2年ぶりの開催となった夏の甲子園。今年は雨天順延、降雨コールド、新型コロナ感染による辞退など、波乱の大会となっている。…

 2年ぶりの開催となった夏の甲子園。今年は雨天順延、降雨コールド、新型コロナ感染による辞退など、波乱の大会となっている。そんな異例ずくめの甲子園で、プロスカウトの目に留まった選手たちは? 視察に訪れていたNPBスカウト4人に注目選手について評価してもらった。



県大会で自己最速となる157キロをマークした明桜の風間球打

風間球打(ノースアジア大明桜/投手/183センチ・81キロ/右投左打)

「甲子園では緊張やグラウンドコンディションが悪いなかでの投球になってしまって、本来の調子ではなかったように見えましたが、県大会ではすごいピッチングをしていました。最速157キロのストレートはもちろん、スライダー、フォークのキレもよかった。まだ荒削りだし、伸びしろはたっぷりあると思います。2、3年後はすごいピッチャーになるんじゃないでしょうか」(セ・リーグスカウトA氏)

「スピードはあるし、角度もあって、素材としてはすばらしいです。ドラフト1位の12人に入るのはもちろん、2〜3球団から指名される可能性も十分にあります。あえて課題を挙げるとすれば変化球の精度と内角攻め。そこは改善すべきポイントだと思いますが、それだけ伸びる要素もあるということ。楽しみな存在です」(パ・リーグスカウトB氏)

「股関節が硬いため、上体だけで投げている印象がありますが、それでもあれだけのボールを投げられるのですから、すごい投手だと思いますね。上半身の強さは高校生離れしています。個人的には、将来的に柔らかさを身につけるとものすごいピッチャーになると思っています。今のままだと短いイニングが最適だと思いますが、下半身に筋力がついて、体重移動がうまくできるようになれば、先発ローテーション投手としてバリバリ投げられるようになるでしょう」(セ・リーグスカウトC氏)



高校生ナンバーワン左腕の呼び声高い北海・木村大成

木村大成(北海/投手/180センチ・76キロ/左投左打)

「センバツの時よりも格段によくなっていました。上背(180センチ)があって、左で140キロ中盤のスピードが出るし、スライダーの精度もいい。確実にストライクゾーンに投げ込めて、新たにチェンジアップも覚えた。タイプ的には全盛期の内海哲也(西武)かな。ただ、今のスライダーはスラーブのような感じなので、球速135キロぐらいのカットボールを投げられるようになると、もっと投球に幅が広がると思います」(パ・リーグスカウトD氏)

「甲子園では結果を出せなかったけど、評価は変わりません。角度のあるボールを投げられるし、外のストレートは安定している。左ピッチャーでコントロールがあるのは魅力です。南北海道大会で150キロを出したように、体が大きくなってスピードが上がったし、まだまだ伸びる投手だと思います」(セ・リーグスカウトA氏)

「ストレートの平均球速が上がっていたし、センバツでは投げていなかったチェンジアップも投げるようになっていた。この夏の甲子園では一番得意なはずのスライダーがよくなかったけど、本来はそのボールを武器にして投げるタイプ。まだ時間はかかると思いますが、3、4年後には一軍で戦力になれる器です」(セ・リーグスカウトC氏)



初戦でセンバツ準優勝の明豊を完封した専大松戸の深沢鳳介

深沢鳳介(専大松戸/投手/177センチ・75キロ/右投右打)

「春より成長しましたね。両コーナーへのコントロールがいいし、緩急も使える。ただ、今の時代は左バッターが多いから、外へ逃げていく抜き球がないとプロでは厳しいかもしれません。高校生相手なら制球力と緩急で勝負できるけど、プロでは決め球がほしい。空振りがとれる、内野ゴロを打たせられるボールを身につけたら面白い存在になるでしょう」(パ・リーグスカウトB氏)

「センバツの時よりも球速は上がったし、両サイドにきっちり投げられる制球力もある。いいピッチャーですね。欲を言えば、スライダーのキレがほしい。右のサイドスローピッチャーだけど、右打者がそんなに嫌がっている印象がありません。スライダーの精度が上がれば、右打者にとってはとても厄介な投手になるはずです。左打者のインコースにフロントドアで入ってくるシュートは秀逸ですので、楽しみな存在です」(セ・リーグスカウトA氏)



西日本短大付戦で4安打完封勝利を挙げた二松学舎大付の秋山正雲

秋山正雲(二松学舎大付/投手/170センチ・75キロ/左投左打)

「上半身に無駄な力が入らず、下半身主導で投げられる理想的なフォームです。体が開かずに右打者のインコースに投げられるから、140キロでも詰まらせることができる。打者に向かっていく姿勢もすばらしく、メンタルの強さを感じます。プロでやっていけるだけの資質は十分に備わっています」(セ・リーグスカウトC氏)

「左でこれだけコントロールのいいピッチャーはそういません。春に見た時は変化球に課題があり、正直、育成での指名かなという感じでしたが、この夏は120キロ台のカットボールをうまく使って、ストレートの強さも増していた。評価は一気に上がりました。170センチの身長を心配する声もありますが、気持ちの強い選手なのでそこはカバーできると思います」(パ・リーグスカウトD氏)



最速150キロを誇る大阪桐蔭の大型左腕・松浦慶斗

松浦慶斗(大阪桐蔭/投手/186センチ・94キロ/左投左打)

