第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝が22日(日本時間23日)にドジャースタジアムで行われ、米国が8-0でプエルトリコに快勝。準決勝で侍ジャパンを破って初の決勝進出を果たした米国にとっては待望の世界一となったが、悲願達成…

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝が22日(日本時間23日)にドジャースタジアムで行われ、米国が8-0でプエルトリコに快勝。準決勝で侍ジャパンを破って初の決勝進出を果たした米国にとっては待望の世界一となったが、悲願達成の裏には、チームUSAのスターがエゴを捨てて今大会中に育んだ絆があったという。地元紙「USAトゥデー」が選手たちの数々の証言をもとに報じている。

■米紙が特集、悲願初Vの裏にあったものとは? エゴを捨てたスター軍団は「まさに共同体」

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝が22日(日本時間23日)にドジャースタジアムで行われ、米国が8-0でプエルトリコに快勝。準決勝で侍ジャパンを破って初の決勝進出を果たした米国にとっては待望の世界一となったが、悲願達成の裏には、チームUSAのスターがエゴを捨てて今大会中に育んだ絆があったという。地元紙「USAトゥデー」が選手たちの数々の証言をもとに報じている。

「これからシーズン162試合も待っているなんて信じられないよ。これが僕にとって仲間とのシーズンのように感じている。とても楽しいんだ。みんなと何年間も過ごしたかのようだ。まだ6試合? 信じられないよ。毎試合が生きるか死ぬかの死闘だと、彼らとも密接になる。それが楽しいんだ」

 今大会は不調に苦しみながら、決勝戦では「4番・三塁」で5打数2安打2得点と奮闘したアレナド(ロッキーズ)は、取材に対してこう語ったという。メジャーリーグのスター軍団にとってはオールスター以外で対戦相手のライバルとここまで打ち解ける機会はなかったというが、攻守両面で存在感を見せたアダム・ジョーンズ外野手(オリオールズ)も「このトーナメントで親密になれた。一緒に戦うことでみんなの良さにも気づくことができた。軍隊のようだと思っている。全く知らない人たちと突き進むけれど、どんな人間かすぐに分かるようになる」と独特の表現で回顧。そして、スター軍団がエゴを捨てたことで一体感は増したとしている。

「このチームは融合している。まさに共同体なんだ。誰もが隣の仲間の役に立ちたいと希望している。オレ、オレ、オレではない。クラブハウスでのすべての会話では、常に『オレたち』なんだ。みんな、チームのより大きな勝利のために自己犠牲することを理解しているんだ」

■スター選手の数々の証言「毎日一緒にいれば…」「完全に新しい観点ができた」

 絆が深まったことで、仲間の素顔も見れたという。レンジャーズでダルビッシュ有投手の女房役を務めているジョナサン・ルクロイ捕手は、チームUSAで新たな表情を見せたと、記事では伝えている。

「ジョナサン・ルクロイは思っていたのと全く違っていた。フィールドではすごく真剣。あまりおしゃべりもしなければ、他人に話しかけることもないけれど、すごく面白いんだ。皮肉屋な部分もあって、イメージとはだいぶ違っていたね。バスや飛行機、クラブハウスで一緒になれば、仲間のことも学ぶ。自分たちみたいに、毎日一緒にいればね」

 準決勝の日本戦で8回に千賀滉大投手からライト前ヒットを放ち、A・ジョーンズの三ゴロで決勝のホームを踏んだブランドン・クロフォード内野手(ジャイアンツ)の証言だ。

 そして、好敵手に対する敬意を深める機会にもなったようだ。決勝戦で2打数1安打1得点3四死球の成績だったエリック・ホスマー内野手(ロイヤルズ)は、最終決戦で6回0/3を被安打1と圧巻のピッチングを見せたマーカス・ストローマン投手(ブルージェイズ)について語っている。

「プレーオフで対戦したし、フィールドで対戦してきた。彼についてはあまり知らなかった。今は彼がどんな準備をするのか、マウンドでどんな精神状態なのか理解できた。あれはスペシャルだ。恐れるものは何もないんだ。彼に対する完全に新しい観点ができたんだ」

■「親密になりすぎることはできない」も…「一年中このチームでプレーできたら最高」

 これまでのライバルをより深く知ることができたと明かす選手たち。ただ、絆を深めすぎることは諸刃の剣にもなる可能性がある。日本戦で先発したタナー・ロアーク投手(ナショナルズ)はクリスチャン・イエリチ、ジャンカルロ・スタントンというマーリンズの両外野手と同地区のライバルでもある。

「あまり親密になりすぎることはできない。少なくとも打者とはね。みんなと少しでも競争心を保たないといけない。つまり、彼らと話をするときには精神的な部分には深入りしない。自分にとっては、そこにはメンタルの戦いがあるから。イエリチとスタントンは最高なやつなんだけどね、残念」

 絆が深まるあまり、MLBのレギュラーシーズンをチームUSAで戦いたいと希望する声も出ている。「一年中このチームでプレーできたら最高だろうね。少しお金はかかるかもしれないけれど、本当に楽しいだろうな」と話しているのは、今大会で好投を続けたフィリーズの中継ぎ変則右腕パット・ニシェク投手だ。

 記事では、ヤンキースで名将としての地位を確立し、今回の米国代表のチーム編成を担当したジョー・トーリ氏のコメントも紹介。「アメリカ国旗の下に一つになるということは特別だ。この独特な状況が利他的な部分を作り上げる。オールスターゲームのようなものもあるけれど、国のためにプレーするというのはまた別なんだよ。いい意味でね」。米国野球殿堂入りを果たしているトーリ氏はこう語ったという。WBC4度目にして成し遂げた初優勝は、スター軍団が見せた自己犠牲精神と絆で勝ち取ったものだった。