福井陸協が主催、クラウドファウンディングで500万円以上集める 福井ならではの陸上大会が28日、今年も開催された。6種目のトップ選手が集った「アスリートナイトゲームズ(ANG)イン福井」。男子100メートルは桐生祥秀(日本生命)、男子200…

福井陸協が主催、クラウドファウンディングで500万円以上集める

 福井ならではの陸上大会が28日、今年も開催された。6種目のトップ選手が集った「アスリートナイトゲームズ(ANG)イン福井」。男子100メートルは桐生祥秀(日本生命)、男子200メートルでは小池祐貴(住友電工)が優勝するなど、東京五輪代表11人が出場した。クラウドファウンディングで運営費を賄い、トラック内側には特別観覧席が設けられるなど、エンタメ要素を取り入れた大会だ。

 同大会は福井陸協が主催。クラウドファウンディング3年目の今年は当初の目標金額を300万円に設定していたが、304人から502万5000円が集まった。資金は運営費のほか、上位選手への活動支援金などに使われる。会場の福井県営陸上競技場は、2017年に東洋大4年だった桐生が日本勢初の9秒台、9秒98を叩き出した場所。愛称は「9.98スタジアム」だ。

 陸上ファンから高い関心を集める同大会は欧州のナイター陸上をヒントに実現。アップテンポのBGMが流れ、DJが実況で盛り上げるなどエンタメ性に長けている。中でも注目すべきは、トラック内側に特別観客席が設けられていることだ。

 桐生や小池、男子110メートル障害の高山峻野、女子400メートルリレーの青山華依ら、東京五輪に出場したトップ選手が数メートル先を走り抜けていく。トラック外側で行われる走り幅跳びの時には、オレンジのシャツを着たファンはトラック上に移動して座り、迫力満点の様子を目に焼き付けていた。

 コロナ禍前の2019年大会には全体で約1万人が訪れたが、昨年から制限を設け、今年の観客は約1700人に抑えた。限られた人数が大声を出すことなく、手に持った棒状バルーンを叩き、全力を見せてくれる選手を応援していた。東京五輪はほとんどが無観客だった陸上競技。出場したオリンピアンも、観客の存在の大きさを再認識していた。

オリンピアンからも好意的な声「気持ちの入りようが違う」

 男子100メートル障害に出場した五輪代表選手の高山は「見られているか、見られていないかで気持ちの入りようが違いますし、応援の力は選手も感じているところだと思います」と感謝した。

 高山はこれまでの3大会すべてに出場しており、優勝、2位、優勝といずれも好成績。観客の応援に加え、風向きなどの条件から記録が出やすい大会でもあり「3度ともいい記録が出ているし、良いイメージが大きい」と振り返っている。

 男子100メートルで優勝した桐生は、場内インタビューで「お客さんと近いですし、温かみを感じる福井県なので、いつもここに来るときは本当に楽しみですし、今回は声を出せないですけど、たくさんの拍手が生まれるようなレースをしたいと思っていた」とレースを振り返った。

 昨年の大会後も「毎年来たい」「やっぱり観客がいる大会はいいなと思います」と語っていた桐生は今年、競技開始前に自ら考案した新種目「Sprint50」を実施。小学生6人と本気で50メートル走を競い、5秒87を記録した。以前から考えていた企画だが、福井を第1回の場所に選んだのは思い入れのある地だからでもある。

 自身の記録9秒98の更新を狙っていた桐生は「今回は届かなかったが、この地がさらに盛り上がるような走りをしたい」と話した。観客と選手、双方に魅力満載の大会が、来年以降も陸上界で注目を浴びることになりそうだ。(THE ANSWER編集部)