「6月ごろから大きく足を上げ、反動を使って投げられるようになったのですが、それによって腕を振る感覚をつかんだと思います。体重移動もスムーズになったし、センバツの時と比べると劇的によくなりました。十分にプロレベルの投手です」(セ・リーグスカウトA氏)

「春までは高めに抜ける球が多く、体のブレも大きかった。三振を10個奪ったらフォアボールも10個出すという投手でしたが、この夏は『こんなにストライクが取れるの?』というぐらい安定していた。これだけの投球ができて鍛えていけば、ローテーション投手としてやっていけると思います。ただ、甲子園では1試合だけしか見られなかったので、この日のピッチングをどれだけ続けられるかですね」(パ・リーグスカウトB氏)



横浜相手に7回途中5安打無失点と好投した広島新庄・花田侑樹

花田侑樹(広島新庄/投手/182センチ・75キロ/右投左打)

「フォームがよく、バランスもコントロールもいい。独特のしなやかさがあり、いかにも投手といった雰囲気がある。センバツのあと、ヒジを痛めたそうなのですが、そのわりによく投げたと思います。現時点で上位指名はないと思うのですが、下位なら十分に可能性はあると思います。高いレベルで競争することでセンスも磨かれていくでしょうし、体ができてくれば、さらに楽しみが増えるでしょう」(パ・リーグスカウトD氏)

「以前からタテの変化球がよく、注目していた投手でした。昨年秋から今年春にかけて右肩上がりで成長してきましたが、センバツ後に故障して、夏まで投げ込みができなかった。その影響が出た感じがしました。とはいえ、素材はすばらしい。これから体も大きくなるでしょうし、将来はプロでローテーションに入るだけのピッチャーになるでしょう」(セ・リーグスカウトC氏)



身長192センチの大型右腕、静岡のエース・高須大雅

高須大雅(静岡/投手/192センチ・84キロ/右投右打)

「身長があって、ボールにスピードもある。それにフォークを投げられるのも魅力。これからツーシームなどの変化球を覚えていけば、さらに投球の幅が広がる。フォームはインステップが気になるけど、それは直せます。即プロという選択肢もありますが、個人的には大学で鍛えてからプロに行ったほうがいいんじゃないかと思います」(セ・リーグスカウトC氏)

「春の県大会で見た時は自信があるように思えませんでしたが、この夏は堂々と投げている姿が印象的でした。投手としての魅力はゲームをつくれること。インステップが課題という人もいますが、高須くんの場合はそれによって壁ができているし、コントロールをまとめている。インステップを直すと違う投手になってしまう可能性がある」(パ・リーグスカウトB氏)



投打でチームのベスト8入りに貢献した神戸国際大付の阪上翔也

阪上翔也(神戸国際大付/投手兼外野手/180センチ・80キロ/右投左打)

「バッターとして評価していましたが、ピッチャーとしてもいいなと思いました。センバツの時に痛めていたヒジも治ってスピードも出るようになったし、タテのスライダーがいい。県大会でも見ましたが、苦しい場面でもしっかり投げられていたし、メンタルの強さも感じました」(セ・リーグスカウトA氏)



最速148キロのストレートと多彩な変化球が持ち味の愛工大名電・寺嶋大希

寺嶋大希(愛工大名電/投手/179センチ・76キロ/右投右打)

「140キロ後半を投げられるし、スライダー、フォークといった変化球もいい。投手としてすごくまとまっている印象です。ただ、上のレベルでプレーするとなると特長がほしい。140キロ後半といってもスピードだけなら通用しないと思うので、緩急を使ったり、投球術を身につけたり、そういうところで勝負できるピッチャーになれば面白いと思います」(パ・リーグスカウトB氏)



2試合連続本塁打を放った智辯学園・前川右京

前川右京(智弁学園/外野手/177センチ・90キロ/左投左打)

「力強いスイング、打球の速さは高校生離れしている。あれだけ振れるというのはすごいです。ただ気になるのは、引っ張る意識が強すぎるということ。もう少し逆方向にも打てるようになればヒットゾーンも広がりますし、投手にとっても脅威になるはずです。足と肩は強いほうではないので、バッティングでどれだけアピールできるか」(セ・リーグスカウトC氏)

「自分のタイミングを持っていて、長くボールを見られるのがいい。ヘッドの走りがいいし、パワーもあるから飛距離は出るけど、タイプ的にはアベレージタイプ。守備はうまくはないですが、最低限のプレーができるのでプロに入ったとしても問題ないと思います」(パ・リーグスカウトD氏)



敗れはしたが東北学院戦で本塁打を放った愛工大名電の田村俊介

田村俊介(愛工大名電/投手兼内野手兼外野手/177センチ・88キロ/左投左打)

「ピッチャーかバッターかと言われたら、バッターでしょうね。スイングスピードが速く、パワーもある。まだまだ荒削りですけど、振る力があるというのは魅力です。将来的にはコンパクトに振って、ヒット狙いのバッティングに徹したほうがいいと思います」(パ・リーグスカウトB氏)



夏の甲子園では無安打に終わった県岐阜商・高木翔斗

高木翔斗(県岐阜商/捕手/188センチ・89キロ/右投右打)

「体格がよく、リストも強く、うまくボールをバットに乗せて打つタイプ。あの打ち方なら木製バットにも対応できるでしょうし、長打も期待できる。不安があるとすればキャッチャーの守備。とくにスローイングが弱いのが気になります。素早い動きをマスターして弱点を補うことができれば"打てる捕手"としてやっていけるかもしれません。いずれにしても、バッティングはプロのレベルにあり、上位で指名される可能性は十分にあります」(セ・リーグスカウトA氏)