福田正博 フットボール原論■9月2日からカタールW杯に向けたアジア最終予選がスタート。東京五輪が終了し、森保ジャパンのメ…
福田正博 フットボール原論
■9月2日からカタールW杯に向けたアジア最終予選がスタート。東京五輪が終了し、森保ジャパンのメンバーはどんな顔ぶれになっていくだろうか。アジアの厳しい戦いに臨む顔ぶれを、福田正博氏が予想する。

東京五輪を経て世代間の融合はかなり進んでいる森保ジャパン
9月2日から始まるカタールW杯アジア最終予選。日本代表は、初戦は大阪の吹田サッカースタジアムでオマーンと対戦する。第2戦の中国戦は当初はアウェーでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響による渡航制限などで中国国内の開催が難しくなり、中立地のカタールでの開催に変更された。
その後は10月7日にアウェーでサウジアラビアと、10月12日にホームでオーストラリアと戦う。11月11日のアウェーでのベトナム戦で6カ国総当りのリーグ戦は折返しになる。
前半戦でしっかりと勝利を積み重ねてもらいたいが、FIFAランキングでは日本よりも格下になるからといって、容易に勝てる相手はいない。サウジアラビアやオーストラリアを警戒すれば楽勝というものではない。
中国はFWに、広州FC所属のエウケソン、アラン・カルバーリョ、フェルナンジーニョというブラジル出身アタッカーを3人揃えた。イングランドのユース代表にも選ばれた経験を持つDFティアス・ブラウニング(広州FC)、MFニコ・イェナリス(北京国安)も帰化して中国代表に加わっている。アジア2次予選までの中国代表とはまったく別物のチームになっているので、心してかからないといけない相手だ。
初戦に臨む日本代表のメンバー発表は8月26日。そこから試合までの準備期間は十分あるとは言えないが、多くの代表候補選手たちは6月シリーズの代表活動で2週間近くの時間を共有できているので心配はしていない。その選手たちがベースになり、東京五輪代表からも加わると思うが、何人の選手たちが五輪代表からA代表にステップアップするかは楽しみなところだ。
ただ、東京五輪世代の突き上げで日本代表の活性化は期待しているものの、現場を預かる森保一監督などの代表スタッフは、積極的に新しい選手を迎え入れない可能性もある。蓋を開けてみたら石橋を叩いて渡るようなメンバー構成になったとしても、それは理解できる。
なぜならアジア最終予選の最大の目的は、チームづくりではなく、W杯本大会への出場権獲得にあるからだ。最終予選は10試合しかない。自分たちに流れを引き寄せるために、序盤戦はとても重要な戦いになる。1993年のドーハの悲劇のメンバーである森保監督が、なおさら慎重になるのは想像できるし、これはチームを率いるリーダーとしては当然のことだ。
序盤戦は、これまでの日本代表で結果を残した選手たちを信頼してピッチに送り出す。そして、そこで勝ち点を積み重ねることができたり、主力選手にコンディションなどで問題が生じたりした時に、新たな選手を起用するのではないかと思う。
攻撃面は1トップを誰にするのか。コンディションが整えば、大迫勇也が筆頭候補だ。実績は折り紙つきで、今季からJリーグのヴィッセル神戸に移籍したので移動の負担も少ない。6月の代表活動ではケガにより途中離脱したが、その故障箇所が万全な状態になっているかどうか。この大迫の状態次第で、ほかに招集される選手が変わる気がする。
オナイウ阿道は、代表でどんなプレーをするのか楽しみにしている選手のひとりだ。6月の代表戦は、大迫離脱によってめぐってきたチャンスでしっかり存在感をアピール。今夏にフランス2部のトゥールーズに移籍し、第5節では移籍後初ゴールも決めた。普通に考えれば日本代表に招集されて不思議はない。
