29日に行われたF1第12戦ベルギーGPは大雨による悪天候のため、史上最短の3周目でレースが打ち切られる前代未聞のレースとなった。レース結果の周回数は減算されるため、1周のみ。規定で得点はハーフポイントが適用され、優勝したレッドブル・ホン…

 29日に行われたF1第12戦ベルギーGPは大雨による悪天候のため、史上最短の3周目でレースが打ち切られる前代未聞のレースとなった。レース結果の周回数は減算されるため、1周のみ。規定で得点はハーフポイントが適用され、優勝したレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(オランダ)にはフルポイント25点の半分に相当する12・5点が与えられた。

雨中を走行するアルファタウリ・ホンダの角田裕毅。15位だった(ホンダ提供)

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 ハーフポイントとなったF1のレースはこれで6回目。2009年のマレーシアGP以来で、過去最短は1991年のオーストラリアGPで全81周のうちの14周でレースが成立した。日本人初のフル参戦ドライバーとなった中嶋悟の引退レースでもあった。

 ベルギーGPは急に強い雨脚のにわか雨が襲来する名物の「スパウェザー」で有名だが、今年は様相が少し違った。初日から天候が崩れ、土曜に行われた予選も断続的な大雨のなかアタックを仕掛けたマクラーレンのランド・ノリス(英国)が大クラッシュ。29日も雨にたたられ、決勝直前にもダミーグリッドに着く前のレコノサンスラップでレッドブル・ホンダのセルジオ・ペレス(メキシコ)がコントロールを失い、コースアウトしてバリアーに突き刺さる事態となった。

 決勝は現地時間29日午後3時(日本時間午後10時)に始まる予定だったが、「ディレイ(遅延)」が3度も宣告された末に、予定よりも25分遅れでフォーメーションラップがセーフティーカーの先導で開始された。ところが路面の水量が多く、2周目に入ったところで赤旗中断。選手やチームスタッフらはそこから2時間半以上も待機を余儀なくされた。

 規定では当初のスタート時刻の3時間を超えてレースが続けられないことから午後6時(日本時間30日午前0時)がタイムリミットとされた。が、ベルギーGPのレーススチュワードは国際自動車連盟が定める国際モータースポーツ競技規則に基づくものとして、2時間が経過した午後5時で「時計」をいったん停止すると発表。レースが再開された場合は、事実上の1時間制のタイムレースを実施することを決めた。

優勝したレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(ホンダ提供)


 セーフティカー先導のフルコースコーションからレースが始まったのは午後6時17分(日本時間30日午前1時17分)。追い抜きはできない状況で3周目に赤旗中断となり、レースは成立。ポールポジションから走行を続けていたフェルスタッペンが自動的に優勝となり、2位にはウィアムズのジョージ・ラッセル(英国)が食い込むという番狂わせが起きた。ペレスも修理が間に合ってレースに復帰。最下位の20位を記録した。

 セーフティーカーを先導させてレースを成立させたことに対しては賛否を呼んでいる。3位に入ったルイス・ハミルトン(英国)は記者会見で「ファンには本当に申し訳ない。(現地の観戦者は)外で雨ざらしだった。できれば(チケット代金の)返金を望んでいる」とファンを同情した。

 午前中にはサポートレースのFIA―F3のレース3が実施されており、チケット代の返金は難しいかもしれないが、わずか3周、しかもセーフティーカー先導で、ただ大雨のなかを走行しただけでレースが成立したことは是認していいものだろうか。

 2019年にはベルギーGPのサポートレースとして開催されたF2でアントワーヌ・ユベール選手が多重クラッシュに巻き込まれて事故死した。安全性を考慮するのであれば、無理にレースを続ける必要はなく、思い切ってノーレース(中止)にするか、翌日順延の選択肢もあったはずだ。

 それにハーフポイントでも得点が入ることで選手権の順位も変わる。初表彰台の2位を獲得したラッセルは9点を加え、ランキング15位まで浮上。ウイリアムズは製造者部門8位のままだが、9位のアルファロメオとの点差を「7」から「17」に広げた。下位を争う他のチームにとっては少し不公平感があるように思えてならない。

 かつてF1には「生きたルールブック」と呼ばれたチャーリー・ホワイティング氏がレースディレクターとしてあらゆる不測の事態に毅然(きぜん)とした態度が対応してきた。2019年の開幕戦オーストラリアGPの直前に彼は客死。レース運営が後任に引き継がれて以降、F1はふに落ちない不安定な「審判」が続いている。チャーリーなら、今回のレースをどのように差配しただろうか。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

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