サントリーの新人でHOの中村駿太は、巡ってきたチャンスをまず「嬉しい」と受け止めた。3月6日、代表チームを底上げするナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)に追加招集されていた。 もともとNDSには、同学年の同ポジションであるパナ…

 サントリーの新人でHOの中村駿太は、巡ってきたチャンスをまず「嬉しい」と受け止めた。3月6日、代表チームを底上げするナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)に追加招集されていた。

 もともとNDSには、同学年の同ポジションであるパナソニックの坂手淳史が名を連ねていた。もっとも、その坂手がサンウルブズに加わり国際リーグのスーパーラグビーへ挑むこととなり、NDSのHO枠に中村が繰り上がったのだ。帝京大の主将だった坂手と10代の頃からしのぎを削ってきた元明大主将は、置かれた立場へも「そこに一歩でも近づけるように」。ただ前向きに受け取る。

 明大の同級生だったSOの田村煕、NO8の松橋周平は、すでにサンウルブズの一員としてスーパーラグビーデビューを飾っている。それだけに中村は、「田村、松橋も上のレベルで活躍している。今回は少しでも近づける、いい機会」とも志す。早期の日本代表デビューへも、意欲を示す。

 第3回NDSキャンプ3日目の22日は、大雨のなかで走りまくった。「3週目。身体も慣れてきて、いい感じです」と笑い、「楽しいし、皆、レベルが高い。毎日、勉強になっています」。NDSには2015年のワールドカップでプレーした山田章仁ら、代表経験者も揃っていた。シニアプレーヤーたちの理解度の高さに触れ、中村は刺激を受けている。

「チームトークのコメントに、感じます。リーダー陣の人が、ジェイミー(・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)のやろうとしていることを細かく伝えています」

 身長176センチ、体重105キロのサイズも、ポジショニングの良さと器用さが光る。相手援護の手薄な接点でボールに絡んだり、タックラーを引き付けながらのパスで攻めをスムーズにしたり。今季はルーキーイヤーながら、公式戦17試合に出場。そのうち14試合では元日本代表の青木佑輔に先発を譲ったが、国内タイトル2冠を制するなかで将来性を買われていた。

 ジョセフ ヘッドコーチ率いるいまの日本代表は、組織的なスペースの攻略に力を注ぐ。選手が左右に散らばり、テンポよくキックやパスを配する。ジョセフ ヘッドコーチが仕切る今回のNDSにあって、中村は「しっかり、アピールしたいです」。ボスのプランを遂行するなか、持ち前の資質がどう活きるのかを具体的に説明していた。

「自分の強みのボールスキルは、ジェイミーのラグビーにもフィットすると思うので」

 明大のリーダーだった頃、部内に生活の規律を求めていたというエピソードを具体的に問われて「20歳以下は禁酒です。タバコは…今年は本当にダメです」。聞き手の笑いを誘うサービス精神を忘れず、仲間たちの意識の高まりを讃えていた。グラウンド内外において場のニーズを察知する23歳が、ナショナルチームのHO争いに参戦した。(文:向 風見也)