2015年5月の候補合宿以来の代表招集 今年1月で34歳を迎えた百戦錬磨のベテランだが、節目で口にする言葉には喜怒哀楽が直結する。それがMF今野泰幸という飾らない男のスタイルだ。「試合中に怖いとさえ感じた」「もう自分のセンターバックとしては…
2015年5月の候補合宿以来の代表招集
今年1月で34歳を迎えた百戦錬磨のベテランだが、節目で口にする言葉には喜怒哀楽が直結する。それがMF今野泰幸という飾らない男のスタイルだ。
「試合中に怖いとさえ感じた」
「もう自分のセンターバックとしては限界だと思った」
2度目のワールドカップ出場となった2014年のブラジル大会のコロンビア戦で、今野は確かに打ち拉がれていた。
自身もPKを献上したグループステージ最終戦のコロンビア戦では、1-4で惨敗。センターバックとして世界に挑む夢は無惨に打ち砕かれた格好の今野だったが、ガンバ大阪で懸命に這い上がって来た。
「何年かボランチを休んでいたけど、健太さんにもう一度やらせてもらって、自分にまだ伸びしろがあることが分かった」
ワールドカップ前には所属クラブでボランチ、日本代表ではセンターバックという棲み分けに頭を整理しきれず、パフォーマンスも低空飛行。ブラジル大会直前のJリーグでは試合後に「舌を噛んで死のうと思った」との迷言も残した今野だったが、センターバックとしての自身にきっぱりと別れを告げたブラジル大会後は、FC東京時代に本職としたボランチで完全復活。MF遠藤保仁との2ボランチで中盤の底を制圧し、2014シーズンの三冠獲得に貢献するなど、ガンバ大阪に欠かせない存在であり続けてきた。
未だにガンバ大阪でチームの顔は遠藤であることに疑いの余地はないが、戦術的に最も欠かせないキーパーツは今野である。
昨季までは守備に軸足を置くボランチとしてバイタルエリアを主戦場として来た今野ではあるが、今季は新境地を開拓中だ。
成長を続ける34歳のサッカー少年
遠藤をアンカーとする新布陣を採用するガンバ大阪で、インサイドハーフを務めるのが今野。抜群のボール奪取力を生かした従来のスタイルに加えて、今季は攻撃時に積極的に前方に進出。既に公式戦では3得点を叩き出し、フィニッシャーとしても存在感を見せている。
「当然の招集だと思う」と長谷川監督は2年ぶりとなる今野の代表復帰を評したが、球際に強く、縦への鋭い攻撃も披露している現在のパフォーマンスはバヒド・ハリルホジッチ監督が求めるスタイルにもうってつけの人材だ。
「ニューガンバ」「今季の挑戦にはワクワクする」。サッカー少年さながらの素朴な言葉で、今季の充実ぶりを口にしていた今野は「絶口調」でもあったが、ワールドカップ最終予選UAE戦とタイ戦に向けて招集された翌日は、口数も少なく、困惑した表情を隠そうとはしなかった。
「驚き」「オレに何が出来るか分かんないっす」。そんな愛想のない言葉が続くのは、日本代表への思いがないからでは決して、ない。
ブラジル大会の予選では不動のセンターバックとして本大会出場に貢献。アジアの戦いの難しさを知り尽くす男であるが故に、あえて安易な言葉を発しなかったのだ。
日本代表のユニフォームを着てプレーする喜びと怖さも知り尽くした34歳は、今回の招集メンバーでは最年長。キャプテンのMF長谷部誠の負傷離脱もあって、ボランチを託される可能性も十分にある。
誰もが知る守備力での貢献はもちろんだが「今季のポジションはスプリントが必要。ガンバでも日々の練習からスプリントの回数を増やしている」と攻守両面で披露している圧巻のパフォーマンスは、現在日本ナンバーワンのセントラルミッドフィルダーと言っても過言でないはずだ。
「全員で勝ち点3をとって帰ってきたいし、そのために少しでも貢献出来るようにという気持ちでやっていきたい」
センターバックとして自らの限界を悟った男は、ボランチとして再びジャパンブルーのシャツに身を包む。
《文=下薗昌記》
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