア 73位(6位)→80位(11位)
レバノン 79位(8位)→98位(16位)

グループB
日本 55位(3位)→24位(1位)
オーストラリア 43位(2位)→35位(3位)
サウジアラビア 70位(5位)→61位(6位)
中国 75位(7位)→71位(9位)
オマーン 84位(10位)→79位(10位)
ベトナム 102位(17位)→92位(13位)

カタール 98位(13位)→42位(5位)

 9月2日から始まる2022カタールW杯アジア最終予選。B組に振り分けられた日本は、組み合わせに恵まれたのか否か。楽勝が予想されるのか、苦戦が予想されるのか。アジアのレベルはどれほどなのか。上がっているのか、下がっているのか。アジア最終予選の全体像について探ってみたい。

 とは言っても、頼りなる数字は思いのほか少ない。欧州で活躍している選手が少ないので、顔ぶれから想像を膨らますことも難しい。韓国、オーストラリア、イラン以外の国で、キャラ立ちしている、知名度の高い選手は少ない。これだと思わせる選手、たとえば、日本代表に入ってもやっていけそうな選手はそう多くない。ところが、チーム力になると話は変わる。日本との差は接近する。



W杯アジア最終予選オマーン戦を迎える日本代表(写真は2次予選キルギス戦)

 2019年1月にUAEで開催されたアジアカップを振り返ればわかりやすい。日本はグループリーグで、トルクメニスタン、オマーン、ウズベキスタンと、決勝トーナメントで、サウジアラビア、ベトナム、イラン、カタールと対戦している。

 全7試合を戦った中で、実に6試合が1点差だった。唯一点差が開いた試合(3-0)が、最も実力が接近したイラン戦だったというのはなんとも皮肉だが、この結果は、アジアの底辺のレベルが上がっていることを証明している。日本の大勝が期待できる相手チームは大きく数を減らしている。

 たとえばベトナム。2007年のアジアカップでは、日本が4-1で勝利を収めている。舞台はベトナムの国立競技場で、スタンドはほぼ満杯だった。完全アウェーの中で行なわれた一戦にもかかわらず、3点差がついた。両軍の力は当時、別の場所で戦えば、もう少し点差がついてもおかしくないほど離れていた。

 それが2019年のアジアカップでは1-0。日本の決勝ゴールはPKで、シュート数ではベトナムに上回られていた。日本代表に入れたくなるような好選手もちらほら目についた。時代の変化を感じさせる一戦だった。

 今回も日本はベトナムと同組で対戦する。ベトナムはこの3年間に限っても、FIFAランクを102位から92位へと10位上昇させている。アジア内でも17位から13位へ浮上している。だが、それでもB組内での扱いは、最弱国だ。上位と下位との差が狭まっていることがわかる事例だ。日本も右肩上がりにあるが、ベトナムはそれ以上の勢いで、成長を遂げている。

 B組でベトナム以上に警戒すべきは、サウジアラビアだろう。この国のサッカーは、かつて守備的だった。守って、後ろを固めて、カウンターというサッカーを定番にしていた。

 だが、2019年のアジアカップでは、日本に対してシュート数で大きく上回った(5対15)。ボール支配率に至っては、23%対77%という、驚くべき関係を強いられていた。キャプテンのサレム・アル・ドーサリーや、攻撃の中心選手、ファハド・アル・ムワラドなどは、バリバリのA級選手だった。1-0で勝利を収め、「守って勝つオプションがひとつ増えた」とは、森保一監督のコメントだが、それは苦しい弁明以外の何ものでもなかった。

 さらに2020年のU-23アジア選手権では、サウジアラビアに終了間際に決勝ゴールを奪われ、日本はまさかの敗戦を喫している。A代表でないとはいえ、悪い終わり方をした状態で今回の戦いを迎えることになる。森保監督に苦手意識が残っていないか、心配になる。

 一方、オーストラリアとは、逆に差を広げつつある印象だ。2006年ドイツW杯本大会のグループリーグ初戦で対戦しているが、この時はオーストラリアのほうが明らかに上だった。日本は1点を先取したにもかかわらず、後半3点を奪われ逆転負けする姿に、地力の違いが見て取れた。

 ハリー・キューウェル、マーク・ヴィドゥカの2人は、2000-01シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)の準決勝を、リーズ・ユナイテッドの看板FWとして戦っていた。その他も、欧州の上位クラブで活躍している選手で固められていた。時のオーストラリア代表監督はフース・ヒディンク。ジーコジャパンに勝ち目がないことは、監督を比べた瞬間、想像できたが、選手のクオリティにも明白なる差があった。

 しかしいま、オーストラリアに驚くような選手は見当たらない。少なくとも、キューウェル、ヴィドゥカ級はいない。

 ブラジルとイングランド出身の帰化選手4人を含む中国は、いつも以上に日本の脅威になりそうだが、気質的にどうなのか。疑問が残る。中国人選手は、精神的にアップダウンが激しい。90分を同じ調子でプレーすることができないところに、弱みを感じる。日本はそのある種のドタバタ劇に、巻き込まれないことだ。

 そのドタバタ感は、A組の韓国にも若干、通底している気がする。中国ほどではないが、気合いが先行してしまうクセがある。力はありながら墓穴を掘るシーンが目立つのだ。一方、2002年日韓共催W杯でベスト4入りした時は、その気合いがチャレンジャー気質へと導かれていた。追いかける立場に回ったとき、無類の強さを発揮した。

 今回の強みは、ソン・フンミン(トッテナム・ホットスパーズ)という現アジアナンバーワン選手を擁している点だ。かつてのパク・チソンがそうであるように、こうした看板選手が1人いるだけでチームは立派に見える。日本に欠けている魅力だ。
 
 イランには、今季もCLに出場することが濃厚なチャンピオンズリーガーがいる。サルダル・アズムン(ゼニト)とメフディ・タレミ(ポルト)の両大型FWだ。前者はすでにCL通算16試合出場。4ゴールを挙げている。後者も昨季6試合に出場。2ゴールを挙げている。それぞれのクラブに欠かせない戦力として活躍しているのだ。南野拓実(リバプール)が出られるかどうかという立場にいる日本にない魅力である。

 日本は先述の通り、2019年アジアカップ準決勝でイランに3-0で完勝している。しかし、もう一度戦えば、どうなるかわからない、それは、完勝劇に必然が感じられない一戦でもあった。

 アジアの中で最も力を伸ばしているのが、その決勝戦で日本が敗れたカタールだ。この優勝も手伝い、2018年8月の時点の98位(アジアでは13位)だったFIFAランクは、42位(5位)へと急上昇。短期間で、世界でも類を見ない長足の進歩を遂げた。

 アジアの底辺のレベルは確実に上がっている。日本が今後とも、アジアの中で揺るぎない立場を維持しようとすれば、伸び率を上昇させる必要性がある。2022年カタールW杯。日本には自らのマックス値を更新してほしいものである。