しかし、森保監督のこと。だからこそ招集しない可能性もある。森保監督は選手個々がクラブで定位置をつかんで、コンスタントに試合に出ながら個の力を伸ばすことも日本代表強化の一環と考えている。そのため毎試合出場して結果を残し始めているオナイウを、日本代表に招集して長距離移動の負荷をかけて調子を崩させるよりも、いまは自チームでの立ち位置を確立させようと気遣うのではないかとも思う。
そうしたときにチャンスがまわってくるのは、東京五輪組の林大地(シント・トロイデン)や上田綺世(鹿島アントラーズ)だろう。林は東京五輪では泥臭いプレーで存在感を発揮した。アジア最終予選のような緊張感の高い勝負では、林のような執着心の強いプレーがチームを助ける場合もある。上田は故障の影響もあって東京五輪では悔しい思いをした。ただ、そのポテンシャルを誰よりも買っているのは森保監督なだけに、最終予選でその悔しさを晴らす機会が与えるかもしれない。
悔しさで言えば三笘薫(サン=ジロワーズ)も同じだろう。東京五輪で本来の輝きを見せたのは、3位決定戦のメキシコ戦で途中出場してからの時間帯だけ。途中出場からのプレーは見るものを唸らせるものばかりだっただけに、今回の招集メンバー入りを期待したいものの、三笘も海外移籍したばかりなので見送られるのではないかと思う。
この左MFには南野拓実(リバプール)がいて、トップ下に鎌田大地(フランクフルト)が入っても共存できることを6月シリーズで見せている。攻撃だけではなく守備での貢献度も高い原口元気(ウニオン・ベルリン)もいる。三笘がこのポジションで代表入りするためには、自チームで結果を出すのが最優先だ。
攻撃的なポジションでは、右サイドはタレントが揃っていて、森保監督は頭を悩ませるだろう。どんな相手であっても確実に自分の仕事をする伊東純也(ヘンク)がいて、東京五輪ではふたりで攻撃をつくったと言える堂安律(PSV)と久保建英(マジョルカ)もいる。
久保は東京五輪ではトップ下でプレーしたが、代表には鎌田がいて、南野もこのポジションでプレーできる。彼らをベンチに追いやるには久保はまだ迫力不足。しばらくは右サイドで勝負することになると見ている。伊東、堂安、久保と持ち味がそれぞれ違うので、対戦相手や試合展開に応じて使い分けられるはずだ。
ボランチは核として遠藤航(シュツットガルト)がいるが、その相方は守田英正(サンタ・クララ)でもいいし、田中碧(デュッセルドルフ)でもいい。それこそ守田と田中の組み合わせは、元川崎フロンターレコンビでもあるので、遠藤航に緊急事態が発生しても安心感はある。
守備陣は右サイドバックには不動の酒井宏樹(浦和レッズ)がいて、センターバックにはキャプテンの吉田麻也(サンプドリア)と冨安健洋(ボローニャ)がいる。また、東京五輪でふたりに迫る力があることを証明した、板倉滉(シャルケ)もいる。
左サイドは長友佑都(※マルセイユ退団後フリー)がいて、東京五輪ではが中山雄太(ズヴォレ)が守備面で評価を高めた。ポテンシャルの高さをコンスタントに発揮できるようになりつつある小川諒也(FC東京)もいる。GKには権田修一(清水エスパルス)がいるが、東京五輪で正GKをつとめた谷晃生(湘南ベルマーレ)も、日本代表でチャンスをあげてもいいと思える活躍だった。
こうして見ていくと、東京五輪代表メンバーに大迫、鎌田、南野を加えれば、日本代表になる。そして、これこそが森保監督が日本代表と五輪代表の監督を兼務した最大のメリットでもある。ほとんどの選手たちは、2年ほど前からすでに日本代表で一緒にプレーし、世代間の融合はできている状態だ。
最終予選の重圧は、自国開催のオリンピックの重圧と違うものではある。だが、それでもプレッシャーのなかで、自制してプレーする経験を積んでいる選手たちが揃っているのは心強い。先述した石橋を叩いて渡るようなメンバー構成に、東京五輪世代はすでに含まれているということだ。
グループ内2位までがW杯出場権を手にできる最終予選(※3位はプレーオフにまわる)。長いタームでの戦いでは、主力選手にアクシデントが起きないとは限らない。それだけにフルメンバーが揃えられる間に、まずは幸先よく9月に2連勝して勝ち点を積み重ねてくれることを期待している。